第24話 帰路にて
ぼくジーク!
4歳!
今ゴブリンの群れに追われてるの♪
ふざけんな!!
無事に戻ったら絶対一発ぶち込んでやるって意気込みで逃げ回ってます
こうなったのには理由がございます
そりゃもう聞くも涙、語るも涙
無事にお役も果たした帰路での出来事です
ぼくはちょっとトイレに行きたかっただけなんです
それでクリストフに一言告げて一行を離れたんです
ほんの3分程度の出来事
振り返れば誰も居なかった…
ここは生い茂る森の中
方角なんて判ったもんじゃありません
きーきーきゃーきゃー獣の声が響きます
あ、これアカン奴や…
といってただ立ち尽くすだけってのも芸が無い
闇雲に歩き回っても遭難しそう
救助の期待は…
うん、イヤな予感しかしない
もうちょっと何かしら使える物でも持っておくべきだった
せめて真面目に魔術を習っておけば良かった
才能が無いから後回しテヘペロのツケがこんなあっさり訪れました
生きるって大変だね
そんなわけでせめて少しでも明るい方へと歩き出しました
拾った木の棒をフリフリしながら少しでも気丈に歩きます
時折森の木の幹に目印のように傷を付けながら
気付けばあっさり日は落ちておりました…
方角ってレベルじゃねぇぞ!
ガチのマジで一寸先は闇です
自分の手元すらおぼつかない
気を抜けば上下すら見失いかねない暗闇でした
「…ライトニング」
ほんの僅かな光源
余り大きくしすぎると魔力の消費も大きくなるので命とり
かろうじて手元足元を照らす程度の光源を生み出します
これだってそんな何時間も持たないんですけどね
いっそ森を照らし切る勢いの極大光量を生み出すのも考えました
そうすりゃ探しに来てくれているであろう人達の目印にもなるかもしれません
ただそれが人以外のナニカさんの目印になると困ってしまいます
無残に食い散らかされたバラバラ死体はぼくが一番望んでいないのです
そうして目の前に浮かび上がったのは緑色の禿げ頭
テラリというかヌラリというか
油はキッチリなのに産毛の処理を忘れたダブルバイセップスみたいな
不自然に筋肉の発達したぼくと同じくらいの背丈のゴブリンが居ましたとさ
「…へ?」
『■■■…?』
「……」
『……』
「くぁわせふじこー!!」
『■■■■■ーー!!』
びびった!びびった!びびった!
いきなり目の前にナイフ持ったゴブリンが居たらびびって当然だって!
何言ってるのか判らないけど何か叫びながら追ってくるのが音で判るのが怖い!
金属音というか刃物を振り回してるって絶対!
『■■■■!!』
「みぎゃぁぁぁー!」
音を聞きつけたのか今度は前方からもう一匹が飛び掛かってくる
頭の中のちっちゃいぼくが警鐘を鳴らす気分
止まれば死ぬよ☆カーン
見りゃ判るよ、あの斧とか絶対カチ割る系じゃん
「ねこだまし!」
パチンと両手を叩き合わせる
音だけじゃない
そこから溢れるのは昼の太陽にも劣らぬ一瞬の爆光
至近距離で浴びせられれば視力もすぐには戻らない…はず!
寸手で斧を回避する
空気を裂くというよりでっかい団扇を耳元で扇がれたような音がした
体勢を崩したままもんどりうって転がった
視界の端に移ったのは顔を抑えて明後日の方向に武器を振るう2匹
「よし、効いてる!」
『■■!!』
『■■■■ー!!』
そしてさらに出てくる3匹の緑色した禿げ頭
増えたー!増えた―!
絶対さっきのねこだましで場所ばれたよね
最初のゴブリンの声だってあたりに響いてるもんね!
走れ走れ走れ!
止まれば死ぬ!
コケても死ぬ!
追いつかれても死ぬ!
どっちに逃げる?
街はどっち?
森の出口は?
せめて少しでも開けた場所は無いか?
考えてる余裕は無い
少しでも明るそうであの叫び声の聞こえない方へ!
ほんの僅かでも希望のありそうな方へ!
ゴブリン達の居ない方へ!
『■■っ!』
視界がブレた
足が止まった
周りの音が消えた
心臓の音だけが聞こえる
頭が痛い
地面が目の前にある
赤くて暖かい液体が目の前にある
これは血だ
ぼくの血だ
体が動かない…
『■■■■■』
ぼくの意識はそこで途切れた




