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第一話

短編が連載化しました。

気軽に読んでください。

※編集完了しました。序盤の部分がおかしかったのでちゃんとしました。

春。ある人は新社会人としてのこれからの暮らしに期待と不安を覚え、またある人は真新しい制服に身を包み履き慣れない靴で新たな学校への道を歩む。多くの人が新しい生活をスタートさせる季節。

私、倉橋椋も、これから数学教師として勤務する職場への期待に胸を躍らせていた。

私は少し普通ではない。いや中二病なわけではなくて。

酔っ払いの運転するトラックに撥ねられ、死亡して転生したというとんでもない感じの経験を持っているのだ。

とはいえ、前世の事を覚えているという事以外特に秀でたところもない凡人だけど。

転生した私の家は母子家庭で、母さんはとても苦労しながら私を育ててくれた。認めたくはないのだけれど、本当にその事実を炭にしてしまいたいほど嫌なことなのだけど、私の父親にあたる人が最低なやつで、母さんが私を妊娠するや否や蒸発した。

そこに至るまでにいろいろあるのだけれど、まあそれは別の機会に話すことにしよう。

とにかく、それを母さんから聞いた時、私は決心した。

母さんをきっと幸せにしようと。

そのための手段として金を稼ぐために仕事をしようと考え、どうせなら前世からの夢だった教師になろうと私は自分でいうのもなんだけれど本当に努力した。

実力より少し上ぐらいの大学を受け、合コンとかといった遊びにかまけることもなく見事教員免許を取り、実習生として多くの学校を回り・・・。

そんな血のにじむような(実際そんなことはないのだけれど)努力の日々を終え、ようやくこの日、私の教師生活が始まるのだ!

心なしか、周りの風景もいつもと違って見える(来た事の無い道なのだから当たり前だけど)。なんか普通のコンビニでさえ輝いて見える。

今向かっている峰來学園ほうらいがくえんというのはとても競争率が高く、生徒になるのはもちろん教員になるのも厳しい試験を高い成績でクリアしなければならなかった。

それだけではなく、学園の理事長を含めた6人の面接官による面接を通らなければ教員になることは出来ないのだ。

正直言って私が受かったのはまぐれに近い。

試験は6分の1くらいヤマ勘が入っていたし、面接の時だってやたらにこやかにこっちを見てくる理事長さんが気になって何言ったか覚えてないし!

・・・大丈夫かな、私。

地図を頼りに駅から歩き続けておよそ20分。

ようやくたどり着いた先には、お城かと思うくらい立派すぎる建物がそびえたっていた。

本当に学校なのだろうか。大理石でできた校門の横の所に『峰來学園』と彫られていなければ、石油王の家にしか見えない。

しかし、何故だろう。

私はこの建物をどこかで見たような気がするのだ。

それも最近ではなく、ずっと前に。

10分くらい考えただろうか。校門の前で何をしているんだとかそういうツッコミは今はしないでほしい。自分でもわかっているから。

まあそんな10分間ぐらいの時間を終え、私は答えに辿り着いた。・・・辿り着いてしまった。


前世の私が死ぬ数日前の事。

時刻は夜中の1時を回っていて、あくびをしながらそろそろ寝るかと布団に入った時。同じ部屋にいた2つ下の妹が突然奇声を上げたのだ。

何事かと妹の方を見れば、そこにはパソコンの画面を見ながらもだえる妹の姿があった。

一瞬でも心配した自分が馬鹿馬鹿しくなった。

「・・・なにしてるのかおる

「あ、ねーちゃん。今これやっててさー。マジやばい。」

そう言いながら差し出された箱を見ると・・・なんと言うかすごかった。

お城のような建物を背景に、整った顔立ちをした10人くらいの男の人が描かれている。

丸っぽい字体で『心物語』と書かれたこれは、所謂乙女ゲームという物らしかった。

「このゲーム一見ほのぼの系に見えるのに中身全然ほのぼのじゃないんだよねー。キャラほとんどヤンデレで、うまくしないとバッドエンド一直線!その被害者にライバルキャラの倉橋椋ってのがいて、そいつがすごいの。数学教師のくせに生徒に迫ったりしてさ、挙句ヒロインの花咲春香はなさきはるかにバリバリ嫉妬して、いろいろと妨害してくるんだよねー。ま、最終的にバッドエンドだろうがそうじゃなかろうが攻略キャラ達にぼっこぼこにされて死ぬんだけど。その時のキャラの言葉がさぁ!もうさいっこう!」


・・・・・・・。

それ私じゃん!!

というかこの世界ってあのゲームの世界なの!?

ARIENAI!!!

この建物をどこで見たかを思い出したら、とんでもないものまで思い出しちゃったよ!!?

理事長の美形っぷりで思い出そうよ!「うわー、若い理事長さんだな」じゃないよ!

・・・逃げたい。

まさか、自分から死亡フラグを立てに行ってたとは思わなかった。

あの記憶が確かだとすれば、私はこの学園にいる限りどう頑張っても死ぬわけで。

考えれば考えるほど、ここから背を向けたくなった。

けれど。

母さんのことが私を踏みとどまらせた。

そうだ、私はこの学園で働いて金を稼いで、母さんを幸せにするんだ!

負けへん、頭の狂ったヤンデレなんぞには負けへんで!!

それに逆に考えよう。まだ私が確実に殺されると決まったわけじゃない。妨害とかそういうのをしなければ、きっと殺されることはなくなるはず!

新たに「ヒロインとかにちょっかいを出さない」と決心し、ようやく、本当にようやく学園へと足を踏み入れた。


―――のだが。

「ひろすぎるでしょぉおおお!」

声に驚いた鳥がばさばさと飛び立つ。

学園に入ってから15分。

私は未だに理事長室を見つけられないでいた。

先に言っておくが、私は別に方向音痴なわけじゃない。

この学園が広すぎるだけだ。

今自分がどこにいるのかもわからない。授業中なのか人の気配すらない。

その上歩いても歩いても理事長室が見つかる気配がない。

そうか、これを遭難というのか・・・!!

都会の学校の中なのに、あと少しで雪山の幻覚が見えるというところで、救世主が現れた。

「あの・・・大丈夫ですか?」

声をかけてくれた救世主の少年は唐沢明人からさわあきと君といった。

彼は担任の先生から用事を頼まれた帰りだったらしい。教室に戻る途中、歩きすぎてよろよろになった私を見つけたそうだ。

事情を話すと、理事長室への案内を頼まれてくれた。なんていい人なんだ!私この子より年上なのに人間的に負けてる気がする・・・。

理事長室は私が進んでいた方向と真逆の方向にあった。私、どんどん遠ざかって行ってたんだ・・・。

「ありがとう、唐沢君。おかげで助かったよ・・・。でもよかったの?早く教室に戻らなきゃいけなかったんじゃ・・・。」

「いいんですよ。今僕のクラス自習なんです。それに、倉橋先生は道を教えただけじゃまた迷いそうだったし。」

くすりと笑う唐沢君。イケメンだなぁ。あれ、どっかでこの笑顔見たなぁ。というかすごーく嫌な予感がするなぁ。

そんなことを考えていたら、理事長室についた。正直助かった。

「それじゃあね、唐沢君。」

「はい。また会いましょう・・・椋センセ」

うわあああああ何で名前呼びぃいい!!?

最初の笑顔とは180度違う笑みを残し、唐沢君は去っていきました。

最近の高校生って怖い。

気を取り直し、ドアをノックする。

「どうぞ。」

うう、声が若いのに威厳に満ち溢れてるよ・・・。すごいよ同年代の人でもこんな人2人といないよ。

「失礼します。」

見ただけで高級なものとわかるドアを慎重に開けば、そこには面接の時以来に見る理事長さんの姿があった。

「どうぞ、座ってください。」

「し、失礼します・・・。」

これまた高級そうなソファーに座らせてもらい、理事長先生に向き直る。

面接の時はそこまでしっかりと見ることはなかったが、改めて見れば見るほど整った顔立ちの人だ。

後ろになでつけられた黒髪、鋭く光る鳶色の目。高級そうなスーツをびしっと着こなす、いかにもやり手の男性といったところだろうか。

奮発して買った高いスーツに着られているような私とは大違いだ。

というか、こんな人が現実に存在したのか・・・そういやここ現実じゃなかった。

「遅くなってすいません、少し迷ってしまって・・・。」

「いえ、いいですよ。初めて来た人は迷ってしまう方が多いんです。」

頑張って覚えてくださいね?とほほ笑む理事長さん。大人の魅力ってやつですか。なんかきらきら光ってますよ。

それから何をしゃべったかはいまいち覚えてないけど、気が付いたら家に帰っていた。これって理事長さんスマイル(今命名)の効果か?

明日の自己紹介をどうするかを悩みながら、布団にもぐりこんだ。

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