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第三話

お久しぶりです!

短いですがとりあえず・・・

※編集完了です。鳩島君の裏側が見えます!

あの集団リンチに遭遇してから約1カ月。

気絶していた少年―――鳩島千鳥はとしまちどり君の退院の日。

あの後病院に運ばれた鳩島君は、全治一か月と診断された。幸い命に別状はなかったのだが、包帯やガーゼに包まれたその姿はとても痛ましく思えた。

それから私は毎日とはいかなくても、出来る限りお見舞いに行くようにした。

入院して十五日くらいたった頃には鳩島君の容体も入院当初のころとは比べ物にならないほどよくなっていた。聞くところによると彼は生まれつき傷の治りが少し人より早いらしい。それで高をくくっていろんなところに喧嘩を売っていたところ、集団で囲まれて襲われたらしい。「喧嘩を売りに行く」なんていう高校生男子は、漫画の中だけだと思っていた。

「今は反省してますけどね」と笑う鳩島君は根はそんなに悪い子ではないのだと思う。きっと今度からは危ない真似はしないだろう。・・・というかそうしてくれないと困る。

まあ何はともあれ、全て万事解決したかに思われた・・・が。

私の中に、一つだけ気にかかることがある。

久那城君のことだ。

あれ以来、久那城君とめっきり会わなくなってしまったのだ。

以前は見かけるとあちらの方から「椋先生―!!」と駆け寄ってきてくれたのに、今では全然だ。たまに見かけて声をかけても、こちらをちらりと見ただけでどこかに行ってしまう。あちらが意図的に避けているのかどうかは分からないが、何となくさびしい。

やはり自分の舎弟(?)がリンチをしていたというのがショックだったのだろうか。

・・・今度会ったときはジュースでもおごってあげようかな。


「何でそんなことを言うの!?澤凪様とか唐沢様とかっ・・・同じ高校生じゃない!あなたたちがそんな風にして壁を作ってるから、麗羅も明人も嘘を張り付けなくちゃ生きていけなくなっちゃったんじゃない!!あなた達は最低な人間よ!最低最低最低!!!」

久那城君のことは気になるものの、通常通りに先生ライフを送っていた私。

次の授業の教材を抱えながらとある空き教室を通りかかった時、そんな声が聞こえてきた。

やけに耳に残る、甘ったるい声。例えるなら、砂糖を大匙5杯入れたクリームソーダのような・・・甘すぎて逆に気持ち悪いような感じの声。

それも気になるが発言が穏やかではない。何事かとドアの隙間から中をのぞいてみる。

そこには3人の派手目の化粧を施した女子生徒達と・・・明らかに自然界に存在しないであろうビビットピンク色の髪と瞳を持つ、このゲームのヒロインの姿。

・・・そういえば、もう六月だったね。

どうやら少女マンガとかゲームによくある『呼び出し』の真っ最中のようだ。・・・でもおかしいな、この峰來学園にはイケメンたちの(私に言わせれば攻略キャラ達の)ファンの子はいてもこういう過激なことをやることはいなかったと思ったけど。それに、さっきの言葉は・・・。

「あ、貴女何を言ってるの?私たちは、ただあまり澤凪様たちに無遠慮に近づかない方がいいわよって言ってあげただけじゃない・・・。」

3人組の少女の一人がそう言う。他の二人もその少女に同調するように大きく頷く。

「うるさいわね!とにかく、私が誰と友達になろうと自由でしょ!?ほうっておいて!」

一方的にそう言い切り、このゲームのヒロインである花咲春香ちゃんは教室を出て行こうとドアの方へ足を向け・・・って、やばい!

何とか今通りかかりましたというように取り繕う。一瞬ばれるかとも思ったけれど、彼女はこちらを見もしなかったので大丈夫だと思う。

「ふう・・・。」

安堵のため息を吐き、まだ部屋の中にいるであろう3人組の少女たちに声をかける。

「大丈夫?なんかすごい勢いでだれか出て行ったけど・・・。」

「む、ムック先生・・・?」

・・・言っておくと、『ムック先生』というのは私のあだ名だ。私の担当している一年生の女子の何人かがそう言っているのを聞いたことがある。と、いうことはこの子たちは一年生か。

・・・いっておくが、私が呼べって言ったわけではない。断じて、ない。

「は、花咲さんが・・・澤凪会長達が嫌がってるのに付きまとったりしていたから、ちょっと注意しただけなのに・・・。」

恐らくだが、3人組の彼女たちが言うことを花咲ちゃんは「自分たちが好きな人に仲のいい人が出来るのが嫌だからこちらに牽制をかけてきた」というふうに受け取ったのではないだろうか。そして同じ高校生なのに差別化して交友関係を縛るのは間違っていると結論付け、その結果が先ほどの言葉になった・・・と。

もしその通りだとしたら、なんというか・・・猪突猛進というか、短絡思考というか・・・。

交友関係を広げようとするのはいいことだと思うし、私も人に勝手なイメージを押し付けて縛るのは嫌いだ。

けれど、本人が嫌がっているのに迫ったり、一つの情報だけで決めつけるのは違うだろう。

「どうするかな―――。」

まだ花咲ちゃんという人間を判断するには早いけれど、今日のことは確実に私の中で不安へと姿を変え、心の底に澱のように沈んでいった。


同時刻、校舎裏の倉庫。

そこには一か月前と同じような光景が広がっていた。

倉庫の壁を背に立つ鳩島千鳥と、その周りを取り囲む不良達。

いや、一か月前と明確に違う点が二か所ある。

一つは不良たちは一人残らずどこかにガーゼや絆創膏、包帯などをしているということ。

一つは―――同じく一人残らずガーゼや絆創膏など意味をなさないほどに殴打されており、地面に伏していること。

そして、その中心で一人、千鳥が―――笑顔で、不良達を見下ろしているということだ。

「ねえ、センパイたち。どうですか?地面に這いつくばるって感覚は。」

最高に惨めな気持ちになるでしょう?そう言った千鳥の表情は、普段の『鳩島千鳥』を知る者にはとても想像できないような、残忍な顔。

他人を踏みにじることなど何とも思わない―――それはまさしく、外道。

人の道を外れた、鬼。

「テ、テメェ・・・なんで、こんな・・・。」

気を失っていなかったリーダー格の不良が、傷の痛む体を震わせながら声を絞り出す。

彼の中には、一か月前の記憶がよみがえっていた。

いきなり突っかかってきた、柔道部のエースの一年。ちょうど気にかけていた女子が彼のファンであったことが発覚し苛立っていたリーダー格の不良は、浅慮にもリンチを決行した。

彼は自分から突っかかってきたにもかかわらず、されるがままにしていた。自分の体にいくら鉄パイプや拳や蹴りが入ろうとも、一度自分から壁にぶつかったくらいで反撃もしなかった。

通常の精神状態であればそれを訝しんだのかも知れないが、サンドバック状態の少年を相手にして熱に浮かされた頭ではそんな考えを持つことさえできなかった。

だから、この状況はリーダー格の不良にとってありえない事態だった。

久那城にぼこぼこにされた腹いせに呼び出した千鳥に、自分たちが返り討ちに遭うなんて。

「この間はお世話になりましたね、センパイ。」

「がっ!?」

笑いながらリーダー格の不良を、高そうな革靴で踏みつける千鳥。そしてそのまま、ぐりぐりと踏みにじる。

「あの時はまだ部長を説き伏せてませんでしたからねー。万一にも退部させられたりしたら、この後が動きづらいんです。」

自分の足元から漏れ出る悲鳴を聞きながら、千鳥はつらつらと独り言を呟く。それはどこか、一か月前の久那城の様子にも似ていて。

「まあ、今はもうそんな心配をする必要はなくなったわけですけど。あの人たちと組んで共有するのは、ホントは血反吐を吐くくらい嫌だけど・・・僕の親は普通の人たちだし・・・一人で監禁するのは大人にならないと無理そうだしなぁ・・・。」

ぶつぶつとつぶやきながらぐりぐりと顔に靴底をさらにこすり付ける。が、もう悲鳴は聞こえなくなっていた。

それに満足したのか千鳥は足を不良の顔から上げ、何事もなかったかのように校舎の方へと歩き始めた。

その道中、ふと千鳥の携帯電話に着信が入る。画面の相手表示を見た途端、千鳥は顔を歪めた。3コールぐらいの間をおいて、諦めたようにため息を吐く。

「はい・・・俺ですけど・・・え?何をしていたのかって、暇つぶしにこの間の奴らと遊んでただけですけど・・・うるさいです笑うことないでしょう・・・ああもう、要件は何ですか、部長!」

千鳥は珍しく声を荒げながら、通話を続ける。これを怒り任せに切ってしまえば、後々面倒なことになると知っているからだ。

彼の知る『部長』とは、そういう人間なのだ。

「この間、どうしてアイツらに喧嘩を売ったのか・・・?なんです、そんなことですか・・・もちろん、決まっているでしょう。」

ニヤリと笑う。

「椋先生の心に残るには、これくらいのインパクトがないと!」

そのためならば、死ぬかもしれないとしてもためらいなく実行に移すことができる。

彼はこの学園の中で一番自分の命をないがしろにしていると言ってもいい。

彼にとっては意志も体も、椋を手に入れるという目的のために使う道具でしかない。

偶然廊下ですれ違った、それだけの関係だった。

それだけの、はずだった。

まさか一目ぼれしたなんて言う使い古された常套句で、命まで捧げてしまう男が存在すると誰が思おうか。

「椋先生---椋、だぁいすき。」

ゆがんだ初恋は、彼も、彼を取り囲む周りの人々も、さらには彼の愛する人でさえも巻き込みながら黒く黒く煮詰まっていく。

間違ってる点があればご指摘お願いします。

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