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ソロキャンパーの転生先はショタっ子魔族でした  作者: しき
異世界に転生しまして
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第17話 旅路にて~2日目の夜~

ジークが泣き疲れて眠ったあと、俺はメルポから受け取ると牛車の中に寝台をこさえて横たえた

その顔はどう見たって子供だ

事実子供で、まだ4歳だ

俺が初めて人を斬ったのは5歳になった頃だ

当然だが、斬った相手の事などとうに忘れた

思い出す必要も思いつかないほどだ

なぜ斬る事になったのかも思い出せない

何人斬ったのかなんて数えすらしてこなかった

だが初めての夜は興奮して寝れなかったのは覚えている

ジークに同じことをさせるつもりは無かった

だがちょうど良い機会が訪れた

遅かれ早かれ、ジークはこういった世界に踏み込む事になる

半魔という生い立ちは望む望まぬに関わらずジークを巻き込んでいくだろう

ならこの機会は存分に活用すべきだ

今を逃せば何時になるか判らない

ジークが独り立ちした後では遅いかもしれない

俺たちの目の届かない所でそうなれば誰もフォロー出来ないだろう

俺のように仲間に恵まれるとも限らない

今ならまだ俺たちが居る

ジークの為なら例え国軍であっても相手にする覚悟がある

それがたまたま脛に傷のある、それも大した腕じゃない連中が表れてくれた

絶好の機会だ

これが成功なのか、それとも失敗なのか

判る頃にはきっと独り立ちした後だと思えば少し寂しくもあった

肩を並べて剣を構える日が来るだろうか

まともに教えたことは無いが、ジークは剣の才がある

俺の子ならそれは確実だ

いずれ俺も超えてくれるだろう

竜殺しなんてケチ臭い事は言わずにいっそ神殺しにでもなってもらいたいものだ

魔王を倒して人の勇者になるってのも面白いかもしれない

俺に出来なかった事を押し付けるようだが、期待は親の性分だ

この子の将来を思えば顔が綻ぶのを抑えきれなかった


牛車の外に出てみれば妻が俺の剣を磨いていた

その剣は人が鍛えたものではない

エルフのエルロンド卿とドワーフのドゥーブル王の合作だ

ミスリル銀の刀身には全てを切る破魔の文が刻まれている

肉のある魔族はおろか、冥界の亡者すら切り捨てる剣だ

その気になれば神だって傷つけ得るだろう

刀身に一切の刃こぼれは無い

折れず曲がらず撓まず欠けず

この剣があったからこそ俺は今まで無傷で敵を切り捨ててこられた

並の剣なら何度死んだか判らない

エルフの領主より感謝と共に賜った一振り

あの頃の俺たち6人は全盛期だった

ピピン、クリストフ、メルポ、ライラ、オルテローザに俺で6人

揃いも揃った汎人類連合のような6人

衝突も絶えなかったが気の合った仲間たちだった

半分はもう今や何をしているか判らない

最後にあったのはジークの生まれた時だった

オルテローザだけは最後まで顔を見せなかったか

今思えば何もかもが懐かしかった

俺は弱々しくなってきた焚火に薪を放り込んで地面に腰を下ろした

クリストフの起こした風の魔術が瞬く間に新しい薪に火を送り込んでいく

判って無い奴だ

焚火ってのはもっと愛でるもんだ


「早かったんじゃねぇか?」


それはクリストフの重い声

俺を責めている訳ではないだろう

言いたいことは判る

だがタイミングは自分で測れるもんじゃない


「俺が人を切ったのは5歳の頃だ」


「おめぇとジークは違う

 判ってんだろ?」


知ってはいても果たして判っていたのか

こいつはそう言いたいのだ


「手元に囲ってるだけじゃ判らない事もあるさ」


焚火の爆ぜる音が静寂に響く


「ジークは乗り越えるわ

 だって私の子だもの」


妻が力強く断言する

それは期待では無く確信だろう


「この人が何回浮気したか判る?

 結婚前ならともかく、二日目にして酔った姉さんに手を出したのよ?

 それも私の目の前で」


いかん

変な方に飛び火した


「ヒャッヒャッヒャッヒャッヒャ!

 おいマジか!

 それ初めて聞いたぞ!」


「待て待て待て!

 それについてはちゃんと謝ったろ!」


「いーえ!

 私は許してませんからね!

 オルテがパーティーを抜けたのもアナタが無理矢理―――」


「―――シグルドォォォォォ!!

 テメェその首引きちぎってやるァァ!!」


「違う!

 冤罪だ! 未遂だ!

 最後までやってないって!」


「よぉぉぉし!

 それがテメェの最後の言葉だな!

 覚悟はできてるようで何よりだ!!」



「ウルサァァァァァイ!!」



牛車からジークがこっちを見ていた

憤怒の形相でこっちを見ていた

すっかり忘れてたが、我が子には光速の魔弾があるんだった

光れば死ぬ

これまでの経験とか予測とか丸っきり無視する回避不可能な魔弾

完全に積んでる…


「親の痴態聞かされる子供の気にもなってみろ!

 おちおち寝てられるかー!」


ジークは吐き捨てるように「気分悪いわ」と言いながら牛車へと戻っていった

焚火の前に残された3人

気まずい事この上ない


「…寝るか…」


クリストフはそういうと毛布をかぶった

いずれ俺を超えるどころかあっさりと命まで消されかねない状況

この日は本当に怒らせてはいけない相手を再認識した時点でお開きとなった



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