冬
ボクの始まりはあの日 あの夜
バスケ部で4泊5日の遠征に行った時
とても長かった
でも 軽くて 薄くて
軽薄だった
夜の闇に吸い込まれていく 桜の花のようだった
ボクらのチームは遠征先の試合で 負けた
でも とてもいい試合だったと思う
ボクらに試合はもうないけど
他のチームの試合観戦をした
どのチームもすごく上手だったことは覚えている
まぁそんなこと思い出しても 仕方ない
ボクの心に刻みこまれたものは
そんなものじゃない
もっと暗くて 寒くて 終わりの見えない
漆黒の闇のような そんなものだった
遠征最後の夜
あの先生の一言がなかったら
ボクも今とは違ったかもしれない
いや それはただの言い訳で
やっぱりボクが いけない子で
いなければ 存在しなきゃよかった
誰からも必要とされない人形【カラクリ】
「今日で遠征最後だから
ホテルの隣の建物までだったら行ってもいいぞ 」
この一言で ボクは… ボクは…
ボクも最初はすごくうれしかった
だって自由に遊んでいいんだから
「ねぇ 〇〇一緒に行こう!」
だから 楽し……
『…………』
あれっ? 聞こえなかったのかな?
「ねぇ ○○… ねぇったらぁ!!」
ボクの声が聞こえないの? なんで?
あっ ちょっと待ってよ!!
「ねぇ ○○っ…… 」
思わず腕を掴んでしまった
『気安く触んないでくれない?』
「えっ……?」
ボクを突き放して 立ち去った背中を見つめて
ボクはそのまま立ち尽くしてしまった
その後ボクは どうやって部屋に帰ったのか
まったく 覚えてない
ただ ボクが独りだという事実だけが
ボクの中に 遺された
気づいてしまった
ボクはやっぱり孤独だった
ずっと そう思わないように 心の奥底の深い
深い ふかい とこに しまってたのに
無駄だったみたいだ
いやぁでも 分かってたことだし
まぁ大丈夫だよね? いや大丈夫だ!
「大丈夫 大丈夫 だい…じょ…ぶ……うぅ うわあぁ… うっ …ひっぐっ」
「なんで? なんで なんで なんでぇぇっ…」
ボクがなにかした? ボクの何処がいけないの?
嫌なことしたなら謝るから 悪い所は直すから
だから だから…
お願いだから 置いていかないで
…ボクを独りにしないでよ
ボクはいつも……
独り
タスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテ
誰か ボクを…たすけて