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超駄作  作者: 井崎居付
3/100

出来の格差

「あら、美優の成績は完璧ね。全て二重丸なんて」

「全部二重丸の通信簿にしてしまうなんて美優は天才だな」

「ありがとう。お母さん、お父さん。でも私は天才じゃないよ」

「そんなことないさ。美優はこんなにも出来が良いんだ。天才だよ」

「えへへ」

 美優は両親からの評価がとても高い。怒られる事は全く無く、いつも褒められている。

「それに対して真結は大半が三角、他は丸で二重丸は無しか。情けない姉ね」

「もっと美優を見習え」

「はいはい」

「はいは一回!」

「・・・はい」

 黒井は美優と比べてとても出来が悪い。両親からの評価も悪い。褒められる事は無く、いつも怒られる。


 黒井には出来の良い妹がいる。妹の名前は黒井美優。底辺でダメダメな姉に対して、妹は完璧で非の打ち所が無いのだ。


 美優は学校でも評判が良く、友達も多い。職員達も美優は天才と思っている。実際に美優は授業で必ず正解を当てて、テストではいつも満点だ。運動神経も良く、体育ではどれをしても凄い記録を出すのだ。それに対して黒井は評判が悪い。美優の評判が良すぎる影響で黒井の評判は非常に悪い。黒井は授業中にはよく居眠りをする。体育では最低記録ばかりだ。


 姉妹の仲は悪いというより、赤の他人のようである。話すことも殆ど無い。幼い頃は仲良しだったが、黒井が小学生になって悪評が広がって、翌年に入学した美優にその悪評がふりかかった。この頃から姉妹の仲は悪くなっていった。しかし美優は素晴らしい人間性で一気に評判は良くなった。それに対して黒井の評判は一向に良くならず、逆に悪くなっていった。美優にとって、黒井の存在は恥の極みだ。


 この状況が変わることは無く、黒井は中学生になった。因みに美優は小学六年生だ。


 どの部活にするか決める時が来た。

「あたしは帰宅部」

「黒井、この学校は全員が部活に所属する決まりだ」

「したい部活は無い」

「・・・とりあえず仮入部だ。出来そうな所に行くといい」

 黒井は担任に言われ、仕方なくどこかの部室に行った。

「運動部は無理だからぁ、文化部から選ぶか」

 黒井は五日間、それぞれ違う部活に行った。

「黒井、五日間でどこに行ったんだ?」

「美術部と演劇部と情報部と将棋部と合唱部です」

「その中のどれかにするのか?」

「・・・演劇部にします」

「そうか」

 黒井は次の週から放課後は演劇部に行った。


 まずは新入部員の演技スキルをテストする。新入部員の中には満点の人がいた。黒井は過去最低の点を出した。

「まさかこの演劇部史上最低の点を出すとは」

「これは頑張らないとね。部を抜けるのは認めないから」

「・・・・・・はい」

 黒井は部長の稲垣優子と副部長の月山桜花にそう言われた。黒井のほかにも黒井ほどではないが点が低い人がいた。翌日から指導が始まった。


 黒井は演劇部に入ってから半年が経った。新入部員は黒井以外の全員が一人前になった。黒井だけ演技スキルが殆ど向上していない。部員達がそれぞれの役の練習をする中、黒井は演技スキルの向上に努めたが、一人前になることは無かった。


 演劇部はたまに公演をすることがある。部員一人一人に役が与えられる中、黒井だけ役が無かった。

「悪いけど今回は黒井の役は無しよ」

「あ、はい」

 黒井は稲垣優子にそう言われた。黒井は全く気にしなかった。


 黒井の一年間の成績はとても低かった。五段階評価で最低の一が半分以上あった。

(うわぁ、どうやって隠そうか)

 当然見られて親から嫌味を言われる。

「一が多すぎる!!」

「やばいな」

「・・・・・・・・・・・・」


 黒井が進級し、美優は中学校に入学した。それから、美優は殆どの部活から勧誘された。

「君運動神経凄いそうじゃないか! ぜひきて!」

「うちに来て! うちに!」

「美優さん! お願いします!」

「お願いします!!」

「お前らうるせえぞ! さあ、俺らの所に来い!」

「黙れ、しゃしゃんな! 私達のとこに来るんだ!」

「掛け持ちにさせろよ」

「掛け持ちにしたら毎日来てくれないじゃないか!!」

「君なら大会に出られるぞ!!」

「うちに来たら賞を取れるよ!」

「はわわわわわ…」

「おや? どうやら慌てているようだ」

「そうか。悪いな。だがぜひうちに来てくれよな!」

 勧誘しなかった部の二つはその光景を離れて見ていた。野球部の二年生と演劇部の二年生だ。

「野球部は行かなくていいの?」

「コーチがやめとけってな。演劇部は?」

「うちはただでさえ部長と副部長と神川さんが凄いのにあの子まで来たらどうなるか」

「部長は稲垣さんで副部長が月山さんだっけ? 神川さんはとても優秀なんだっけ?」

「よく知ってるね」

 その後、美優は陸上部に入部することにした。


 美優は陸上部に入って最初の大会に出場し、一位をとった。

「コーチ、これは凄いです」

「ああ、何年に一人の逸材か」

「あの子可愛いうえに凄く速い!」

 美優は色んな人から注目されていた。


 黒井はやっと役を与えられた。ただし、モブの村人だ。名前は村人Zである。次の公演で村人Zは一言だけ喋るのだった。これ以降の公演でも黒井は村人Zである。村人がいない場合は黒井の役は無い。


 美優も中学生になって五段階評価になったので黒井はまた比較された。

「美優は全て五!? なんてこと・・・」

「この子は神か!? 神なのか!?」

「神なわけないよ。頑張っただけだよ」

「いやいや、幾ら頑張っても全部五は無理だろ」

「あははは・・・」

 美優は凄い成績だ。凄すぎて両親は美優を神だと思ってしまった。

「それに対して真結は一だらけ! 少し二があるだけでこれより上は無し!」

「うわぁ、やばいな」

「あんたは学校で何をしてるの!?」

「普通のことだ」

「普通にしてたらこんな成績はとらない」

「あぁあ、何よこれ。雲泥の差ってやつ?」

「ああ、出来の格差がやばい」

 黒井は酷い成績だ。酷すぎて両親は美優と黒井の出来の格差を感じた。


 黒井は内申点が酷い。偏差値が低めの私立高校を専願で受けることになった。


 体育大会には黒井の両親が来た。撮影をしているが、撮るのは美優だけで黒井は撮らない。美優はどの競技でも凄く活躍していた。黒井は役立たずだ。

「美優ちゃん凄いな! あいつとは大違いだ!」

「姉と妹でこんなに違うものなのか?」

「おや、君達も分かるか!」

「ん? 美優ちゃんのお父さん?」

「ああ、そうだ。違いすぎるだろ、あの二人」

「その通りだ」

 黒井が紅で美優は白だ。白組が紅組に大差をつけて勝利した。


 マラソン大会には黒井の母親が来た。撮るのは美優だけである。因みに男子は五キロで女子は三キロだ。

「スタートしたか。美優が一番なのは決まりだな」

 九分程経つと美優と陸上部の三年生の女子が運動場に戻ってきた。

「ええ!? 九分!? 速いよ!!」

 そこから何人かの女子が戻ってきた。スタートから十八分後には陸上部の三年生の男子が戻ってきた。黒井は女子の最後になった。

「遅!! 絶対歩いてるよ!」


 黒井は受験が近づいてきたので、受験勉強を始めたが、はかどっていない。黒井を応援する人はいない。


 面接の時が来た。二人ずつ入るようだ。黒井は柴山と一緒になった。

(うぅ、やっぱり緊張するな。ちゃんと肯定的の答えないと。てかこの人緊張してないのかな?)

 黒井はかなり緊張しているが、柴山は殆ど緊張していない。柴山がドアをノックし、面接会場に入る。

「どうぞ」

 柴山と黒井は椅子の横に立った。面接官は一人だ。

「では名前を言って下さい」

「柴山西治です」

「黒井真結です」

「はい、それでは座って下さい」

 柴山と黒井は椅子に座った。二人は同じ事を聞かれる。柴山が先に答えて、黒井は後に答える。

「どうしてこの学校を選んだのですか?」

「自分の学力でここが一番合っていたからです」

「先生に勧められたからです」

「部活動は何をしていましたか?」

「部活動はしていません」

「演劇部です」

「好きな食べ物はなんですか?」

「・・・いもです」

「パンです」

「長所と短所はなんですか?」

「長所は・・・声が大きい事です。短所は数え切れないほどありますが、馬鹿なところです」

「長所は馬鹿な事です。短所はゴミクズなところです」

「・・・・・・以上で面接を終了します」

「「ありがとうございました」」

 柴山と黒井は面接会場を出て、暫くした後帰った。


 数日後の受験で、柴山と黒井はしっかりと受験勉強をしてから挑んだ。


 受験の日から数日後、受験結果が届いた。

(どうかな? あ! 合格だ!)

 黒井は合格だった。一方の柴山も合格のようだ。


 黒井は残りの中学校生活を終えた。卒業式は普通に終わり、卒業生達が在校生達と話したり、プレゼントを渡したりしていた。黒井には演劇部の後輩からのプレゼントは無いようだ。黒井は誰とも話さずに帰っていった。


 高校での始業式の日になった。黒井の通う高校には同じ中学校の井下がいる。

(あの偉そうな奴もここなのかよ)

 黒井のクラスには井下はいなかったが、柴山がいた。話すことは全く無い。


 黒井は井下に呼び出され、校庭に行った。そこには井下、当花、水羽、土野がいた。

「黒井が来たぞ。要件を言え」

「俺達で動画を作ろうよ!」

「いいね!」

「どんなのにするんだ?」

「俺ら四人が勇者として悪を倒していくストーリーだ!」

「なるほどな、だけど四人ならなんで黒井を呼んだんだ?」

「悪役になってもらおうと思って。いいだろ、黒井? どうせ暇してるんだからやれ」

「は?」

「は? じゃないよ。中学の時演劇部だったんだろ?」

「ずっとモブだったんだぞ」

「黙れ。悪役をさせてもらえることをありがたく思え」

 井下は偉そうな言動をした。

「・・・・・・・・・・・・」

「・・・無理矢理だな」


 次の休日に撮影をすることになった。四人は勇者の服装をした。

「オレガイチ! スタート!」

 タイトルコールで撮影が開始された。

「俺達の冒険の始まりだ! 悪を倒し、皆の平和を守ろう! では一人ずつ名前を呼ぶぞ!」

 勇者ダウンは点呼を始めた。

「フラワ!」

「はっ!」

「レイン!」

「へい!」

「マグニ!」

「おう!」

「さあ、行くぞ!!」

「「「イエッサー!」」」

 四人の勇者は悪を倒す冒険に出た。

「おや? どうやら近くに悪が出たようだ!」

「そうか! よし! 行くぞ!」

 黒井は出番になったので、鬼のお面を着けて出た。服はジャージだ。

「そこまでだ!」

「貴様らが勇者か。我輩の名はオニハウチだ。貴様らに幸福は無い。我輩が貴様らを倒すからな!」

「ふざけるな! お前が倒されるんだ!」

「ならばやってみろ!」

「いくぞ! グーパンチ!」

 ダウンがオニハウチの腹を強く殴った。

「うああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…」

「やった! 勝ったぞ!」

「弱いな、こいつ」

 ここで撮影が終了した。後は井下が編集して本格的な風景にするだけである。


「いやあ良かった良かった! 今日は記念に食べに行こうよ!」

「いいね!」

「僕は寿司がいいぞ」

「当花、それは流石に無理。ああ黒井は帰って」

 井下は黒井を仲間外れにした。

「・・・はいはい」

「井下、四人で行くのか?」

「そうだよ。黒井はいらない」

 井下達は私服に着替えてファミリーレストランに行き、黒井は鬼のお面を取って帰っていった。


 後日、井下はオレガイチがチャンネル登録されたか調べた。

「そ、そんな」

 一つもチャンネル登録はされていなかった。

「ま、まあ、まだ最初だし、これから増えていくだろ」

 井下は次の撮影の準備を始めた。


 黒井はオレガイチを見た。

「・・・・・・・・・・・・あぁあ、面白くない。こんなんでチャンネル登録されるわけが無い」

 黒井は思った事をそのまま言った。

「理不尽だな。また呼び出されるんだろうな」

 黒井は憂鬱な気分になり、それを紛らわそうと面白い動画や素晴らしい動画を色々と見た。

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