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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

障子の向こう

作者: Sprout

最近同じ怖い夢を何度も見るので、それをChatGPTに入力したら自己分析できるんじゃないかと思い、試しに入力してみたら小説にするの進められました。せっかくなので好奇心で小説にしてもらいました。

プロローグ

声が聞こえたのは、あの部屋の障子の向こうからだった。


「開けてくれ」


かすれた、けれど明確にこちらを呼ぶ声。知っている声だ。たぶん、あのとき中に入った、あいつの声。

けれど声には、もはや生の響きがなかった。言葉のかたちだけをなぞったような、くぐもった、濁ったもの。


俺は障子の前に立ったまま、身動きができなかった。向こうは見えない。ただ、うっすらと影がある。人影のような何かが、ずっとそこに張りついている。障子は閉じているのに、息遣いがする。気配がある。いや、「ある」のではなく、「こちらに向かって、ずっと、そこにいる」。


背後には数人の若者たちがいた。みんな沈黙している。誰もがこの部屋の空気に呑まれ、言葉を失っていた。

その中の一人、長い黒髪の少女が一歩前に出た。彼女は「分身」の能力を持っていた。

そう、現実ではありえないことだが、俺たちにとってはそれが日常だった。

彼女のもう一つの身体が、音もなく彼女の背後から現れる。まるで鏡から這い出してきたように、同じ顔、同じ体温、同じ目をしたもう一人の彼女が障子の前に立った。


「行かせて」と彼女が言った。

「私が行って確かめる。中に、まだ残ってる人がいる」


「だめだ」俺は言った。自然に言葉が出た。

「分身がやられたら、お前も死ぬ。それはもう、わかってるだろ」


「……でも、もう手がない」

彼女はそうつぶやいたが、その目に覚悟の光が宿る前に、俺は動いた。


障子の隙間へと、俺は「念動力」を使った。手を使うのが怖かった。

あの障子に触れた瞬間、何かが俺の中に流れ込んでくる気がしていた。

だから俺は、決して直接は触れずに、浮かせた接着剤を障子の端へと滑らせる。

ひとつずつ、隙間を埋めていく。ひとつずつ、「向こう」とのつながりを閉じていく。


声が、怒鳴り声に変わる。


「開けろ!」「いるんだ、こっちに、まだ!」


けれど俺はもう、聞かないことにした。

最後の隙間に接着剤が流れ込み、ぴたりと音が止まった。


気配はまだ、そこにある。けれどもう、見えない。聞こえない。感じない。


弟の名を呼ぶ声が、最後に微かに届いた気がした。けれど、それすら幻だったのかもしれない。


俺は障子の前で、息を吐いた。

全身が汗で濡れていた。けれど、手は一度も震えていなかった。


…ただ、俺の中の何かが囁いていた。


これはもう、何度目だった?


この部屋に集められたのは、初めてだったか?

俺は、誰かを……前にも、見殺しにしてはいないか?


そして、思い出す。


あのときも、やはり一人——先に“向こう側”へ行ってしまった奴がいた。


第一章|分身の少女と最初の犠牲

この部屋には、名前がなかった。


薄暗い和室。床の間もなければ家具もない。あるのは、一面の障子だけ。しかもそれは、部屋の中央に建てられた、まるで「壁」のような構造だった。障子の向こう側は、外ではない。建物の中だ。

だが、あそこは「こちら側」ではない。


ここに来る理由は、誰も説明できなかった。ただ、俺たちはここに集められた。いや、もしかすると自ら来たのかもしれない。

それすらはっきりしない。だが一つだけ確かなのは、この場所に入ってはいけないということ。


あの障子の奥に入った人間は、戻ってこない。


一人、すでに死んだ。最初に入ったのはハルカだった。あいつはいつも無鉄砲だった。

「声が聞こえた」と言って、誰よりも早く障子を開けて中に消えた。


そして三時間後、彼女は戻ってきた。

いや、「戻された」と言ったほうが正しい。障子がひとりでに開き、中から、ずるりと何かが滑り出た。


それは、ハルカの体だった。

けれど、その姿は原型をとどめていなかった。何にやられたのかすらわからない。顔が、ない。腹が裂けていて、皮膚が逆にめくれ上がっていた。しかも、それが笑っているように見えた。


その場にいた全員が嘔吐した。泣き叫ぶ者もいた。動けなくなった者もいた。

俺は——声も出せずに、その場に座り込んでいた。

唯一、立っていたのは彼女だった。あの、分身の少女。


名前は、シズネという。無口で、いつも一歩引いた距離にいた。

誰よりも冷静で、誰よりも何かを諦めているような目をしていた。


「私が行く」と言ったのも彼女だった。

「私には“分身”があるから、どこまでなら耐えられるか、確かめられるかもしれない」


だが、分身はただの操り人形ではない。本体と完全にリンクしている。

片方が傷つけば、もう片方も傷つく。感覚も、痛みも、死も——すべてが共有される。


それでも彼女は行こうとした。


止めたのは俺だ。言葉が口を突いて出た。


「無駄だ。分身を使っても、お前は死ぬ。あの中にいる“何か”は、俺たちが理解できるものじゃない」


彼女はしばらく黙っていた。

けれど、その目にはわずかな揺らぎがあった。俺はそれを見逃さなかった。


あのとき、俺は初めて夢の中の“記憶”を思い出した気がした。

この状況を、どこかで経験していたような気がしたのだ。


「……じゃあ、どうすればいいの」

シズネが言った。「このまま、見殺しにするの?」


「見殺しじゃない。これ以上、死なせないんだ」


そのとき、障子の向こうから声が聞こえた。


「開けてくれ」

「助けて……お願い、いるんだ……」


それは、ハルカの声だった。

死んだはずの、彼女の声。

けれど、誰が聞いてもそれは「死者の真似をした何か」の声だった。声に体温がなかった。言葉に意味がなかった。


俺たちは凍りついた。

誰も動けなかった。

あの障子の、わずかに開いていた隙間から、うっすらと向こう側の空間が見えた。まるで入り組んだ迷路のような、どこまでも続く公衆トイレの通路のような——どこにも出口のない、暗く曲がりくねった世界。


弟が言った。「中に入るよ、俺も」


俺はその腕を掴んだ。

必死で止めた。力任せに、叫ぶようにして。


「お前だけは、だめだ!」


次の瞬間、俺は決めた。


完全に閉じよう。

あの障子を、もう誰にも開けられないように。


第二章|接着と拒絶

障子に触れるのが、怖かった。


何かが「染み込んでくる」気がした。ただの木枠に、ただの和紙のはずなのに。

近づいただけで、冷たい何かが皮膚をなぞる。目に見えない粘液のような感触が、脳に直に触れてくるような——そんな錯覚に襲われる。


だから俺は、直接手を使うのをやめた。


念じれば物を動かせる。昔からそうだった。日常で使うことはほとんどなかったが、今だけはその力に頼るしかなかった。


俺は、部屋の隅に置かれていた瞬間接着剤のチューブを浮かせた。蓋が自動的に外れ、空中にねじれた形で漂う。

それをゆっくりと障子の端へと導く。障子と障子の間にわずかに開いた、数ミリの隙間。そこに、透明な接着剤が粘ついた音を立てて落ちていく。


ジュッ……と微かに、何かが焼けるような音がした。


「なにやってるの、あんた……」

背後からシズネの声がした。強くも、弱くもない。まるで、深い井戸の底から響いてくるような無感情な声。


「もう、向こうとは繋がらないようにする」

俺は返す。

「これ以上、誰も死なせたくない」


声がした。


「裏切り者だ、お前は」

「俺たちを見殺しにするつもりか」

「こっちに、まだ“生きてる人間”がいるんだぞ」


それは誰の声ともつかない、複数の声が混ざり合ったような声だった。

怒り、哀しみ、嘲り、懇願——すべてが混ざって、ただ“響き”として存在していた。

それが障子の奥から、こちらの脳内に直接届く。


俺は反応しなかった。ただ、浮かせた接着剤を次の隙間へと導いていく。

一か所ずつ、慎重に、確実に。


もう一度音がした。


ジュッ……シュゥ……


まるで障子の内側が、接着剤を拒絶しているような、不快な音。

だが確かに、それが効いているとわかった。声が少しだけ遠のいたからだ。


弟が叫んだ。「兄ちゃん、そんなことしたら……!」


俺は振り返らなかった。

視線をそらしたら、何かが入ってきてしまう気がした。


「……ここはもう、行き止まりなんだよ」


自分でも何を意味して言ったのかわからなかった。ただ、口から自然に出た。

俺の中の何かが、それを知っていた。


あの奥にいるものは、何かを「模倣」している。

人間の言葉、人間の声、人間の感情……すべてを“真似”して、こっちに呼び込もうとしている。


でもそれは、人間ではない。


接着剤が最後の隙間に流れ込む。障子の光が少しだけ鈍くなった。

すべてが、静かになる——


……はずだった。


だがその瞬間、ドン、と内側から障子が叩かれた。


ビクリと身体が跳ねる。音は一度きり。そして、また静寂が訪れた。


けれど今の一撃で、俺ははっきりとわかった。


向こうの“それ”は、まだこちらを見ている。

入ってくる気はない。だが、見られている。それが一番、恐ろしい。


障子の全体に接着剤が固まるまで、俺はその場を離れられなかった。念動力の集中を切らしたら、何かが逆流してくる気がしていた。


最後に息を吐いたとき、部屋の空気が少しだけ軽くなった気がした。

障子はそこにある。ただの木と紙でできた障子。それなのに、あまりにも重く、冷たく、遠かった。


振り返ると、シズネが座っていた。弟は肩を落とし、目を伏せていた。

ほかの者たちは、部屋の隅で静かに膝を抱えていた。まるで、声を失った人形のように。


俺は座り込んだ。全身が熱を持っているようで、指先だけが異様に冷たかった。


そのときふと、こんな考えが頭をよぎった。


——この世界で、俺は何を閉じ込めたんだ?


“向こう側”にいるのは、本当に怪物だけだったのか?


第三章|過去に夢を見た記憶

目を閉じた瞬間、全てが静止したように思えた。


部屋の空気はぬるく、重く、動かなかった。

障子の前に貼りつくように座っていた俺の背に、乾きかけた汗がじっとりと染みる。

接着剤はもう乾いているはずだ。それでも、俺は視線を戻すことができなかった。

もし目が合ってしまったら——何かが、戻ってくる気がした。


「兄ちゃん」

弟の声だった。

振り返ると、彼は立っていた。肩を落とし、顔を伏せたまま。小さな声だった。


「昔も……同じこと、してたよな」


言われた瞬間、頭の中に火花が走ったような感覚があった。

目の奥が焼けつくような痛み。喉が渇いた。心臓が跳ねた。


「……何のことだ?」


自分の声が、少しだけ震えていた。

弟は顔を上げなかった。だが、次の言葉がはっきりと耳に届いた。


「前にさ、俺、あそこに入ったんだよ。障子の向こう」


一瞬、空間がねじれたような感覚に襲われた。


景色がぐらつく。

シズネの姿が、何重にも重なって見えた。

障子の前にいる自分が、何人もいた。


——そうだ。俺は……前にも、これを見たことがある。

——この部屋も、この障子も、この恐怖も。

——そして、弟が障子の向こうに消えた光景も。


なぜ忘れていた?

なぜ、繰り返している?


記憶が、あまりに曖昧だった。


前回、弟は障子の向こうに入った。俺は止められなかった。

そのあと——どうなった? 戻ってきたのか? 戻らなかったのか?

そもそも、弟は「今ここにいる」けれど、本当に“現実”の弟なのか?


「お前……、前に中に入って、どうやって戻ってきた?」


問いかけると、弟はゆっくり顔を上げた。


その目を見た瞬間、俺は理解した。

そこにいるのは、もう“俺の弟”ではなかった。


目の奥が、暗すぎた。光がなかった。

感情の気配はあるのに、体温がなかった。

まるで、誰かが弟の言葉と仕草を模倣して作り上げた“像”だった。


「兄ちゃん。閉じたつもりでも、ここはまだ、開いてるよ」

彼は微笑んだ。

「気づいてないだけで、ほら、心の奥の奥——そこ、穴があいてる」


俺は後ずさった。

障子が背中に触れた。乾いた紙の感触が、背骨を凍らせた。


「開けろ」と声がした。


もう一度、あの声。

障子の向こうからではなかった。今度は——俺の中から聞こえた。


何かが、心の奥から叩いている。開けてくれ、と。

こっちにいるんだ、と。もう、出してくれ、と。


目の前の弟は動かない。ただ、静かに、俺を見ている。

その目の奥に、誰かがいる。

それは、前に見た誰かかもしれない。ハルカかもしれない。俺自身かもしれない。


わからない。わかりたくない。


俺は立ち上がった。

手が震えていた。

念動力を使おうとしたが、集中できなかった。思考が、引き裂かれていく。


「兄ちゃん。今度は、最後まで見届けてよ」


弟がそう言った瞬間、障子が——音もなく、ひとりでに開き始めた。


ほんの、指の幅ほど。

そこから漏れる空気が、まるで海底の底から吸い上げたような、冷たく、重く、濁っていた。


中は、見えなかった。

けれど——


そこに、“まだ何かがいる”ことだけは、はっきりとわかった。


第四章|境界を越える者

障子が指の幅だけ開いた。


その瞬間、空気が変わった。冷たいだけではない。

何かが「この世界の法則」を壊しながらこちらへ迫ってくるような、静かな崩壊の感覚。


弟は微笑んでいた。

けれどその顔は、もう見慣れたものではなかった。どこか“つくりもの”のように滑らかすぎて、温度がない。


「兄ちゃん。思い出してよ。最初に“開けた”のは誰だった?」


俺は後ずさりながら首を振った。けれど、思い出し始めていた。


そうだ。最初に障子を開けたのは、俺だった。

誰の声にも誘われていなかった。ただ、見たかったのだ。

あの向こうにある「何か」を。触れてはいけないものに触れたいという、好奇心。


——弟を、連れて。


だから、弟は……。


「ごめん」

俺の喉から、かすれた声が漏れた。


「ようやく、言えたね」

弟がそう言ったあと、その身体は——音もなく崩れ落ちた。まるで中身のない人形のように。


中にいたのは、俺の罪悪感だった。


そして、そのときようやく——俺は、本当に目を覚ました。


目の前には、シズネがいた。


「終わったの?」と訊く彼女の目は、どこか安堵していた。

だが、その足元にうずくまる分身体が、震えていた。

まだ、向こう側に繋がっている。


「……行く。私、行かないと」

シズネが立ち上がった。「中に、まだ私の一部が残ってる」


「やめろ。もう十分だ」


「違う。これは、私自身の問題。今度は、自分の意思で行く」


俺は彼女の手を掴もうとした。

けれどその瞬間、分身体の目がこちらを見て、こう言った。


「助けて」


それは、シズネ自身が言えなかった言葉だった。


第五章|本体と分身体

分身体が障子の奥へと入っていく。

障子は一度、完全に閉じられた。


俺は待っていた。空気は張りつめ、時間がねじれ、呼吸が浅くなっていく。


それから——障子が、ふたたび開いた。


出てきたのは、本体のシズネだった。


けれど、彼女の目は違っていた。深い色。恐怖でも諦めでもない、確かな「理解」を宿した光だった。


「わかったよ」彼女は言った。


「向こうにいたのは、“分離された私たち自身”だった。

 後悔とか、怒りとか、言えなかった本音とか。

 形にならなかった思いが、あそこに滞って、怪物みたいになって……ずっと、出口を探してた」


「でも、出られなかった?」


「ううん。出ようとすれば、こっちも壊れるから。だから、叫ぶしかなかった」


彼女は微笑んだ。その目に、涙が浮かんでいた。


「私、ずっと分身に逃げてた。本体が傷つくのが怖かったから。

 でも今は、もう逃げない。全部、私だったってこと、ちゃんと受け止める」


俺は何も言えなかった。

ただ、肩の力が抜けていった。


障子は静かに閉じた。


もう、声は聞こえない。


最終章|開かれたままの扉

最後の夜、俺はもう一度あの部屋を訪れた。


障子はそこにあった。何も変わらず、ただ静かに立っている。


もう接着剤はいらなかった。念動力も使わなかった。

なぜなら、俺自身が、この扉を必要としていないと知ったからだ。


恐れていたのは怪物じゃなかった。

向こうにあったのは、自分の声だった。

言えなかった言葉、抱えすぎた痛み、認めたくなかった本当の気持ち。


それらが「化け物」の形を借りて、ずっとここにいた。


けれど、もう——俺は知っている。


「大丈夫。ここにはもう、誰もいない」


そうつぶやいて、俺は障子に背を向けた。


けれど歩き出すその背後で、ごく小さく、紙がきしむ音がした。


ふと立ち止まる。


でも、もう振り返らない。


この扉は閉じられてなどいない。

ずっと開いたままだ。

そしてそれで、いいのだ。


人は皆、自分の中に“障子の向こう”を抱えて生きているのだから。

夢の内容をChatGPTに分析してもらうの意外とおもろい

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