勇者 鷲宮杏里(さぎみや あんり)は女子高出身
奈落のダンジョンの成立秘話みたいな話を短編で書いてみました!
『追放された土魔術師。人間不信なって穴を掘っていたらダンジョンマスターに。このまま行ける所まで掘ってみます。目指せ地球の中心!昔の仲間がダンジョンに入ってきたけど……モンスターに任せても良いよね?』
是非こちらもみて見て下さい!
「勇者。魔王クロノスを倒して来るんだ」
トラックに轢かれ、目が覚めると女子高生──鷺宮杏里は玉座の前にいた。
目の前には端正な顔立ちの金髪王子様。
そして瞬時に理解する。
(あ! あああああ! やったああああ! これ異世界転移だ!)
この状況が異世界転移のテンプレだと。
きっと目の前にいるイケメンの王子様は魔王を倒した私と結婚するんだ。
思い込みの激しい彼女はそう思い、何も考えずにその言葉に従った。
「分かった! でもそのクロノス? って言う魔王はどこにいるの?」
そして聞いていくうちに分かったのは……。
クロノスと言う魔王は時間を止める能力と姿を変える能力を持っており、さらに消息不明と言う事。
(え……時間を止めるってチートじゃん! しかも姿を変えられるんじゃ探しようも無いし!)
ぐぬぬと悩む事数秒。
彼女はそう言えばとこの世界に来るときに得た力を思い出した。
(えっと……確か私の力は……たしか……選択権?)
彼女の力は『選択権』
彼女はこの世全ての物体を『選んで』『触れる』ことが出来る。
どのような敵がどのような攻撃をしてきても、彼女がそれに触れたくないと思えば決してその攻撃は彼女に当たらない。
更に、彼女が敵の心臓に触れたいと思えば、敵とすれ違うだけで心臓だけを抜き取ることが可能になる。
「え……わたしの能力……チートすぎ?」
能力を理解した瞬間──彼女は魔王クロノスに対して勝利の確信を得た。
たとえ魔王クロノスが時を止めようと、その攻撃が一切当たらなければ負けることはないのだ。
後は勇者なんだし土壇場の機転でどうにかなるだろうと気楽に思っていた
そして無駄な自信から勝利を確信した彼女は、能力を試してみようと周りにいた魔法使いっぽい人物に話しかけていた。
「そこの人! 私に魔法の炎を撃ってみて下さいよ! 絶対に当たらないので! 私無敵なんです!」
日本にはいなかったイケメンの王子様の前だから舞い上がっていたのかもしれない。
彼女は大きく見栄を張ると、両手を腰に当て仁王立ちの姿勢でそう言った。
指名された魔法使いが、魔法の炎を作り出したのを見て、彼女は能力を発動した。
「選択権発動! 私は私に触れる物を許可しない!」
能力が発動──同時に、彼女を包み込む様に炎球を包んだ。
「全然熱くない! ほら最強でしょ! 王子様!」
魔術師が放った火球は彼女の身体を通りすぎ、玉座の間の壁に当たり燃え尽きた。
そしてその場には彼女の姿を見て、大きな歓声が響き渡る。
「おお~」
「……すっげえ」
彼女はその歓声を一身に浴びながら、自分を召喚したのであろう王子に振り向いた。
パチンとぎこちなくウインクなんてしながら。
彼女はちょっとズレた娘なのだ。
「どう!? 私の力最強でしょ!? どんな攻撃だって私をすり抜けちゃうんだから! 時を止めた勇者にだって絶対に勝てるよ!」
勇者特有のノーリスクのチート能力。
『触れる物全てを許可しない』と能力を発動したはずなのに彼女が地面に沈まなかったのは、無意識の中で彼女が能力を制御出来ているからだろう。
完全に能力を掌握しきっている彼女の力は最強だった。
ただし……。
「……お前はいちいち全裸になる能力なのか?」
「え!? ちょっと! キャアアアアアアアア!」
彼女は全裸になる!
確実に彼女は全裸になるのだ!
彼女の力は自分自身の身体にのみ適用される!
服は毎回その場に落ちるのだ!
絶対に! そう! 絶対に!
さらには下に落ちた服は王宮魔法使いは放った火球によって完全に燃え尽きている!
その王宮魔法使いの正体はファボル・ブラスト!
御年37歳のおっさんである!
王の周りに集まっている衛兵たちの平均年齢は35!
勿論王を守るために訓練を重ねた……男である!
無論! 全員目は突然裸になった女に釘付けである!
「あっ……あわわわわわ! 床が私に触れることを首から上だけ許可します!」
彼女が咄嗟に取った手段は自分を床に埋めると言った方法であった。
彼女の身体は徐々に沈んでいき、首まで床に埋まった所で彼女の身体は止まった。
「魔王を倒しに行くから早く洋服を持ってきてください!」
「……おい、誰か服を持ってきてやれ」
まるで打ち首になった状態のまま彼女は叫び、王子はその姿に呆れながら要求に答えた。
すぐさま、自分のせいでこうなってしまったと責任を感じたファボル・ブラストは、服を取りに部屋から出る。
適当な服を持ってこようと、少し歩いたところで城の異変に気付いた。
若い兵士が駆け寄ってきたのだ。
「うっ……うわああああああ! 大変です! ファボルさん! おおおおお……女の身体が急に天井から生えてきたんです!」
(しまった! 玉座の下の部屋は……食堂! 今の時間は……若い兵士達が食事をとっている!)
王の玉座は三階にあった。
そしてその下の部屋は食堂。
ちょうど鍛錬終わりの新人兵士達が食事をとっていた頃だった。
「……っ!」
ファボルが食堂に駆け込んだ時、そこで見たのは……。
「ひいいいいい!」
「うわああああああ!」
──恐慌。
新人兵士達が、天井からぶら下がった首から下だけの女の裸に恐れ慄いていた。
剣で切りつけようとするものもいるが、その剣はスカッと通り抜けるだけ。
──ポリ。
──プ。
「うっ……うわあああああ! なんだこの女! 剣が効かない! しかも尻をかいてるぞ!」
「うわああああ! 屁までこいてやがる!」
鷺宮杏里は中高一貫の女子高出身だった。
床に自分の身体が埋まったことで完全に安心し、いつもの癖が出てしまったのだ。
責めるなかれ、誰も見ていない所では女とてこのような物なのだ。
(ヤバい……早く服を持っていかなければ!)
ファボルは玉座に戻り、勇者に尻をかくのを、屁をこくのを辞めろと言おうかと一瞬迷ったが……。
すぐに彼女の体裁を考えてやめ、服を取りに行った。
食堂を出て行く時、新人兵士達にこう叫びながら。
「こっ……これは敵ではない! だらしない女のゴーストだ! 害はない!」
「でっ……でも、こんなにだらしない女見た事ないですよ! 絶対に怠惰の悪魔か何かですよ!」
「……っ! お前らはまだ若いから知らないだけだ! 俺の嫁も結婚2年目にはこうなっていた!」
ファボルは無駄に嫁の恥を暴露してしまった事に顔を赤くしながら服を取りに食堂から走り去っていく。
今だ女に理想を抱いている新人兵士達の事を心の片隅で羨ましくも思いながら。
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