その一
さて、突然だがこの世に異世界転生などといった異世界無双モノは存在するだろうか。
答えは否である。
もしかしたら、地球のどこかの誰かが交通事故に見舞われた後、チート能力や可愛いけどちょっとめんどくさい女神と一緒に“きゃっきゃうふふ”な男なら誰もが憧れる物語が存在するかもしれないが、自身が経験してない以上、俺視点から見ればそれは幻想であり妄想でしかないのである。
そして、我々が生きるのは厳しくも儚い現実である。嫉妬、欲望に塗れ、裏か表かも分からない。そんな世界である。
そこである時、考えた。「ならば異世界に行けばいいじゃない。」と。
それはもうたくさんの努力をした。いつ異世界に飛ばされてもいいように筋トレを行い、使えそうな豆知識を蓄え、毎日の登下校では誰かの交通事故の身代わりになれるように心構えもしていた。
しかし、目の前に何かが起こることは無かった。それはやはり幻想で妄想でしかなかった。
でも、隼間帝人は、そんなことで諦める人間ではなかった。
「異世界がダメなら、現実世界で無双すればいいじゃない。」
こうして隼間帝人の無謀とも言える挑戦が始まることになったのである。
それから、必死に勉強した。それに毎日の部活に加え運動や筋トレも継続的に行った。傍から見れば勤勉で優秀な中学生に見えたことだろう。
「しかし、意識だけは高い隼間帝人にとって、それはただの通過点に過ぎないのである。なぜなら、現実世界で無双すると決めたあの日から、俺の目標は決まっていたのだから!!」
「何言ってるんですかおにいさん・・・。」
「そうよー。早くしないとお肉無くなっちゃうわよ帝人。」
ジト目で睨みつける妹と、お節介な母。
「それにしても、帝人がほんとに受かるなんてねー。ほんと頑張ったのね。」
「そこに関しては同意見です。凄いです。」
そう今日は、高級焼き肉店で高校の合格祝いである。
褒められ、つい照れてしまった。
まあ、今日くらいは素直に自画自賛しても怒られないだろう。おれ超えらい。超がんばった。
この二人含め今日は色んな人から称賛の声を浴びた。
それは、俺が受かったのが雉鳴学園という超エリート校だからである。そこは日本で一番優秀な学生が集められ、校風は自由であるが実力主義。卒業すれば、日本、いや世界を引っ張っていく存在になることが約束された学園。
そして、超天才どもをなぎ倒し、雉鳴学園で頂点、すなわち日本一の生徒会長になることこそ、現実世界で無双するということに違いない。
こうして無謀ともいえる戦いが幕を開けるのだった・・・