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崩壊した異世界――レクシリア  作者: バル33
第一章:小さな村
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その6



          ●●●


 バルネギカ討伐から三日後、外部からの襲撃を未然に防ぐべく絶壁を造り上げていた。

 素材は土。 円上に土をくり貫いていき這い上がることが不可能な塔を建造したのだ。

 いかに巨大なバルネギカだろうとも簡単に崩すことはできまい。

 簡易的な作り物だが一週間は持つだろう。


「雨が降ったら終わりだな。 どうしたものか」


 そう、元が土であるゆえに水分を含めば脆く崩れ去る。

 水を弾くコーティングをしないといけないのだけども……素材が足りない。

 木材は家の建造に使ってしまい無くなり、偶然発見した金属も道具として作ってしまった。

 なにより膨大な量をコーティングする自体最初から無理だったのだ。

 それでも毎日月明かりを浴びながら絶壁の頂上で試行錯誤していた。


「あっ! こんなとこにいた」

「……トルカ」


 無邪気な瞳、きしゃな体の彼女ことトルカ=レクシリア。

 夜に揺れる橙色の髪は美しい。


「時々居なくなると思ったらここにいたのね」

「落ち着くからな。 それに涼しいし」

「ふふ、ほんとね」


 クスッと唇を指で隠し微笑んだ。

 笑わせる話はしてないが何故かトルカの笑顔は和む。

 ふむ、やはり可愛いは正義ってやつか。


「そうそう。 いつなったらサクマの力の正体教えてくれるの?」

「教えてしんぜよう」

「えっ、いいの?」


 眉間にシワを寄せて驚いている。

 動物園のライオンを観察するかのように。


「前は頑なに拒んでたのになんでよ」

「んー……造るのに集中したかったから」

「それだけっ!?」


 もちろんそれだけではない。 トルカを騙す口実だ。

 材料の調達時も、建設時も、就寝の時も、ずっと「教えてよ」と一日中聞いてくるのは神経がすり減った。

 降参して教えることにしたのだ。

 破壊して造り出す能力(ちから)なんて教えたら嫌われないだろうか?

 怯え敵視されたら嫌だな。


「始めに自信の能力を完全把握した訳じゃないから理解してくれ。 全て代表者から訊いたことだ」

「ちょっと待って。 代表者って誰よ?」


 神様的なポジションの彼女を知らないのは当たり前だった。

 僕でさえアンノウンの人物だ。


「よく僕も知らないが代表者って名乗っていたよ。 その代表者が能力を与えた人物で能力説明をした奴なんだ」

「つまり不審者ってことね」

「不審者って発想はなかったな~」


 次回から代表者ではなく不審者と呼ぶことにシフトチェンジすることに。

 代表者に言えばどんな反応するか楽しみである。


「おっと、話が反れた。 ――僕の力の正体は物体を小型ブロックに縮小し、ブロックから想像した物を造れる能力なんだ」

「…っ!……勝てる相手なんていない無敵能力じゃない」

「残念ながら欠点があって。 命ある者はブロックにできない。 相手が発生させた力および、衣服や武器など触れている物もブロックにできない。 以外と不便なんだよ」

「強いような弱いような能力ね」


 トルカのおっしゃる通り微妙な力である。

 強弱の差は使い手に左右する力だろう。


「さてと、能力は説明したし。 材料調達に行ってくる」

「面白そうじゃない! 私も着いてくわ」

「んっ……ぅ~ん……いいけど地道な作業だぞ」


 実際に楽しい要素なんてない。 道端に落ちている石ころや木の棒を集め、枯れ葉に干からびた骨とブロックにして持ち帰るだけの仕事で面白みはない。

 これも人生をやり直す為の仕事だと割りきっている。


「滑り台を想像と」

「わあ。 なにこれ!」


 傾斜四十五度。 谷底の向こう側まで続く滑り台は絶景だ。

 ふと、崩れ落ちるのではないかと恐れることもあるが何度も滑ってると恐怖感も次第に薄れていった。


「先に行ってるぞ」

「待って、待って。 一緒に滑ろうよ」

「おっ………お、い! くっつくな。 離れろ!」

「いいじゃん。 減るもんじゃないし」


 減りはしない。 減りはしないけど、これでも思春期真っ盛りの高校生なんですよ。

 女の子に興味がない訳ではないし、何よりも柔らかい胸とか太もも当たって冷静ではいられない。

 邪心が芽生えそうで理性が持ちそうになくなる。


「レッツラゴー。 ――あははっ! 楽しい」

「スピードが倍増してる……不味い」


 滑り台の特徴で最後は平らな構造になってる為、緩やかに着地しないとお尻にかなりの衝撃が走る。 

 減少することもなく、むしろ速くなるばかり……エロい妄想の代償は高かったようだ。

 瞳を閉じて痛みを受け入れる覚悟をする。


「いっづぅっ……!」

「どどどどうしたの?」

「腹痛だ……心配はしなくていい」


 安心した顔つきで一息吐いた。

 腹痛ではなく強打した尻の痛みだが恥ずかしくて本当のことは言えない。

 痛みに悶えながらも滑り台をブロックにさせて懐にしまう。

 敵に侵入されては困るからだ。

 痛みも和らいできたので立ち上がり、森林地帯に向けて出発する。

 相変わらずウキウキで気分がいいトルカは鼻唄をしスキップしている。

 どうも僕はトルカみたく賑やかにはなれない。


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