その11
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――馬車の振動に煽られ一時間。
槍を担いだ銀のコスチュームの門番さんに再び会う。
案内人が通行書を提示し町へと入るとぞろぞろと住人が馬車に群がってきた。
……なんだコイツら。
「デュアルに挑んだ人間はどうなった? 無様に死んだろ」
「愚か者を中央広場に晒し上げましょう」
「……」
答えない案内人。
それもそうだ。
馬車小屋の中には生きてる人間がいるのだから。
しかも無傷で生還している。
町では種族間の関係から人間はゴキブリみたいな扱いにされている。
いや、この異世界全体が人間に対して酷い扱いだ。
例外はいるが大半は人間を見下し奴隷みたいな感覚だろう。
そんな奴らにサプライズをしてあげる。
おかしなポーズを取って反応を伺ってみることにした。
「よお、誰が死んだって? 中央広場に晒し上げるとは何のこと?」
「ば、ばかな!」
「あ、あり得ません!」
生きてること事態があり得ないって感じの反応の返し方だ。
人間だからと侮ってもらうのは困るな。
驚愕めいた顔を拝めただけで住人ABを弄るのは止めておこう。
煮込んでもだしはもう出ないだろうからな。
「あまり人間を見下さないことだ」
真っ赤な手で住人ABに見せつけギルドへと徒歩で向かうことにした。
歩いている最中、どうやら最高難易度のクエストを受けた情報が町中に広まっているようだ。
受けること事態が珍しいらしく賭け事をする輩もいた。
生死の安否で賭け事をするゲス野郎もいたようだ。
「報酬を貰いますか」
町の城門並みに大きい扉の前まで来た。
トルカにリーネはもう帰って来てるかな?
帰って来てない方が都合がよくて助かる。
なぜならお金を自由に使えるからだ。
ここで時間を呆けてると帰ってくるな。
ちゃっちゃと報酬を受け取りますか。
「……モブは襲ってこないと」
ギルドに入ると襲ってきたバカがいたが今回はイベント発生はないらしい。
強者がデュアルの爪を凝視するが受付に直行で向かう。
窓口に紅蓮の鉤爪を献上するとかなり慌ててパニックになっていた。
なにもそこまで驚かなくても……。
「偽物……じゃありませんよね?」
「本物だよ。 信じられないなら案内人に確認するといい」
「……報酬金をお渡しします」
もっと食いつくと思えば拍子抜けだな。
検査機関に通してデュアルの爪か有無の確認するまで想像もしていた。
あっさりと認めたのは模造品が滅多にないからだと思える。
もう一つ有るとすれば既に噂が広まっており耳に入っていたかだ。
何にせよお金はガッポガッポ頂きである。
「金コルト百枚です。 お確かめください」
「ふむ……ふむ。 嘘偽りはないようだな」
ギルド歴が長い冒険者の口癖を真似してみたがどうだろう。
駄目みたいですね。
反応一切なしの無表情。
せめてピクリと肩が上がるぐらいは反応してくれよ。
それはさておき、風呂の場所を知らないので受付嬢に問おう。
「お尋ねするが風呂ってどこにある?」
「……ギルドへ出て右手に細い路地がございますので進んで頂くと噴水エリアに着きます。 噴水エリアの左から三番目のとこに緑の看板が有りますのでそこが風呂屋でごさいます」
「分かりやすく説明してくれてありがとうな」
軽くお辞儀をして困惑する受付嬢の姿を拝んでギルドを後にした。
正面扉から右側に細い路地を発見。
どうやら情報の虚偽はないようだ。
太陽の光が射し込まない路地では不気味に感じる。
背後から襲うには最適の場所とも言えるが何事もなく噴水エリアに到着。
全方向にアーチ状で流れ出る水の滝。
ずっと眺めていたい気分だが先に風呂だ、風呂。 左から三番目と……あった。
緑の看板がデカデカと何語かは分からなくても風呂屋と書いているのは理解した。
ハイエナのごとく風呂屋に駆け足で直行し扉をオープン。
我慢できなくなりつい走ってしまう自分自身に恥ずかしいかぎり。
風呂屋の中はと清掃をされてて綺麗だ。
明るい木材をベースに作られた床、壁、天井と男湯、女湯を示すのれんが垂れ下がっている。
元の世界とほぼ遜色ない外装に感動した。
これだけ上品な風呂屋なら期待できるぞとカウンターの人物に話しかける。
「風呂を貸しきりにしたい。 金コルト一枚で足りるか?」
「余りすぎるぐらい足りています人間のお方。 どうぞどうぞ奥へとお入りください。 二時間は貸しきりにさせてもらいます」
ふふふ、やったぜ。
一度は貸しきりで風呂屋を満喫してみたかったんだ。
例の二人がいない今はやりたい放題できる。
やはり金で大抵のことは何とかなるね、うん。
さーて、汚い汚い身体を洗い流しに行きますか。




