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ソロキャンパーの転生先はショタっ子魔族でした  作者: しき
異世界に転生しまして
26/32

第25話 暗闇にて

『■■■■』


『■■■■■■■■■■』


『■■■■■■っ!』


『■■■!?』


『■■■■■■■■■■』


声が聞こえる


理解できない言語で騒ぎ立てている

うるさい、だまれ


訳の判らない言葉で話すな

こっちにも判るように喋れ

本当に耳障りだ


これだから話の通じない奴らは嫌なんだ

あっちでもこっちでもそれは変わらない

言語が違うだけなら我慢も効く

せめて意思の疎通を図ろうって気は無いのか


『■■■■■』


緑色した禿げ頭がこっちを覗き込んでいる

目が合った

生臭い息がかかる

頭の奥に鈍痛が響いた


『■■■■■■■■■■』


手足は縛られていないようだが動かない

正確には動きが鈍い

全身に虚脱感がある

自分の思い通りに動いてくれない


『■■■■■■!』


『■■■!』


『■■■■■■■■■■■■■!!!』


うるさい連中だ

何笑ってんだ

こっちはお前らに殴られた頭が痛くてそれどころじゃない

こいつらが騒ぐ度にチカチカと視界が明滅するくらいの頭痛が走る


禿げ頭の笑い声が増えていく

こいつらまだこんなに生きてたのか

確かにこれは見敵必殺だ

生きてるだけでウザい連中なんてそうそういないもんな


『■■■■!!』


一際小さい緑色の禿げ頭に思いっきり顔面を蹴り上げられた

木製のレッグレガードが横っ面に当たって頬骨の折れる音がした

もんどりうって倒れ込んだぼくの口から奥歯が散った

痛みも怒りも無く、何か変な絶望感があった


目の前には錆びて刃こぼれして薄汚くて

向こうじゃ価値の欠片も無いような大ぶりのナイフ

暗い森の中じゃ光も反射しない

最後に見るのがコレか


これ死ぬんじゃないか?

ここで殺されるんじゃないか?

まだこっち来て数年だぞ?

こんなあっさりしたもんなのか?


あっちに帰りたかった

仕事は厳しいけど暖かい布団があった

食べたい時に食べたい物が食べられた

少ないけど心の許せる友人がいた


カラオケに行きたい

ボーリングに行きたい

キャンプに行きたい

ツーリングに行きたい


嫌だ 生きたい

痛いのは嫌だ 生きたい

死にたくない 生きたい

こんな所で死ぬのは嫌だ 生きたい


生きたい

生きたい

生きたい

生きたい


ぼくは生きていたい

面白おかしくなんて言わない

せめてまっとうに生きたい


死にたくない

死にたくない


死ぬ…


『■■■■■■■■■■■』


「ーーーーーー!!!」


右目にナイフが入ってきた

痛い痛い痛い

声にならない声が出る

空気の塊が喉を通って音になる


右側の視界が完全に黒くなった

本当に失明した

本当に刺した

右目を失った


笑い声がこだまする

死ね

だらだらと右目から血が溢れてくる

死ね


奴らは手を叩いて笑っている

死ね

奴のナイフにはぼくの右目が刺さっている

死ね


ナイフに刺さったぼくの目を引き抜く

殺す

奴はそれを口に入れ、咀嚼した

殺す


笑い声はさらに高まる

殺す

腹を抱えて笑うやつがいる

殺す


咀嚼した目玉を吐き出し踏みつける

殺してやる

唾を吐いて口元をぬぐっている

殺してやる


奴が何かを叫び、笑い声がさらに上がる

殺してやる

ナイフを掲げて叫び声を上げる

殺してやる


近づいてくる

殺してやる

ナイフを掲げながら

殺してやる


『殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!』


奴らの声が判る

殺してやる

殺してやる

殺してやる


『殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!』


奴らの言いたいことが判る

殺してやる

殺してやる

殺してやる


『殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!』


奴らの言語が今なら理解できる

殺してやる

殺してやる

殺してやる


『殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!』


知性の欠片も無いような連中の叫びがこだまする

殺してやる

殺してやる

殺してやる


殺してやる

殺してやる

殺してやる

殺してやる


翻る刃は赤黒く煌めいて

光の渦がぼくの全てを塗りつぶした

いきなりおとずれる浮遊感

縦に伸びた光のトンネル、落とし穴をを落下していく浮遊感


これはあの時のものだ

死んだときのものだ

あっちのぼくが死んだ瞬間だ

こっちに来てからも感じたあの感覚だ


落ちても落ちても終わらない

体はどんどん落ちていく

どこまでも…どこまでも…

光の奈落の底へと落ちていく


またしてもそれが居た

それは光の塊に見えた

光で埋め尽くされた空間の中にさらに明るい光の塊が浮かんでいた

さらに明るいその光の塊が口を開く


「あのさぁ、ちょっと早すぎないかい?」


人の形をした光の塊に口の形をした闇が伸びる

またこいつか

ぼくをこっちに連れてきた元凶

何もかもこいつのせいじゃないか


「その言い方は傷つくなぁ

 僕だって悪気があったわけじゃないんだし」


その口ぶりじゃ元凶ってとこは認める訳だ

悪気があろうと不可抗力だろうと

例え執行猶予の余地があっても元凶には変わりないわけだ

禿げ頭繋がりで一緒に殺してやりたいところだ


「そういきりたたないでおくれよ

 僕だって君の今の状況は憂いみたいなもの?

 まぁそんなのだって感じてはいるんだからさ」


だとしてもこっちの憤りも収まるわけじゃない

右目は無くなった

今まさに死のうとしてた

これで何を許せばいい


「そう言わずに許しておくれ

 今の状況は僕だって気に入らない

 打開はしたい

 でも僕には直接手は出せない

 君に何とかして貰いたいのさ」


出来るわけがない

お前が出てくる一瞬前、ぼくは死ぬ間際だったんだ

ここから何かできるならそれこそ神様だ

手は出せないっていうお前に何ができるってんだ


「彼らを何とか出来なくても、君になら干渉できる」


ぼくに?

干渉する?

何をするつもりだ

それで今の状況が何とかなるのか


「何とかなるかは君次第さ

 だけど信じてほしいね

 僕は君に死んで貰いたくないのさ」


その言葉をどう信じればいい?

この状況を招いたお前をどう信じればいい?

信じる根拠が何もない

今のお前には恨みしかない


「間違えないでほしい

 元凶は確かに僕だと認めよう

 でもこの状況は君が招いたものだ

 君の軽率な行動が引き寄せたものだ

 だから信じてもらうしかないのさ」


光の塊に走る闇は笑顔を崩さない

その笑顔が余計に腹立たしい

何を以って信じればいい

信じて救われるのは狂信者だけだ


「なら君も狂信者とやらになればいいのさ

 信じる者は救われるって言うだろう?

 君も僕を信じて救われようじゃないか」


断じてお断りだね

そこまで言うなら信じるに足る根拠ってのを示してほしいもんだ

奇跡があるなら見せてくれ

そうすりゃ考えなくも無い


「良いね、その言葉を待っていたんだ

 根拠を示そう

 奇跡も見せよう

 君をこの状況から救ってみせよう

 君に死んで貰うわけにはいかないんだからね」


イマハマダ

奴は最後にそう言った、ように見えた


 




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