ローランさんはお怒りです《悪徳商人side》
ニギルが黒髭商会の前で土下座をしてから五日が経った。
ピットとエリザの店【ピットリゼ商店】の内装も完成し、オープン日。
「クロノス兄さん! ホンマにありがとう!」
「クロノス様! ありがとうございます!」
「ちっ! これで精々金稼いで俺に楽させてくれよ!」
――その頃、ニギルは……いや、黒髭商会はローランの手によって潰されていた。
〇
黒髭商会の応接間。
重厚な扉の向こうでは、ニギルが悲痛な叫び声を上げていた。
「申し訳ありません! 申し訳ありません! ですから! それだけは! それが無くては私は!」
扉の先にはニギルと、部下を引きつれたローラン。
ニギルは、ローランの足元に縋りつきながら泣き叫んでいた。
ローランの手には一枚の紙――黒髭商店の営業許可証が握られており、ローランはその紙を今にも破ろうとしている。
「ローラン様! お願いいたします! 靴でも何でも舐めますので! それだけは!」
しかし、それが無駄だと言うことは誰の目から見ても明らかであった。
ニギルを見下すローランの目は暗く、ニギルが何をしようとも決して許さない覚悟を秘めていた。
ローランは足に縋りつくニギルを蹴り払うと、静かな口調で言った。
「この黒髭商会の営業許可証は、私ローラン・アルフレットの名の元に没収する」
「ああああああああ! あああああああああああああ!」
泣き叫ぶニギルを冷酷な目で見つめながら、ローランはニギルの営業許可証を破り捨てる。
ローランがビリビリに営業許可証を破り捨てる頃には、ニギルは床に破り捨てられた営業許可証を放心しながら見ていた。
(うっ……嘘だろ? 嘘に決まっている……このニギル様がこんな形で終わるわけが……)
ローランは静かに涙を流しながら座り込んでいるニギルを一瞥すると部下を呼び、酒瓶と煙草を受け取った。
そして、受け取るや否や床に投げつけた。
――ガシャン!
床に落ちた酒瓶は砕け散り、飛沫がニギルの頬にかかる。
こぼれた酒は煙草を濡らし、葉をふやけさせた。
ローランはその光景を一瞥すると、ゆっくりと口を開いた。
「酒と煙草を金貨二十枚で私に売っていたことは許す。しかし、混ぜ物をした酒と煙草を売ったことは許さない」
言葉の一つ一つに尋常ならざる重みが込められていた。
ニギルは座してその言葉を受け止めるだけ。
そこには貴族であるローランと、一商人であるニギルの差が如実に現れていた。
ローランはニギルに宣言すると、踵を返し小さく呟いた。
「……そう言えば。店を買うとおっしゃてたな」
そして、部下を引きつれ黒髭商会の応接間を出て行く。
クロノス様の店を探してみよう。などと思いながら。
「……」
残されたニギルは、その様子を放心しながら見つめていた。
それから、どれほどの時間が経ったのかは分からない。
少なくとも頬を伝う涙が乾いた頃――ニギルは床に散らばった営業許可証を拾い集めると……。
「うおおおおおあああああああああああ!」
そのまま、細切れになった営業許可証を握りしめ、叫んだ。
「ああああああああああ……ああ……」
喉が枯れるまで叫んだ頃には、ニギルの瞳からは生気が失われていた。
代わりに映るのは漆黒の炎。
「……あいつらのせいだ……あのガキ共のせいだ……アイツらのせいで俺は……俺は! 俺はああああああああああ!」
ニギルは握りしめた営業許可証を投げ捨てると、金庫を開けて中にあった金をかき集めた。
そして、そのまま裏路地の奥へと消えていく。
目指すべきはスラム街。この最後の金を使って街のごろつきを雇い、ピットとエリザの店を潰す為に……。
(道連れにしてやる! 道連れにしてやる! あのガキ共の店も潰してやる!)
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