選択権 真骨頂
勇者──鷲宮杏里の能力は『選択権』
あらゆる物体を『選んで』『触れる』ことが出来る最強の能力である。
そして彼女は勇者としての力なのか、その使い方を完全に理解していた。
正々堂々と正面突破。
自分の強みを相手に押し付ける強者にのみ許された最強の戦法である。
『ギギャアア!』
彼女の前には一体のキングオーク。
巨大な棍棒を振り上げ、杏里を叩き潰そうとしていた。
しかし、彼女はその様子をぼんやりと見つめているだけで避けようとする素振りも無い。
「私はあなたの心臓だけを触れることを選択します」
別に声に出さなくても良いのだが、そっちの方がカッコいいからと言う理由で彼女はそう宣言し、能力を発動した。
瞬間──ノータイムで能力は発動。
彼女の服は重力に従って地面に落ち、一気に全裸になる。
(よし!)
彼女が選択権を発動した瞬間──巨大な棍棒が彼女の身体を押しつぶした。
はた目から見ればいきなり全裸になり、そのまま死んだだけにしか見えない。
しかし……キングオークはその手ごたえの無さに疑問を感じていた。
『ギ!?』
キングオークが見たのは、地面に振り下ろした棍棒の上に女の生首が乗っている姿。
そして、そのままゴーストの様に棍棒からすり抜けて来て自分の身体に触ろうとしている姿だった。
──死の予感。
濃厚な死の予感がキングオークを襲った。
棍棒をこのまま手放して逃げてしまおう。
そう判断した時には、全裸の女は自分の身体をすり抜けて背後に回っていた。
「うええ……気持ち悪い」
振り返った時にキングオークが見たのは彼女が何かを地面に捨てながら、アイテムボックスの中から服を取りだしている姿。
──勝機。
先ほどまでの謎の威圧感は消えており、完全に油断をしている。
このまま殺してしまおう。
──ドスン。
と、キングオークは思いながら地面へと倒れていった。
何が起こったのかも分からないまま。
「お見事です勇者アンリ様!」
キングオークが倒れた瞬間出てきたのは、数人の兵士達。
そう、ここは王国から少し離れた所にあるダンジョンの最深層なのだ。
流石に勇者と言えどまだ実戦経験のない女。
まずは兵士達の補佐の元、戦闘経験を積まそうと王が取り計らったのだ。
「はい! ありがとうございます!」
杏里は服を着ながらその声に答えた。
玉座の前で全裸を晒してから今日で一週間。
既に経験を積むためにモンスターとの戦闘を何度も繰り返し……。
彼女は裸を晒す事に慣れてしまった!
むしろ、それを快感と覚えるほど!
その理由は彼女の能力にある!
『選んで』『触れる』能力の真骨頂! 『選んで』『触れない』ことである!
(うふふ。この完璧なボディなら見られても恥ずかしくないもんね!)
女子高生──鷺宮杏里は、自分の能力『選択権』は戦闘よりも美容に向いていると思っている!
ムダ毛を『選択』して『触れない』事によって無痛での全身脱毛に成功!
余計な脂肪を『選択』して『触れない』事によって、コンプレックスだった太い太ももをまるでカモシカの様にスマートな太ももに!
脂肪を無理やり落とした事による急激な皮膚のたるみは、回復魔法を使うことによって無くした!
故に今の彼女のボディーは!
産毛一つない完璧な素肌!
痩せすぎず! 太りすぎていない完璧な体形!
何なら下腹の脂肪を『選択』して『触れる』事によって胸まで持っていき、BカップからDカップへと豊胸を完了している!
日本にいた頃は、テレビの中に見る芸能人たちを、金に物を言わせて脱毛、豊胸を繰り返しているサイボーグだと蔑視していた彼女であった。
しかし、その本質は自分に出来ない事をしているからと言うただの嫉妬!
異世界に来て、『選択権』の能力でノーリスクでそれが出来る様になった結果……彼女はハマった!
完全に自分を美しくすることにハマり、その美しい自分を見て貰うことにハマったのだ!
──故に!
「……勇者様早く服を着て下さい」
着替えない!
正確に言えばゆっくりと服を着ているのだが、そのスピードは限りなく遅い!
さらにはその服も、王宮の洋裁師に作って貰った限りなく体のラインを出す洋服!
「ふんふーん」
彼女は自分の知りうる限りのセクシーポーズを取りながらゆっくりと服を着て行った!
兵士達がドン引きしているとは知らずに!
なぜ兵士がドン引きしているか。
それは、この世界には人間だけではなく獣人などの亜人がいるから!
多種多様の外観を持つ種族が存在する世界故に、女性に対する美的感覚が根本から違うのだ!
男性が女性に求める美意識は、外見だけではなく内面の美しさ!
兵士達の認識では、彼女はただの変態! しかし、彼女はこの事を認識していない!
なぜなら、彼女はまだ17歳!
女子高出身と言うこともあり、男性に対する免疫が全くない!
兵士達が目を逸らしているのは、恥ずかしがっているだけと思い込んでしまっているのだ!
(全く……男子ったらウブなんだから)
とまで思ってしまっている!
〇
(この変態勇者様ようやく服を着てくれた……)
杏里が服を着替え終わるのを見た兵士達は、少し咳払いをすると話し出した。
単独でキングオークレベルのモンスターを無傷で倒せるのであれば、もう次のステップに進んでも良いだろうと。
「勇者様。これで試験は終了です。魔王クロノスを倒すために、とあるダンジョンに潜ってアイテムを収集してきて下さい」
「いいよ! 私の能力ならどんなダンジョンでも余裕だからね! どんなアイテムを取ってくればいいの?」
「流石でございます」
そして、兵士は杏里に話した。
伝説上。過去に存在したと言うアイテムを。
「潜って貰うのは『奈落のダンジョン』そこであらゆる生物の居場所を探知できる『探知の指輪』を入手してきて下さい」
「ふぅ~ん。で、その探知の指輪って言うのはどこにあるの?」
「……それが分からないのです。しかし、奈落のダンジョンにはありとあらゆるアイテムが眠っていると言われています。……恐らく深層に潜っていけばどこかには」
「ふぅ~ん。まあいいよ。おっけ~!」
杏里はこの時、まだ知らなかった。
地球の中心まで続いている奈落のダンジョンで、一つの指輪を探し出すと言う本当の意味を。
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僕もこの能力で脱毛したい……。




