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崩壊した異世界――レクシリア  作者: バル33
第一章:小さな村
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その1


 暑い。

 肌が焼ける。

 真夏の日光を浴びているような感覚だ。

 自分の身に何が起きているか確認するべく、ゆっくりと(まぶた)を開くと……太陽の光が目に直射した。


「うぐおおお! 目が殺られた!」


 ただ周囲を見ようとしただけで目を封じられるなんて不幸以外何もない。

 痛みが引くまで時間がかかりそうだ。


「ぷ……あはははははは! 最高に面白いね君」

「――この声は?」


 トイレで自害しようとした際に聞こえた女性の声だ。 相当近くにいる。

 目を見開くとまだ視界が淡い光でぼやけて周りがよく見えない。

 直射日光の後遺症が残っている。

 しばらくして時間が流れると、後遺症はなくなっていき周囲の全貌がやっと分かる。

 どうやら砂漠地帯にいるようだ。


 快適だったトイレとは違い、異常に暑いと思えばこれが原因か。

 ここに長居すると干からびてミイラになってしまう。

 よし、視界も良好になってきた頃だ。

 僕を何処(いずこ)の砂漠に連れてきたであろう人物を拝もう。

 透き通る声が聞こえた方角に首を身体を方向転換すると、小学生高学年ぐらい? の、背丈が低い小柄の少女立っていた。


 丸っこい顔立ち。 瞳は大きくルビー色。 髪型はショートで銀髪。

 うむ、素晴らしいロリキャラで可愛らしい。

 質問したいことが山々だけど、まずは挨拶と自己紹介をしなければ。

 一応礼儀として、マナーとして。


「ども、初めまして。 村崎沙久間(むらざきさくま)と申します。 以後、よろしくお願いします」

「あ、そう。 よろしく~」


 耳をほじりながら簡素な言葉のキャッチボールは腹が立つな。

 ここは怒りを抑えて冷静に対応だ。


「何個か質問いいですか?」

「うん、いいよ。 スリーサイズとかでも……ね」


 ウインク飛ばし、お色気ポーズをしてきたよ。

 こんなチビの小学生に欲など抱くかよ――と口が滑りそうになる。

 彼女の質疑はスルーし、訊きたい情報を抜き出したらさっさと砂漠地帯から抜け出そう。 

 猛熱で溶けてスライムになりそうだ。


「まず……ここ、いや、この世界はなに?」

「異世界に飛ばした時に聞こえてなかったか~…………まあ、いいや。 ここは崩壊した異世界――レクシリア。 生態系の崩壊、弱肉強食、人間は滅び行く運命、それがこの世界」

「崩壊した異世界、ね」


 崩壊した異世界とは適した言葉だ。

 それより誇らしげに説明する彼女は何者なのだろうか?

 勘では人間じゃない。 人って感じがしないからとしか説明できない。

 直球で聞けば話が早い。 何者なのか問い詰めてみる。


「君は人間?」

「違うよ。 レクシリアを管理する代表者。 君らの世界では神様って呼ばれるね」


 まさかの神様だったとはかなり失礼なことを口走っていた。

 内心で呟いていて良かったと心の底から思う。


「最後に一つだけ質問です。 レクシリアに連れてきた目的はなんですか?」

「丁度いい質問してくれて助かるよ。 君の質問が終わった後に話そうと考えてたんだ~♪」


 腰辺りに腕を組んで笑顔で首をゆっくりと左右に振っている。

 神様なのに頭をなでなでしたい気持ちが込み上げてくる。

 ちくしょー……反則な可愛さだ。


先刻(せんこく)、崩壊した内容を話したけど――君にレクシリアを復活してもらう。 それが連れてきた理由だよ」

「物理的にも論理的にも不可能そうで、砂漠地帯でくたばりそうになってる僕にですか?」


 真面目に考えずとも、ただの人間が復活など不可能だ。

 特段に身体能力が高い訳でもなく、頭のキレが良い訳でもない。

 なのにクスクスと面白がるよう笑う神様。

 こちらでは可笑い点が検討もつかない。


「ふふ。 なんの取り柄がない者に復活は頼まないよ。 君には、復活に欠かせない素晴らしい()()()()()()()()()()()()()()()


 なぬ、能力だって?

 妄想と二次元だけに存在する力を使える日が来るなんて……心が踊る。

 異世界を復活させろと命令しているので強力な能力(ちから)を期待できる。 


「じゃあ、早速能力を使ってみようか。 今から言う通りに実行してね」

了解(ラジャー)

「まずは地面に手を当てて、正方形のブロックを想像してみて」


 日光に熱された砂に触れて四角い物体を想像してみる。

 ――すると、不思議なことに触れた範囲虫かご程度に砂を四角にくり貫かれ消え去り、手のひらにはミニサイズの正方形のブロックだけが残った。

 ほとんど重さを感じない。


「成功したね。 次にブロックを持ったまま造りたい物を頭に浮かべてね。 創造はご自由にどうぞ」

「う~ん………………レクシリアの代表者さんで……」

「ほえ?」


 不意をつかれたのか甲高い声を出したレクシリアの代表者。

 神様の造形美をこと細かく思い浮かべ、ブロックが変型し、形とった先はフィギュアサイズの手に乗る偉そうなに威張る彼女が出来上がった。

 腹が立ったので落としてあげると首がもげて悲惨な姿になる。


「酷いよ君は! なんの恨みがあるのかな!」

「いえいえ滅相もございません。 手が滑っただけでごさいます」

「……ならいいけどさ」


 頬を膨らます行為はなんだか胸にグッときました。

 ちょこちょこ可愛い仕草をするので困る。


「――私、仕事があるから離れるけど、その能力欠点話しとくね。 一つ、ブロック状態ではないと想像した物を造れない。 二つ、生きている物をブロックに出来ない。 三つ、相手が触れてる物、相手が発生させた力をブロックに出来ない。 ……これだけは絶対に忘れないでね」

「分かりました。 覚えておきます」


 どんな能力でも穴があるとはまさにこの事だ。

 とは言っても強力なのには覆らない。

 問題は上手く活用できるかである。


「あと、最後にある程度レクシリアを復活してくれたら…………家族に捨てられた事実を無くして、平穏な日常にして、元の世界に戻してあげるよ」

「本当ですか!?」

「もちのろん。 レクシリア代表者に誓って」


 やる気が最高に昂ってきた。

 改変したい現実を無くせるなら、泥にまみれようともやり遂げてやる!


「ではでは頑張ってね。 私の"代行者"さん」


 手を振って笑顔の神様。

 瞼を閉じて、開けた時にはもういなかった。

 ふぅと、ため息を漏らしこれからの行き先も決まっていない。

 適当に――。


「南南東を目指そう」


 僕が一番好きな方角に進んで行くのであった。


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