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告白 Ⅰ

この作品は、

「恋はしょうがない。〜職員室の秘密〜」

「恋はしょうがない。〜初めての夜〜」

「恋はしょうがない。Side Storys」の続編です。

前作をお読みになってから、こちらの作品をお読みくださった方が、より楽しめると思います(^^)





「……好きです」



 生徒たちが帰ってしまった、ひっそりとした夕暮れ時の教室――。



 その告白を耳にした瞬間、古庄の全てが固まった。



 1年の間に何度も女子生徒たちからもらう想いの言葉だが、今日のそれは女子生徒が発しているものでも、古庄に投げかけられているものでもない。



 夕陽が赤く照らし出した教室の窓辺には、真琴が驚いた顔をして振り向いている。


 そして、その目をしっかりと捉えて、明快な口調で告白をしたのは……、真琴が担任をするクラスの副担任、高原だった。



「……え?何?…夕陽が好きなの?」



 どう見ても、自分に告白されている状況なのに真琴がそう思ったのは、教室の窓から見える夕陽があまりにも美しかったからだ。



 殺風景な学校の中に、時として生まれるこの夢のような空間。

 そのロマンチックな空間でほんの少しの間だけ、週末婚の寂しさを埋めるべく、二人きりの甘い時間を過ごしたいと目論んでいた古庄は、放課後はいつも教室へ赴く真琴を追って来て、今まさに教室へ入ろうとしていたところだった。



 高原も同じことを考えていたのだろう。同じ場所同じ時を選んで、真琴に想いを告げた。



雨……しかし、恋愛に関しては鈍感な真琴は、自分がそんな感情を抱かれているなんて夢にも思っていないようだ。



「夕陽じゃありません。賀川先生のことです。……僕は賀川先生が好きなんです」



 そこまではっきり言われて初めて、真琴は状況を理解した。



「は?…私を?……どうして?」



 真琴の視線が宙を漂い、戸惑い始める。



「文化祭の準備とかで、賀川先生と一緒に協力して、いろいろしている内に…」



 確かに、あの文化祭の準備の時には、副担任の高原に手伝ってもらうこともたくさんあった。必然的に一緒にいる時間も長くなり、生徒を交えて共同作業をする中でいっそう親しくなれた。



「それに、自分のクラスのことだけでも大変なのに、古庄先生のクラスの面倒も見たり、実行委員の仕事も手伝ったり…。それでも嫌な顔一つせずに頑張っている賀川先生のことが、僕は好きになっていました」



「……それは……」



 文化祭の準備の時は、真琴はただ古庄を想って古庄のために、頑張ろうなどとは思わず、ただ一生懸命に動いただけだ。

 古庄の手足の一部のように役に立てることは、真琴にとって何よりも喜びなのだから、嫌な顔なんてするはずもない。



 それをどういう風に高原に説明しようかと、真琴は言いよどんだ。


 〝古庄先生のことが好きだから…〟と言っても、平沢や理子が古庄に熱を上げているのと同じように受け止められるのがオチだ。


 古庄と結婚していることを打ち明けられたら簡単なのだけど、秘密にしなければならないし、高原を傷つけるような態度もとりたくない。



 真琴が困った顔をしたので、高原は雰囲気を察した。



「…別に、付き合ってほしいとまで思ってるわけじゃないんです。ただ、僕の気持ちを知っておいてほしかっただけで…。賀川先生が付き合ってもいいと思えるまで、僕は待ちますから」



――…お前!それは、結局『付き合ってほしい』って言うことだろ…!!?



 教室の外、廊下でこの会話を立ち聞きしていた古庄は、高原の物言いに心の中でツッコミを入れた。


 つかつかと教室の中に入って行って、高原をつまみ出したい心境になったが、ここで自分が出て行ってしまうと真琴との関係が露見してしまう。

 今は、真琴の対応を見守るしかない。



 しかし、高原が真琴の返事は待たずに出口の方へ歩いてきたので、古庄は急ぎ足でその場を離れ、隣の男子トイレへ逃げ込んだ。




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