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雨上がり

「おっ、雨……上がったな」


 ロゼを無事に救出し、俺はロゼと共に俺たちの家へと戻っていた。

 びしょ濡れになったから、どっちにしろ傘はいらなかったけど雨が止むのは嬉しいものだ。

 だって、これで両手が開くからな。


「クロノスゥ~! クロノスゥ~!」


「うるさい! 今日だけだからな!」


 現在俺はロゼを抱えながら歩いている。

 所謂お姫様抱っこって奴だ。助けてから甘えてきて困る! さっきまでは傘を差してたからすごく抱えづらかった! 止んでくれてありがとう! 雨!


「ク~ロ~ノ~ス~ゥ~!」


「うるさい! もう一人で歩け!」


 家が見えてきたのでロゼを降ろす。

 うっざ! 今度は足にしがみついてきた! 歩きづらい! 離れろ!


「あ! ロゼ姉さんクロノス兄さん! おかえり~~!」


「おかえりなさい! ロゼ様! クロノス様!」


「ただいまなのじゃ!」


 家に帰ると、ピットとエリザが出迎えてくれた。

 ロゼは一応二人の前ではかっこつけたいのか家に入る直前、一瞬にして離れた。

 最初からそうして欲しかった。

 今日は疲れた、まずはシャワーを浴びよう。


(うっし! じゃあ親子丼作るか!)


 シャワーを終えると速攻でキッチンへ、親子丼を作っている途中、風呂場で幼女三人が話しているのが聞こえる。


「ロゼ姉さん。なんや今日、えらい上機嫌ですよ? なんかええ事あったんですか?」


「そうですよぉ~すっごいニコニコしてますよ?」


「うふふ、内緒なのじゃ!」


「「ええ~!」」


「おら! お前ら! 早く出ろ! 親子丼が出来たぞ!」


「「「わぁ~い!」」」


 俺の親子丼は、そりゃあもう絶賛の嵐だった。

 ふっふふ。そうだろう! そうだろう! なんせ素材に拘ってるからな! 特に米! 買って良かったぜ!


「クロノス~次また親子丼作っとくれぃ!」


「ウチもまた食べたいです!」


「私の好きな物ランキング1位になりました~」


「はいはい。またロックバードの卵が採れたらな」


 そして、最後はみんな仲良く一つの布団で就寝……じゃ無かった。

 ピットとエリザが寝たのを確認すると俺は時を止め、ロゼを抱きかかえて外に出た。

 扉の前で座り込み、ロゼを膝の上に乗せてやる。


「ちっ! 今日だけだからな!」


「ん~! クロノス! クロノスゥ~!」


 ロゼが膝の上で俺に甘えてくる。鬱陶しい。

 でも、仕方がないんだ。これには訳がある。

 ロゼが家に帰る前、足に抱き着きながら駄々をこねたのだ。


「い~や~じゃ~! 今日だけは甘えさせとくれ~!」


「……っ!」


(いつも甘えてんだろうが!)


 と、思ったが。

 今日は怖い目にあったからな、仕方ない。

 俺は大人だから、少しくらいガキの我が儘に付き合ってやろう。


「クロノス~!」


(ウザい)


 煙草を吸いながら、顔を近づけてくるロゼの顔を押し返す。

 コイツは知らなかっただろうが、今日死ぬほど大変だったんだぞ?

 詳しくは分からないが、多分止まった時間の中を半日以上動き続けた。

 空に向かって煙を吐き出しながら、今日の事を思い返す。


 〇


【ガキは預かった。返して欲しければ武器を持たずに、リベル西にあるゴブリンの洞窟に来い】


 この文章を見た瞬間ーー時を止めた俺は、ブチギレながら西へと向かった。

 そして、一時間後。

 ゴブリンの死体と糞尿塗れの洞窟で見つけたのは、縛られたロゼと、懐かしい顔――エレンだった。


「っち! てめえかよ!」


 ロゼの無事を確認すると、俺は止まった世界の中で悪態をついた。

 俺は、もう二度と人間を殺さないと決めている。

 相手が人間じゃなかったら細切れに切り裂く予定だったが、エレンじゃ殺せない。くっそ!


(というか、なんでコイツ俺に喧嘩売ってきたんだ?)


 少しだけ考えて、結論は出そうに無いなと思い。考えるのを辞めた。

 考えるだけ無駄だ。とりあえず敵って事だけ分かればそれでいい。

 とりあえず、ロゼをここから運ぼう。丁度荷台もあるしな。


 ロゼを縛ってあるロープを解き、荷台に乗せて近くの草原に運ぶ。

 一段落したところで、ふと考える。


(あの状況的にロゼ……エレンとなんか話してたよな)


 とりあえず二人の話を聞こうと思い立つ。

 一旦ロゼを草原に降ろし、再び荷台を引いてゴブリンの洞窟に行く。

 そこでエレンを荷台に乗せてとりあえず草原に運んだ。

 適当にその辺に立たせて、ロゼを再び荷台の上に乗せる。


(マジで疲れた……一旦煙草吸おう)


 アイテムボックスから傘を取りだし、煙草に火を付ける。

 少し吸った所で本題を思い出し、時を動かした。


「は?」


「なんじゃ!?」


 エレンとロゼが同時に声を上げる中、俺は煙を吐き出しながら簡潔にエレンに質問した。


「……何か言うことは?」


 まずは謝罪。

 次になぜロゼを拉致したかの説明。これを待っていた。


「なっ……は? ク……ロ……ノス?」


 煙草を吸いながら、動揺するエレンの次の言葉を待つ。

 とりあえず謝罪が無かったらぶん殴る。

 先にロゼが口を開いた。


「コヤツお主にゴブリンの糞を食わせた後、殺すとか言ってたぞ!」


「へぇ」


 じゃあ同じことしてやろ。

 再び時を止める。


 ――ここからが大変だった。


 煙草を捨て、再びロゼを荷台から降ろし、エレンを荷台に乗せ、ゴブリンの洞窟へと向かう。

 そこで、ゴブリンの糞をクロノスの口に入れようとして……手が止まった。


(待て待て待て待て。ゴブリンの糞なんて絶対触りたくない)


 街に行って、柄の長いスプーンを買うことに決めた。


「金が無い!」


 街に戻ったところで、米を買ったせいで金が無くなっていることに気づいた。


「あああああああああああ! 面倒くさい! 面倒くさい!」


 ……一旦家の近くの岩山へ向かい、ロックバードを見つけ出し、羽を一枚貰って来た。

 ……再び街へと向かい、獣人のおっさんの店に行って、銅貨二枚と交換。

 ……そこから食器屋に行き、銅貨二枚と柄の長いスプーンを交換。

 ……またゴブリンの洞窟に戻り。


「汚い! 臭い! 最悪だ!」


 手で触らないように、慎重にスプーンで糞を掬ってエレンの口の中に詰めて行く。

 詰め終わったらスプーンを全力で投げ捨て、再びエレンを草原へ、さっきと同じ状況にして時を動かした。


「おえええええ! はあ? 何で俺の口の中に糞が!」


 動きだしたエレンが吐き出すのを見て、本当にここまでやる必要はあったのかと自問自答してた。

 この一瞬の為にどんだけ頑張ったんだよ俺。


「お前はこの後俺を殺す予定だったようだが……俺は人を殺さない。今逃げて一生俺に関わらないか、戦ってボコされるか選べ」


 戦ってきて欲しかった。

 めちゃくちゃボコボコにしたかった。


「死ねええええ! クロノス!」


 やったぁ!


 エレンが剣を抜き、振りかぶり、動かない俺に向かって剣を振り下ろすのを見ながら思っていたのは……。


(相変わらず遅っそいなぁ……しかも……)


「剣筋が曲がってんだよ」


 俺が『深紅の鷹』にいる間、何回直したと思ってんだよ。

 なのに、まだ曲がってるのかよ! ふざけんな!


(時よ止まれ!)


 剣が身体に当たる直前に時を止め、今日の苦労を拳に込めた。

 ついでに、まだ剣筋が曲がっている事についての怒りも。


「今日! 俺が! どんだけ! 心配したと! 思うんだ!」


 静止したエレンをボコボコに殴っていくが、まだ恨みは収まらない。


「何! キロ! 歩かせるんだよ! 剣筋も! まだ! 曲がっている!」


 まだまだ怒りは収まらない。


「一番ゴブリンの糞がキツかったぞおおおお!」


 これ、圧倒的にこれ。ここが今日一番きつかった。


「オラオラオラオラ! オラオラオラオラ!」


 そして殴っていくにつれ、涙が出てきた。

 ロゼを助けて、コイツを殴って、早く帰っていれば良かった……。

 余計な事するんじゃなかった……。

 止まった世界だから時間は経過してないけど……俺の今日一日。


「無駄無駄無駄無駄! すげえ無駄な一日過ごしたわああああああ!」


 殴り飛ばし、地面に吹き飛んだエレンを見て時を動かす。


「二度と俺に関わるな」


 本当にそうして、すげえ疲れるから。


 〇


 ここまで思い出したところで、ロゼの甘える声で我に返った。

 膝の上で、もじもじとしたロゼは、少しだけ深呼吸して言った。


「クロノス? 今日は、かっこ良かったぞ?」


 上目使いで目を潤ませながらロゼは言う。

 なにガキが大人ぶってんだ。どうでもいいわ。興味ない。


「ああ、どうも」


「お主は相変わらずじゃのう……」


 今度は少し拗ねた。

 俺の膝から離れようとして……やっぱりやめたのか、戻って照れくさそうに頬を染める。


「ん~」


 ロゼが目を瞑り、口を尖らせ顔を近づけてきた。

 やるかバカ。ガキの趣味は無い。


「死ね」


 手で押し返すと、ロゼはキョトンと目を丸くして答えた。


「儂は死なぬもん」


「ふはっ! 確かにそうだな!」


 急に面白くなって、そのまま笑った。

 ロゼも一緒に笑い出す。

 確かにお前の事百回以上殺したけど、死ななかったからな。

 死なないよ。お前は。


「でも、今日はのぉ……幸せすぎて……」


 笑い終えたロゼは、俺の顔を両手で掴むと顔を近づけ……。


「生まれて初めて死んでもいいと思ってる」


 真剣な表情でそう言った。

 何となく……ロゼの顔が三年前の顔と重なった気がした。


「あっそ」


 そのまま、ロゼを突き放すと俺は家に戻る。

 くっだらない。実にくだらない。


「……っ! お主、今時を止めたじゃろ!」


「止めてねえよ馬鹿」


「じゃって……」


「死ね」


 俺は唇を触っているロゼを見ないように、扉を閉めた

 くだらない。実にくだらない。

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