元最強勇者 追放される
「クロノス。お前は追放だ。荷物持ちだけだったら誰にでも出来る」
冒険者ギルドの酒場。
リーダーのエレンが話があると言うので行ってみると、俺は席に着くなりパーティからの追放を言い渡された。
無言でポケットから煙草を取りだし、火を付ける。
ゆっくりと煙を吐き出しながらエレンに問いかけた。
「へぇ……俺がいなくても大丈夫なのか? そんなに弱いのに」
エレンのこめかみがピクリと動いた。
「荷物持ちの分際で何を言ってやがる! お前がいなければこのパーティはもっと上に行けるんだよ!」
ドンッ! と、エレンはテーブルを叩いた。
周りの冒険者が何事かと視線を向けたが、冒険者通しの言い争いなんて良くある事だ。
すぐに視線を戻した。
「実は俺、荷物持ちついでにお前らの援護してたんだぜ? 俺抜けたら死ぬけどいいの?」
「嘘を付け! 何もしてないだろ!」
エレンが自分が飲んでいた酒を俺にぶちまけた。
咥えていた煙草の火が消える。
そんな俺の姿を、周りの冒険者が見て笑った。
笑い声を無視し、濡れた煙草を床に吐き捨てた。
「今なら間に合うぜ? 謝れば許してやるよ」
「ふざけるな! 誰が謝るか! 出て行け!」
「そうか」
と、俺は煙草を吹かしながら立ち上がった。
エレンが驚いた表情で叫ぶ。
「まっ……待て……今、煙草は捨てたはずだろ? なんで吸ってる!? なんで服が乾いている!」
俺はその声を無視しながら酒場を後にする。
俺はAランクパーティ『深紅の鷹』から追放された。
いや、正しくはCランク相当のAランクパーティか。
精々これから頑張って欲しいものだ。
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