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歌は異世界を救う!?(仮)  作者: なおゆき けいとし
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エルフのフラグが立ったようです。

                          シリの村編

                    エルフのフラグが立ったようです。


「い、いや。そんな落ち込むなよ。」

「そ、そうよ。ね、大丈夫。泣かないで。」

下を向いてしまった敬子に、焦った様子の二人が急いでとりなす。


「おいおいおい。どうしたどうした?」

「どうしたの?迷子?」

その慌てた様子が注目を引いたのか、顔を上げると、ゴツイ兜をかぶった人や、露出多めなお姉さんやらが後から後から集まってくる。


「いかがした?小さき者よ。」

ふいに、低くよく通る声で呼びかけられたと思ったら、膝に手が入って抱き上げられた。目の前には耳が若干長い、えらく美形なお兄さんがいる。


「へっ?」

敬子は、突然高くなった視界に驚いて、目をしばたかせる。

「エルフだ…」

「おいおい。エルフは人に興味を示さないんじゃないのか?」

「いや、割と小さい子好きみたいだぞ。なんか迷子を捜してもらった奴とかいて…」

誰かのささやきが、耳に届き、そのまま周囲はざわめきに包まれる。


流れるような金髪に、透き通る碧をたたえる瞳。その瞳に至近距離で心配そうに見つめられ、あまりのまぶしさに敬子は声が出ない。

それを脅えからととらえたのか、エルフは最初の二人の方へ向き直った。


「いかがした?人間の。」

声をかけられた二人は、集団の圧に押されながら、しどろもどろに答える。

「いや、俺たちは相談に乗ってただけで。」

「そうそう、この子が働きたいって、ねぇ?」


出会ってから、仕事の相談までの話しを二人がすると、周囲は同情的な眼差しになった。

「こんな小さいうちからねぇ。」

「親はいないのかい?」


「親はここにはいません。っていうか私、もう15歳で…」

そう言った途端、周囲が静まりかえる。心なしか皆の視線がマントに隠れた胸を見ている気がする。

…おおい、ここまでが1セットなのか…!?敬子は頭を抱えたくなった。


「…そ、そうかい。15歳…。」

「仕事はないかもしれねえが、コレ食べて元気だしな。」

「おお、これも食え。これも。」

「まずは、大きくならないとねぇ。」


そんな声と共に干した果物や、緑色をした薬草みたいな物、飴等が次々に差し出される。

「あ、ありがとうゴザイマス。」

何か複雑な気分になりながら、引きつった顔でお礼を言う。敬子が両手に一杯に受け取り、持てなくなった所で噴水の縁にも並べられていった。


「ええと?」

渡し終えた人たちが、イイ笑顔で「頑張れよ。」と去って行く中、まだ美形エルフのお兄さんは、敬子を抱いたままだ。

「小さき者よ。我と来るか?」


先ほどよりも数段優しい声でささやくように言われる。

まだ会って数秒なのに、どうしたこの人。(いや、エルフだった。)

何だ?何がフラグだった?エルフに養われるフラグ??パニックになった敬子が絶句していると、


「こーら、アス。マードックやルリスとは違うのよ。」

横から露出高めなお姉さんが声をかけてきた。皮でできた下着?の上下からは窮屈そうに胸とお尻がはみ出している。マントの下から覗く褐色の肌は均整の取れた体をより美しく魅せていた。

「ごめんね、ほらほら。降ろして降ろして。」


爆胸姐さんは、美形エルフの腕を軽く叩いて、降ろすように促す。敬子は、ようやく抱っこから解放された。

アスと呼ばれた美形エルフはアスティルト、爆胸姐さんは、ルリンドと名乗った。5人のパーティで各地を旅する冒険者らしい。よく見れば、アスの後ろには弓矢が、ルリンドの皮下着にも剣が付いている。

「これからダンジョン入りなのに、連れて行けるわけないでしょ?」

腰に手を当ててアスに説教する姿は、完璧に犬を拾ってきた子どもに言い聞かせる母親だ。

もしかして、先程のマードックやルリスは動物の名前だろうか。だとしたら、ペット扱い!?


「むう。いや、しかし。」

なんだろう。このアスさん。浮き世離れしているというか、考え無しというか。ダンジョンに挑む前に子どもを拾ってどうする気だったんだろう…。生け贄??


エルフは寿命が長い分、子どもが生まれにくく、そのためどの種族でも幼い者は大事にするらしい。それで声をかけられたのか、敬子は何となく納得した。


「ケイ。あなたの事情は分かった。でも、明日の自分たちのことも分からないのに連れてはいけないわ。」

ルリンドがかがんで敬子に目線を合わせる。


そりゃ、そうだ。一緒に行った所で自分の身も守れない奴なんて邪魔者以外の何者でもない。流れ弾に当たって死にたくはないし。そう納得してルリンドに笑いかける。

「はい、分かります。声をかけていただいてありがとうございました。」


「あんた・・・。」

そう言うと、ルリンドは黙ったまま考え込んでしまった。

「ケイ。幼き者は一人では生きられぬ。何かあったら我の里を尋ねよ。」

アスは、そう言うと首にかけている首飾りを取って、敬子の首にかけた。


「えっ、えっ。もらえません。こんなの。」

首飾りは、皮の紐にドングリを模した銀細工が掛かっている。アスが首にかけていたくらいだ。大切な物に違いない。それがエルフの村の通行証になるのだろうか。どちらにせよ、おいそれともらえない物だ。


「良い、良い。再び見える時まで、健やかにな。」

慌てて首飾りを外そうとする敬子を手で制し、その頭をひとなですると、アスは歩き出した。


「へ?いや、ちょ、ちょっと、アスさん。」

突然の別れに、慌ててアスを追おうとしたケイは、ルリンドに手首を捕まれる。

「いいんだよ。ケイ。アスは、ああ見えて見る目がある奴だ。あんたに何か感じる物があるんだろう。もらってやりな。私からは、これだよ。」


そう言うと、ルリンドは小さな短剣を敬子の両手一杯に積まれた果物やら飴やらの上に絶妙なバランスで置いた。

「は?いや、ダメですよ。いただけません。」

短剣は敬子の両手よりも少し短いくらいで、攻撃をするというよりは、お守りとかアクセサリーという感じだ。剣の柄には赤い宝石がきらめいている。


「あんた一人なんだろ?くれるっていうものは、もらっときな。それで、どうしても困ったら売っぱらっちまえばいい。」

「いやいや、こんな大事な物受け取れませんよ。」


その後ルリンドと敬子の「受け取れ。」「無理です。」は数分繰り返され、先に折れたのはルリンドだった。

「あんたも案外強情だね。いいよ。分かった。それはあんたに預けとく。いつか返してくれればいいから。」


それが短剣を受け取らせるための優しい嘘だと分かって敬子は、胸が熱くなる。

「それなら、私も何か…」

両手いっぱいに広げられた貢ぎ物を見ながらそう言うが、

「いいんだよ。それはあんたが貰った物だろ。黙って受け取っておきな。」


軽くウィンクしながら笑うルリンドは、思わず「姐さん!」と抱きついてしまいそうなくらい格好イイものだった。




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ぼちぼち継続していけたらいいなと思います。

次回は金曜です。



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