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崩壊した異世界――レクシリア  作者: バル33
第三章:霊谷の森の姫

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その5

 いざ、尋常に調理開始。

 卵をかき混ぜるためのボウルと菜箸を用意する。

 卵をボウルにぶつけて手で割る作業を三回繰り返す。

 洗い終わった計量をスプーンを借りて大さじ三杯の水をボウルに流し込む。

 白身が殆ど残らないようによーくかき混ぜておく。

 出汁となる調味料が有ると好ましかったが、置いてないので素材の味と食感を楽しむ料理になる。

 黄身が八割方になったとこで玉子焼き器の出番が来た。

 ガスコンロの模様をした銀光色の着火物に押しボタンが目に入り、触れば点火地点から熱気が押し寄せる。

 火は出てなく熱だけが送り込まれてるようだ。

 最新機器のガスコンロと似てて使いやすいが加熱調整する操作盤がないので残念だ。

 仕方なく玉子焼き器の温度が上がったとこで三分の二のかき混ぜる卵を注ぐ。

 オムレツを作るみたく角にまとめたら引っくり返す。

 少量入れて薄い膜伸ばしたら包んで回していく。

 紙を敷くような工程を二回ループしたとこで出汁がない玉子焼きの出来上がり。

 艶のある玉子焼きは食欲をそそりつまみ食いしそうである。

 まだ五人分の出汁がない玉子焼きを作らねばならない。

 ――再びガスコンロを着火し暑さと戦うこと約十五分後。

 やっと六人分用意ができた。

 二皿ずつ食卓に運びテーブルに添えていく。

 黄色いオブジェクトから放つ香りに鼻腔を満たしていく彼女等の瞳には星が輝いている。


「ふぁーぁ……いい匂い……」


 卵の芳醇な香りに誘われ食堂に来た寝起きの橙色の髪をしたトルカが登場。

 右肩の私服がはらけて肌が露になっている。

 涙を裾でゴシゴシと拭く光景になんとも肩をかぶり付きたい情欲が沸く。

 変態行為したらあの世行きなので抑えておきます。


「朝食だー……頂きます……」


 用意した箸を使わず素手で玉子焼きを拾い上げ一口含んだトルカに異変が起きる。

 眠気がぶっ飛んだのか未知の体験をするごとく玉子焼きを見詰めていた。


「外はしっかりとした食感に中はジュワっと広がる卵の風味にほどよい固さ。 なんなのこれは!」


 料理コメンテーターぶりの解説に笑いそうだ。

 トルカには食の良さを伝える才能があるかもな。


「それはな、だし巻き玉子(ゴールド・ザ・ワン)て料理名だ」

「なんていい響きなの」


 だし巻き玉子を食しながら答えるトルカに笑いの衝動を堪える。

 料理名にしてはあり得ないネーミングを信じてしまう純粋なとこがツボになりそうだ。


「どれどれ(わたくし)も頂きましょう」

「お兄ちゃんの卵料理、お味拝見します」


 小さな口でパクっとかじり喉をごくりと鳴らし胃へ放り込む。

 時間が停止したかのように動作しなくなったと思えば無言でパクっと食べる。

 夢中で出汁がない玉子焼きを胃の中へ入れる二人の感想が気になる。

 トルカみたく美味しいと言葉にしてくれればいいのだが表情もコメントもない。

 出汁が入ってないから不味かったか?


「「美味!!」」


 息の合った二人の美味コールにはビクッと身体が跳ねてしまった。

 喋らず口に放り込んでいたのは美味しくて勝手に動いていただけってことか。

 しかし、彼女らが声を揃えて絶品と讃える玉子焼を食べてみる。

 ……うん、やっぱり味気ない。

 素直に美味しいとは言えない。

 不味くもなく、美味しいくもなく、素材を味わってるだけだ。


「卵がここまで化けるなんて……サクマさん何者!」

「人間だっての。 あと、だし巻き玉子は完成品じゃないぞ」

「なんですって! まだランクアップするの!」

「これで未完成とは恐ろしいですわ」


 食文化に疎いのか三人とも驚嘆する一方俺は頬をかいていた。

 無味に等しい卵料理に美味しいと連呼する皆の気持ちが分かち合えない。

 普段から食べなれていないからだろうか。

 もっと旨い物を食わせたくなる。

 だけど、のんびりはしてられない。

 食事をしたらギルドに向かわなくては。

 一秒でも早くカルラを助け出してやりたい。

 その為には腹を満たないとな。

 腹が減っては戦は出来ぬってね。


「タナさん。 他の朝食の用意をお願いします」

「はいはーい。 元気が出る物を作っていきますよ」


 創造したエプロンを身に付けて調理台に立ったタナさんは床をいじりだした。

 どうやら食材を取り出しているみたいだ。

 保管戸からはみずみずしいキャベツをまな板に置き、切れ味抜群の包丁で分断していく。

 支障なく使いこなすタナさんの料理姿を眺めながら朝食を待ちわびていた。



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