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崩壊した異世界――レクシリア  作者: バル33
第一章:小さな村
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その4


 素敵な笑顔を見れて満足。

 その後、付いていくと到着したのかトルカは立ち止まった。


「ほら、サクマ。 村が見えてきたよ」

「どれどれと…………なんだあれ……」


 村って総称してるぐらいだから建築物があると思いきや――空き家だ。

 屋根も――ない。

 柱も―――ない。

 床も――――ない。

 家自体が―――――ない。

 村とは呼べない人が集まった集落だ。

 塀もなく、円上に土を掘って丸の中には人がいるだけじゃないか。


「どう? 凄いでしょ!」

「凄くもなんともないよ。 あんなの村じゃない」

「ななななんですって………」


 震えた声で激昂再び到来した予感。 流石に村とは呼べないから素で言い放ったまでだ。

 崩壊した異世界は伊達じゃないと再認識させる。


「頑張って皆が捻り出した知恵なのに悲しい」

「そうなんだ。 ……ドンマイ」


 本音は"嘘だろおい"だ。

 異世界の人って、もしのもしかしてだけども、発想力に乏しいのかもしれない。

 たまたま仮村(かりむら)の発想力がないのか……暮らしていけば自ずと分かるかな?

 うーむ、土を掘っただけの村から始まりか。

 空しいけど易しい初心者向けのコースだと思ってスタートしよう。


「あっああ……! 皆が危ない!」


 突然、声を張り上げて疾走しだした。

 "皆が危ない"のフレーズで理由は瞬時に判明した。

 恐らくバルネギカだろう。 姿を確認しなくとも彼女の慌てっぷりで理解する。

 駆け出した彼女を見失うないよう全力で追いかけるが、距離が縮まらない。

 脚力が半端ない。 男の僕が余裕で負ける。


「早すぎだろっ!」


 森林を抜けたことで見失うことはなくなったが、村に目掛けてもくもくと砂煙が押し寄せていた。

 急がないと多くの命が亡くなる。

 ただ、バルネギカを正面から挑んで生き残れるのか?

 挑むのは合理的ではない。 ではないが、なにもせず指をくわえてるのは性に合わない。

 やぶれかぶれだ。 死んだらそん時だ! 


「止まれええええっ! バルネギカ! 私が相手だ!」


 二十歩先にたどり着いたら彼女は高らかに声を発してガチガチに震えていた。

 恐いのだ。 いくら強気を張っていても恐くて堪らないのだ。

 脚がすくんで戦える状態ではない。 

 刻一刻と暴走機関車は命令を背いて止まってくれない。


「うぅ……あぁ………」

「諦めるな!」

「サクマ……」


 息切れしまくってやっとこさ彼女に追いつけた。

 かなりバルネギカの近くに来て全貌が明らかになる。

 砂を丸のみするために発達した大顎、砂を掬うために発達した大牙(たいが)、手足の鋭い爪で滑って進行してくるバルネギカ。

 蛙と鮫が合体した紫色の結晶甲殻の生物と言ったところだ。


 ――おぞましい。 怪物だ。

 地球ではあり得ない生命体を目の前にガチガチと顎が揺れた。

 本能は正直だ。 逃げろ逃げろと警鐘を鳴らしてくる。

 警告を無視し、勇気を振り絞り奥歯にギリッと力が入れた。

 バルネギカがどんな知能、どんな能力を持ち合わせてるか、圧倒的に情報が不足している。


 不足したの知識で失敗せずに成功させることができるのか……一か八か試すしかねえだろ!

 彼女の隣に立った時点で逃げ場などないのだから。


「イメージ……開始」


 地面に触れて、迫る暴走機関車を凝視しながら想像をする。

 落とせるほどの幅と深さを計算を施す。

 後はタイミングを見計らい、直進するのを祈るだけだ。


「今だ!」


 僕と彼女が接触する二秒前に物質のブロック化を発動させる。

 動作不良なく正常だ。 


「――成功した」

「えっ、えっ?」

 

 深さ横幅二階建ての一軒家並みが空洞になり、バルネギカは大穴に接触すると無様に転げ落ちた。

 じたばたと暴れまわるが抜け出せない。

 ブロック化は問題なく済み、砂地をブロックした大きさと変わらず、重量も同じ。

 異なるのは物質を抉りとった量と不思議だ。


「今は何者かは問わないわ。 ……これで奴にありったけの拳で殴れる」

 

 彼女は驚愕しつつも、鋭い目付きの視線はバルネギカに向き、腰を低く下ろす。

 すると、握りこぶしが照明灯のように輝いている。

 未知の力。 彼女もまた僕と同じ異能を得ているようだ。

 見とれていると、倒せる準備が揃った彼女は天高く跳ね、腕に全神経を注いでるのがわかる。

 拳をかかげ、高速の圧縮スマッシュがお見舞い間近に、体勢を整えたバルネギカが大口が開いた。


「やばっ………!」

「そのまま突き進め!」


 怯む彼女に呼び掛ける。 まだ物質の創造はしていない。

 閉じれないよう濃縮した土のつっかえ棒をイメージをし造り出す。

 脳裏に想像した物質はバルネギカの顎が外れる勢いで生成された。

 と、同時に彼女の渾身の一撃が頭部に炸裂する。


『いびゃゃゃぎぃぃぃい!』


 悲鳴の断末の鳴き声が耳をつんぐさむ。

 たったの一撃で体躯はガラスのごとくヒビ割れし、崩壊寸前になるとはなんてパワーだ。


「はあああああっっっ!!」


 決まった。 最後の一拳。

 水晶玉の破裂と同じで跡形もなく塵の欠片に砕け去る。

 怪物が消滅したこともあり、緊張の糸がほどけた。 脱力して足腰に力も入らない。

 手に汗握る伝説の試合をした爽快さがある。


「ありがとう……ありがとうサクマ!」

「腕が痛いって」


 腰が抜けている僕に容赦なく喜びの分かち合いの表現を実行してくる。

 腕が分断されそうのに痛みが走ってますが。

 満面の笑みが最高に可愛いので許す。

 鼻血噴きそうですが。


「サクマには感謝してもしきれないわ」

「気にすんな。 ただ僕は手助けしたまでだよ」


 ミッション1クリアってとこか。

 まだまだ身の毛のよだつバルネギカが異世界にいるって思うだけで気が滅入る。

 生き残れるか将来が心配なってきたぞ。


「あっ――ずっと名前言ってなかったわね」

「おつ」

「むぅ、バカにされた感じがするけど、保留にしてあげる。 トルカ=レクシリア。 それが私の名よ」


 崩壊した異世界――レクシリアと同じ名の人と巡り合わせるなんて……神様の悪戯か?

 それとも最初から出会う運命なのか……神のぞみ知ることである。



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