その1
涼しげな風が吹く四月一日。
小学生、中学生、高校生、になる新入生が入学式に出向く今日。
本日から高校生である村崎沙久間はステップランランランと楽しみに学園デビューをするはずだった。
――十五分前までは。
「オラア、村崎! 便所から出てこいや!」
トイレのドアが壊す勢いで叩き大声で叫ぶ恐い男の集団。
最初はチンピラかと思えたがどうもヤクザらしい……てか本物の堅気だ。
いきなり人の家に土足で乗り込んで来たのだから恐くて逃げ込んだ先が、トイレでこの様だ。
鍵を開ければ絶対に殺されるだろう。
「借りた五千万をさっさと返さんかい!」
「なんのことだよ!」
「ふざけてんじゃねえぞこら、村崎の息子! 五千万払う金がねえってからてめえの臓器で借金をチャラにするだろうがよ!」
嘘だろ……親に売られたのか僕は……。
朝から珍しくいないと思えば逃げたからか。
……そーいえば毎朝家族四人で食事をするのに今日に限っていなかった。
――つまり僕は家族に捨てられたのだ。
こんな短い人生だなんて誰が想像したよ?
もう僕を守る壁はヒビが入りいつ崩壊してもおかしくない。
どうせ殺されるならヤクザにではなく、自分の手で死にたい。
トイレットペーパーを鼻と口に詰めて空気の通り道を断って死のう。
『ねえ、命なら頂戴?』
「え……!?」
不意にどこからか可愛らしい女性の声が聞こえた。
幻聴……か?
『命でしょ? 頂戴よ』
「……死神が迎えに来たのか」
『あはは。 死神じゃないよ。 ただ貴方の命が必要なだけ』
姿こそ見えないが、死神だろうが悪魔だろうが役に立つならくれてやるよ。
ヤクザに殺されるより百倍いい。
「好きにしてくれ」
『やったー! 君の命は貰ったから死に方を選んでもいいね?』
「ああ……?」
心臓を抜き取るとか。 首を落とすとかではなく、死に方を選ぶと言うとは変な奴だ。
『異世界で果ててもらうね。 では行ってらっしゃい』
「おぅ!」
お尻がハマった……いや、便器の穴に吸込まれている。
え、いやだ! 汚い!
「まっ――――――」
『崩壊した異世界――レクシリアにようこそ』
有無を待たず便器の穴に呑み込まれ異世界へと飛ばされた。
未知なる異世界へと。
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