ため息
「はぁ・・・・」
ため息が一つ、唇から零れ落ちた。
もう何回ついたか分からない。毎日毎日、気がつけばいつの間にかついてしまう。
机の上のノートに視線を落とす。しかし内容は頭に入らない。意味もなく自室を眺めてみる。なんとなく気だるい感じ。
「ため息をつくと幸せが逃げる」そんな言葉が脳裏をかすめる。
幸せが逃げると言われても・・・・ため息なんて無意識的なもの、つかないようにするのは難しい。つかないように常に意識すると疲れるし、疲れるとまた、ため息が・・・・。なんて嫌なループ。
「はぁ・・・・」
ほら、また一つ。口から滑り落ちていく。
別に、悩み事があるわけじゃない。特に成績が悪かったり、友達と仲が悪くなったわけでもない。
それでも、何故かついてしまう。
ふと、机の上の時計に目を見やる。黒い文字盤の上の銀色の針が動いている。チクタクチクタク。針が刻む音はリズミカル。秒針が一周して、やっと視線を外す。
「はぁ・・・・」
うっかりついてしまってから、慌てて口を塞ぐ。
いくらなんでも、これはつき過ぎだろう。
まるで、呼吸するのと同じくらい当たり前にため息をついている。
そんなの哀し過ぎるではないか。
気分転換するために、少し散歩に行くことにする。
外に出てみたけれど、特に行きたい所もない。
夜も更けているのであまり遠くにはいけない。とりあえず近所の公園にでも行ってみることにする。
昼間はかなり暑かったが、日が暮れると急に冷え込んでくる。冷気が肌に心地良い。
公園は家からかなり近いのですぐ着いた。当たり前だがこんな時間には誰もいない。
だいぶ錆び付いているブランコに腰掛けて、空を見上げる。
晴れてはいるが星はあまり見えない。ぼんやりとしていて輪郭がはっきりしない月と、町の夜空でも見えるような明るい一等星がいくつか見えた。
昔見た田舎の空を思い浮かべる。
その時は夏で、天の川がはっきりと見えていてとても印象的だった。
もう随分とあの空を見ていない。
「あっ」
突如、空を駆け抜けた流れ星。
いきなりだったから、願い事なんてできなかった。
田舎でも見れなかった流れ星。一瞬だったけれど、夜空に白い線がすっと光って、とても素敵だった。
願い事はできなかったけど、かなり、嬉しい気持ちになった。
家に戻り、自室の椅子に腰掛ける。
「はぁ」
またしても出てきたため息。でも、さっきまでのため息とはだいぶ違うものになったような気がした。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
こんなへたっぴな文章ですが、ぜひ感想、評価なども教えてください!
霜月