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崩壊した異世界――レクシリア  作者: バル33
第一章:小さな村
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その5


 

                ●●●



 大地を喰らうバルネギカを討伐してから早三時間ぐらい。

 村人の皆様に英雄英雄と祭り上げられた挙げ句に村の復興を頼むと、重大な責任を押し付けられることになった。 潤んだ瞳でトルカさんにお願いされたので最高と呟きなんなく了承。

 いずれにせよバルネギカの襲撃にいつ遭うのか不明だ。

 案を模索しようと周囲の意見を聞くことに。


「では、バルネギカからの強襲を防ぐため案を出してください。 なんでも宜しいので」

「ほほほ、ワシから」


 先駆けたのはもう余命が間近であろう緑のローブを被ったおじいさん。

 プルプルと身体を小刻みに震えている。

 大丈夫かな…………。


「村を囲う土を二倍に盛り上げるのですじゃ」

「却下です。 歩いて通れる程度のなら敵にどうぞ入ってくださいと言ってるものです」


 そ、そんなバカな……みたいな驚愕しなくてもいいのに。 おじいさんにとっては最高の案だったらしいが、前回の村と大差がないので廃案です。


「はいはい! 次、僕!」


 所々千切れ白く汚れていて、服を着た陽気な少年が挙手を上げる。

 子供ながら元気だな。 こちらも子供ですが。


「うーんとね。 でっっっかい壁を立ててバルネギカも通れないの組み立てるの!」

「……採用」

「なぜですじゃ!」


 なぜですじゃではない、おじいさんよ。 ただ土を盛り上げた塀の守りは機能しない。

 子供の意見採用によほどショックなのだろうか萎んで、今にも朽ち果てそうである。


「巨壁を作るのでしたら侵入者対策に落とし穴を掘るのはいかがでしょうか?」

「いいですねー。 落とし穴も採用」

「なんですと!」


 いい加減うるさいぞおじいさん。 自分より年下の二十代後半のお姉さんに案負けするのが悔しいのか。

 率直に文句を言いたいが会って半日も経っていない。 ストレートに感情を言葉に出来ない僕がもどかしい。


「他に案はありますか?」


 もうないと全員揃って首を横に振る。 怪力のトルカさんに目をやると困った顔で両手をぶんぶんと振り思い付かないと伝える。

 とりわけベストの案を求めていない。

 参考程度に聞いているだけだ。

 良い案は出ないだろうから御開きすることに。


「二つ良い案を頂きましたので実行に移したいと思います。 と、その前に食事にしませんか? バルネギカ討伐の祝福として」


 村人の皆さんから好評のようだ。 がしかし、食料や水などが見当たらない。 保管する場所もない。 とすれば……今から調達に行くのかな?


「もう奮発しちゃうからね。 ほら!」


 と、心配を跳ねのけ、トルカがローブの懐から出したのは力尽きた(うさぎ)。 生きていくためには動物の命を奪わないと分かってても、酷だと思ってしまう。


 他の村人も懐から食料に水などを取り出す。

 おじいさんは透明なガラス瓶に水。

 お姉さんは体の調子を整える緑の山菜。

 少年は川で釣ってきたであろう光り物の魚三匹。

 これだけの食材があれば豪華に食事できる。 無償で食べるのは申し訳ないが、昼食を取ったらキッチリと仕事しなくては。


「さーて、かぶりつきましょう!」

「待て待て! ……生で食べるつもりなのか?」

「肉とか魚は生で食べるものでしょ?」


 異世界の人間の文化レベルは想像以上に低すぎると再認識する。

 生で食べると腹痛をお越し下痢になったりもする。 

 腹痛だけで済めばまだいいが、生で食べるのにもっと危険なことがある。

 それは寄生虫だ。 魚、肉には時々寄生虫が住んでいる。


 ちゃんと加熱すれば死滅するので問題はない。 だけど、加熱せずに口に含めば体内に寄生虫が入り本人が気付かず巣窟にされるケースが多い。

 ただ、レクシリアの世界で寄生虫が存在するかは不明だ。

 バルネギカとゆう恐ろしい化け物が蔓延るとこだ。


 それに知らずに生で食してた村人さん達は元気だ。 寄生虫は存在しないかもしれない。

 とはいえ、調理もせずに食べるのは身体に良くないし、美味しさを半減させている。

 しゃーないな。 肉、魚、野菜を焼いた美味しさを味あわせてやろう。


「勿体ない。 生で食べるより焼いた方が数倍に美味いぞ」

「は、初耳だわ。 焼くって発想がすごいわサクマ」


 称賛されるほどなのか? まるで原始人並みの知識のなさだ。 いや、レクシリアでは教える者も伝える者もいないのか。

 一人で生きて抜くだけで精一杯で、協力して手を組むことがなかった感じかもな。


「その兎を貸してくれませんか?」

「いいけどなにするのかしら」

「地面に置いてください」


 生気のない赤い瞳の兎の長い耳を掴み、地面に置き譲ってくる。 動物の死に姿はなれないな。

 瞼を閉じて、手を受け皿のようにして、兎の腹部に触れる。

 ブロック化の原則は、生きてる者にブロックには出来ない。 だったら生命活動を停止した者ならブロックに出来る。

 原理は知らないがお前の命を頂くぞ。 感謝の意を込めてブロックにし、兎の姿はなくなった。


「ああああ! 私の肉がぁぁ!」

「間近で叫ぶなよ。 肉なら加工した状態で出るから」


 やれやれだぜと言いたいが、我慢我慢。

 ブロックにしたことで創造が可能になる。 ここでブロックに触り頭に一口サイズの切った肉を浮かべる。

 合計で四人いるので一人前五枚の肉を四セットをトルカさんの手のひらに並べて置きました。

 

 

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