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ロニーの描いた「絵」

作者: 浅川太郎

すべてのロックファンの皆様に‥‥

神戸の立呑屋で偶然隣り合わせになった女が、バーに勤めてる、と言った。音楽が好きなんだと伝えたら、マスターもそうよ、いちど遊びにいらっしゃいよ、と。

ある夜、そのバーに出向いた。

高梨というマスターが歓迎してくれた。確かに、壁の高いところにあるスピーカはB&Wであった。

ふと、今はいってきた扉を見ると、淡い色彩の絵が飾られていた。中央が歌うミック・ジャガーで、両脇がそれぞれギターを持ったキースとロニーであることは、すぐに見てとれた。

「それ、ロニーの直筆なんですよ」と、高梨。

何故か気にかかり、しばらく見ていると、

‥‥その絵には、不思議な話があるんですよ‥‥

以下、高梨に聞いた話である。


十年以上になりますか、東京でストーンズ関連グッズフェア(コンサートに付随したものかどうかは不明)が開催され、ん十万で買ったんですよ。まだバブル期でしたし。

すると、まだ少年といってもいいくらいの若い男が近づいてきて、

「いま僕、100万円あります。でも帰りの電車賃ありますから、98万でその絵、譲ってくれませんか」

売れば、即座に儲けになる計算だったが、なかなかそれも気が引けて断った。

すると、その若い男は少し考えて、

‥‥あなた、このミックが何を歌ってるのか、判りますか?‥‥

意味がわからず黙っていると、「残念ですけど、あなたにはこの絵を持つ資格はありません」と捨て台詞を残して去っていった。変な少年だなぁと思ったが、すぐに忘れてしまった。

その後、いろんな職を転々とし、バブルもはじけたが、縁あって2、3年前にこのバーを開店し、扉には「絵」を飾った。

その夜、ロックファンを自認する客と、その絵のことが話題になり、さきのエピソードを思い出し、客に伝えた。

すると客は、「変な少年ではなかったのかも」と、言う。

‥‥ストーンズは、曲ごとにギターを換えるし、キースとロニーのギターを見れば候補となる曲は限定されるし、押さえたコードにより曲の特定はできるのではないか‥‥

高梨の視線が遠くなっていくのが解るような気がしてきた。


数少ない僕の短編の読者は、実話か?と訊く。僕は、ほぼ実話だと答える。そのバーに行き、その絵を見てみたいという読者もいた。

その少年は、東京の会場で、ただちに曲名が解ったんでしょうか、と聞かれたこともあった。

たぶん、右脳で「絵」のすべてを把握したんじゃないでしょうかと答えている。

今後、ビートルズが登場する小説も発表していく予定です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] とても面白いアイデアだと思います。先がどうなるんだろう?と文字を追わせる魅力あふれたアイデアです。 [気になる点] いろいろ書いていくともっと書き慣れると思います。会話の楽しさやストーリー…
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