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それは紫色の朝顔のように 万博の輝



 三日後に、老紳士はやってきた。先日のように整った様子の好感を持てる紳士で、香沙音はにっこりと微笑みながら涼しい屋内へと招く。


 「さぁどうぞお上がり下さい。お茶菓子も用意しましたのよ」

 「これはこれはありがたいものです」


 帽子を脱ぎ、軽く一礼してから居間へ迷いなく歩く姿に、かつてこの家の主人だったというのは本当なのだろう。懐かしげに見渡し、柱に「一」の字が何回も彫られたものを見つけ微笑む。



 「これは孫娘の背を印したものです。ふふ、懐かしい」

 「お孫さん、ですか」

 「ええ。清楚な娘でした。お淑やかで可憐な、優しい子でした。夕海(ゆみ)と言いましてな」



 過去形のそれに、香沙音は顔をくもらせる。老紳士はまるでそこに孫娘がいるかのように優しげな眼差しを孫娘の成長を刻み続けた柱に向け語り続けた。


 「この家の裏に植えた朝顔。孫娘の名前をつけたのですよ。夕海、ってね」

 「まぁ…」



 色々と聞きたいこともあったが、過去形で語られる孫娘についてこちらから聞くのははばかられた。もういないのか、なんらかの理由で疎遠になったのかはわからないが、部外者が聞いてはならないことだろう。




 「賢く、瑞々しい輝きにあふれた子だった」








 

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