みんなでシチュー
エリザからピットが連れ去られた事を聞き、大人の姿になったロゼを抱えてから0秒後。
――静止した時の世界。
俺は魔力で身体強化をし、街へと走っていた。
まず向かったのはピットリゼ商店。
そして、そこで俺は凄惨な現状を見る。
(店中の酒と煙草が……酷いな)
床には割れた酒瓶と、破られて酒に浸った煙草。
半分ほど千切られた煙草を床から拾ってポケットにしまった。
「……ボコボコにしてやるよ」
そして、怒りをそのままに店の外を観察。
よくよく地面を見てみると、ピットリゼ商店から街の外へと向かって行く馬車の痕跡が見つかった。
「……ピット待ってろよ。すぐに助けるからな」
そしてその馬車の痕跡を辿っていくと、そこには縛られて傷だらけのピットとそれを踏みつけようとするニギルの姿。
激昂しそうな自分を抑えながらまずはロゼを地面に立たせ、ピットに回復魔法をかける。
そして拘束を解いて俺の隣に立たせると、ポケットから千切れた煙草を取りだしゆっくりと吸った。
煙を吐き出しながら硬直したピットに話しかける。
「……ピット痛かったろ……すぐに終わるからな」
――そして時を動かす。
「……は?」
地面を踏みしめ、素っ頓狂な声を出すニギルを見ながら言った。
「ロゼ……到着だ」
「なっ……なっ……は? 魔王……なんで生きて……」
ニギルが恐怖で顔を強張らせた。
足をガクガクと震わせ、今にもへたり込んでしまいそうだ。
――横でロゼが小さく自分の指先を爪で傷つけたのが見えた。
「今から一分間。お主は地獄を見る」
「ひっ……」
一目散に逃げだしたニギルを見て、時間を止めて元の位置に戻す。
知ってるか? 魔王からは逃げられないんだぜ?
「死にます! 死にます! 死なせてください! 自分で死ぬから許してください!」
ニギルは逃げられない事に気づくと、媚びた顔をしながら懐から短剣を取りだして自分の首に当てた。
恐怖で自死を選んだのだろう。
ダメに決まっている。ロゼも同じ気持ちなようで隣で呟いた。
「ダメじゃ」
時を止めて短剣を没収する。
その瞬間には既に――ロゼは手刀をニギルの首に刺していた。
勿論傷ついた指でだ。少し安心した。
時を動かし始め、ニギルが何度も殺される所を眺める。
ロゼの血を分け与えられたニギルは殺された瞬間生き返り、再び殺される。
まるでロゼの様に……まるで三年前の四天王の様に。
これが、時を止められる俺が四天王を殺せなかった理由だ。
(特に……ガラムは大変だったな)
ふと、昔の事を思い出した。
●
不死の魔王ロゼ――アルトルール・ロゼの力は不死。
そして、血を分け与えた相手を一時的に不死化出来る。
分けた血の量に応じて。
――静止した時の世界。
ガキンと俺の聖剣が弾かれる。
「くっそ! 固ってえ!」
漆黒の龍鱗を全身に身に纏った大男。
魔王軍最強の防御力を持つ【無疵の龍人】最硬のガラム。
俺が最初に戦った魔王軍四天王だった。
「おおおおお! 死ねええええ!」
決して欠けず、折れない聖剣で斬り続ける事一時間。
俺はようやくガラムの龍鱗を叩き割り、内部の柔らかい肉体を切り刻むと時を動かした。
「なっ……なにが……なぜ俺の身体が斬られている!? おおおおおおおおおおおお!」
全身から血を噴出させ、ガラムは倒れる。
俺は煙草に火を付けながら死にゆくガラムに言った。
「俺は時を止められる……お前がいかに硬かろうと時間をかけて斬り続ければ斬れるだろ」
煙草を捨て、その場から去ろうとした瞬間。
ガラムの身体が動いたのが見えた。
「……はっ……はっはあ! 魔王様から血を貰っておいて良かったぞ! まさか俺の身体に傷をつける奴がいるとはなあ!」
「ちっ……再生能力もあるのかよ」
――瞬間、時を止め再度切り刻む。
完全にバラバラにしたところで時を進め、ガラムの死体を見る。
ガラムの身体は一瞬にして再生し、元の状態に戻った。
「……っ! はあ! 俺は死なぬ! 魔王様が倒されない限りなぁ!」
「……」
――再度時を止めて切り刻む。
「ぐわあああああああ! 痛い痛い!」
「もう! 殺してくれえええええ!」
「痛い痛い痛い痛い!」
……を、繰り返す事十数回。
時を動かした世界で、ガラムは両手を上げて俺に言ってきた。
「はあ……はあ……待て、降参だ……死なないと言っても痛いんだ……もう辞めてくれ……」
「ちっ、どうしたらお前は死ぬ! 全て話せ! 出なければ続ける!」
俺が聖剣を突き付けながら叫ぶと、ガラムは観念したような表情を浮かべ、ポツポツと話し出した。
「俺たち四天王は……魔王様の血を飲んだ……魔王様が死なない限り……俺たちは死なない……」
ガラムから聞いたのは、魔王が不死の力を持つ魔人である事と、その血を飲んだものは一時的にその力を得ることが出来ると言う事。
魔王を殺せば不死の力は無くなるらしいのだが、そもそも死なないから不可能なのだそう。
「……だから俺を殺しても無駄だ……頼むから魔王様と戦ってくれ……というかお前の力は何なんだ……時を止めるなんて最強すぎる……お前がいる以上、俺はもう人間に戦いを挑みたくない……魔王様とお前だけで戦っててくれ……」
そして、逃げ出したガラムを俺は見逃した。
あんなに硬い相手を斬るのは疲れるからな。
それよりも俺の敵は……。
(俺の相手は不死の魔王……そいつさえ倒せば)
そして俺は魔王城へと向かった。
不死に魔王ロゼを倒す為に。
〇
「ふう! すっきりしたのじゃ! ピット! どこか痛い所はないかの?」
(……今はこんな幼女になってるんだけどな)
俺は元の姿になり、ピットの頭を撫でているロゼを見つめる。
ピットはロゼに頭を撫でられると、じわっと瞳を潤ませすぐにロゼに抱き着いてワンワンと泣き出した。
「うわああああん! ロゼ姉さん! 怖かったです!」
よしよしとロゼが頭を撫でている向こうでは、ニギルがしきりに闇に向かって謝っていた。
俺も少し脅してやろうと思ったが……必要なさそうだな。
確実にトラウマものだろう。
その時。ピットの腹が鳴った
――クゥ。
「あっ……あかん! 安心したらお腹なってもうた!」
照れくさそうにそう言うピットに、俺はロゼの頭を撫でながら言ってやる。
「今日はロゼが作ったシチューだぞ。会心の出来だ」
「そうじゃぞ、ピット! 儂が野菜を切ったんじゃ!」
「うわ~! ロゼ姉さんのシチュー楽しみです!」
――時を止め。
そして、時は動き出す。
温め直したシチューをみんなで食べるいつもと変わらない日常。
少しだけ違ったのは……。
「へぇ~ロゼ偉いじゃん。黄金人参食べれるようになったんだ」
「勿論じゃ! 儂は魔王じゃからな! 好き嫌いはせんのじゃ!」
黄金人参を食べるロゼ。
自分で黄金人参を切ったから美味く感じるのか、少しだけ今日はカッコつけたい日だからなのかは野暮だから聞かないでおく。
確かに今日のシチューは会心の出来だからな。
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