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国賓は……幸せ?

 数日後。


 辺境の地――魔国……の中でも辺境な土地イレザレム。

 俺はロゼの城……レンガ造りの一軒家で絶叫していた。


「おい! ロゼ! どうなってんだコレは! 酒は一日グラス一杯! 煙草は三本まで! これなら冒険者やってた方がましだったわ! しかも!」


 俺は目の前でしょんぼりと肩を落として並んでいる二人を指さす。


 赤髪ボブカットの幼女――ドワーフのピットと、

 白髪ロングの褐色幼女――ダークエルフのエリザだ。


「おかしいとは思ってたんだ! なんたって魔王であるお前が直々に俺に頼み込みに来るからな! なんで部下が二人しかいないんだよ! しかもガキ!」


「しょっ……しょうがないんじゃぁ~! 三年前お主に負けてから四天王は儂を見限って全員離散……儂の部下を奪って自ら国を作り出しおった……弱った儂についてきてくれたのはピットとエリザだけなんじゃぁ~こいつらの事を悪く言わんでくれぇ~」


 ロゼは泣きながらピットとエリザに抱き着いた。

 三年前。大量の部下を引きつれ、人類を蹂躙していた凛々しい姿からは絶対に想像できない光景だ。


 ドワーフの幼女。ピットが恐る恐る俺に訪ねてきた。


「うっ……ウチの酒まずかったですか?」


「……っ! バカみてえに美味いよ! このために生きてるって感じがして毎日グラス一杯の晩酌が楽しみになってるよ!」


 パアアっとピットの顔が明るくなる。


 次は、ダークエルフの幼女。エリザがビクビクしながら聞いてきた。


「私の煙草は……どうでした?」


「美味いよ! 朝昼晩! 一本づつ吸うのが楽しみになってるよ!」


 エリザはピョンピョン飛び跳ねながら喜んだ。

 元勇者の俺が貧乏してたように、元魔王のロゼも貧乏してた。


 現在はピットの酒とエリザの煙草を売りながら細々と暮らしているらしい。


 勿論食事も貧相な物で、パンと薄いスープしかない。


 年に一度呼ぶと言ったサキュバスは、ロゼたちがコツコツと貯めた金を使って呼ぶと約束してくれた。


「呼べるかぁ!」


 全力で断った。


 ロゼが泣きながら俺に抱き着いてくる。

 

「お……怒らないでくれぇ~今日の儂のスープ……全部飲んでもいいから……儂は我慢するから……魔王じゃもん……」


 ピットが涙目で叫ぶ。


「ロゼ姉さん! 昨日だってウチらにいっぱい食べて欲しいって、自分のスープ分けてくれたやないですか! 不死とは言え腹は減るでしょう!? ……クロノス兄さん……ウチのスープ飲んでください……ウチは今……ダイエット中なんで……」


 エリザも涙目で叫んできた。


「私のパンも食べて下さい! ロゼ様……今日は私たちが我慢するんで……いっぱい食べて下さい……私も……ダイエット中なんですよ……」


 ――グゥ。


 三人とも腹の音がなってるのが聞こえるんだが?

 めちゃくちゃ貰いずらいんだが?


「うっ……うっ……すまないのぉ……ふがいない魔王ですまないのぉ……」


「ロゼ姉さん~!」


「ロゼ様あああ~!」


 三人の幼女が抱き合いながらワンワン泣き出した。

 ……ものすごく悪者になった気分だ。


 下手したらエレンに追放された時よりも気分が悪い……。


「くっそ! お前ら少しここで待ってろ!」


 俺は幼女三人に悪態をつくと、ボロイ扉を開け外に出た。


 そして……。


『プギイイイイ!』


「ちっいいいいい! なんで国賓なのにこんな事しなきゃ……いけないんだ!」


 巨大なイノシシーービックボアを見つけ、舌打ちをする。


 ーー時を止めた。


 ーービックボアが俺に向かって突進する姿勢で硬直する。


 ーー全ての音が消え、完全な無音になる。


 ーー静止した時の中、俺はアイテムボックスから聖剣を取りだし、構えた。


「くっそ! 今日だけだ! 今日だけだからな!」


 ビックボアを切り裂き、時を戻す。


 なんでこんなことをしているんだと、自分にツッコミながらビックボアの毛皮を剥ぎ、肉を解体し、アイテムボックスに入れた。


 そして、再びロゼの城(ボロイ家)に戻って、まだ泣いてる幼女たちに肉を投げながら叫んでやった。


「幼女共! 今日は焼肉だ! ガキは飯を食え! 肉を食え! 大人に自分の飯を上げるなんて言うな!」


「「「わぁーい!」」」


 その日の焼肉は悔しいけどめちゃくちゃ美味しかった。

 目の前で幼女三人が「美味しい美味しい」言いながら目に涙なんて浮かべて食べてるんだぜ?


 ……席を外して外に出ると、タバコに火を付け目頭を押さえた。


「良かったなぁ……やっぱりガキは美味いもん食わなきゃだよなぁ……」


 そこまで呟いて今度は自分に切なくなった。


(なんで俺は……元とは言え魔王に食わせてやってるんだ……)


 その時、扉が開く音がした。

 振り向くと幼女三人がもじもじしながら俺を見ている。


(やめろよ!? やめろよ!? 言うなよ!?)


「あっ……ありがとうなのじゃ」


「クロノス兄さんおおきに!」


「クロノス様! ありがとうございます!」


(……っ! こいつら……くっそ!)


 三人は、大きな声で元気よく俺に頭を下げやがった。

 何だこの気持ちは! 最悪の気分だ! 反吐が出そうだ!

 

「明日はロックバードを取ってきてやる! 羽を売れば多少金になるだろう! 肉は唐揚げにするぞ!」


「「「わあぁい!」」」


 断じてこれは、こいつらに食べさせたかったわけではない。


 ただ、俺が唐揚げを食べたかっただけだ! 唐揚げを食べたかっただけなんだ!


 〇


 一方その頃。


 Aランクパーティ『深紅の鷹』のリーダーエレンは、ダンジョン中層階でキングオークに苦戦していた。


「くっそ! いつもならこんな奴余裕なのに! ミレーナ! 魔法が弱いぞ!」


 今までなら一撃で倒せていた相手。


 しかし、それがクロノスの力と知らないエレン達は、一年前初めてキングオークと対峙した時の様に応戦し……。


 既に剣士――パドックはキングオークの拳によって撲殺されていた。


「あんただってキングオークに傷一つ付けられて無いじゃない! キャアアア!」


 ミレーナが撃った炎の魔弾をものともせずに近寄ったキングオークは、ミレーナを殴り飛ばす。


 キングオークはニタリと笑ってエレンに振り返った。


「くっそ! くっそおおお!」


 エレンは直ぐに踵を返し、逃げ出す。


 その時、脳裏によぎったのは数日前にクロノスが言っていた台詞。


【実は俺、荷物持ちついでにお前らの援護してたんだぜ? 俺抜けたら死ぬけどいいの?】


 そして、酒場を出る時に見たいつの間にか煙草を咥え、服が乾いていたクロノスの姿。


(くっそ! 多分本当にクロノスが俺たちを援護してたんだ! あの時、謝っておけば!)


 エレンはキングオークから逃げながら、クロノスを追放したことを後悔していた。

 

 しかし、この後悔の感情は、数日後に形を変える事になる。

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