97.
〈注意事項〉
※15歳以上推奨作品です。
※敬語表現に間違いがあるかもしれません。あまり気にしないでいただけると幸いです。
〈あらすじ〉
発掘調査中の遺跡で、謎の少女「イリス」と出会ったアリスたちランフォード一家とメアリー。イリスが言っていた「ユリアの器」について調べるため、アリス、皓然、アダンの三人は図書館へやってきた。
翌日。
約束通り、アリスは皓然とアダンと一緒に、図書館へやってきていた。中には制服姿の学生魔術師もいて、皓然は「バイトみたいなもんです」と教えてくれた。
「ぼくみたいに帰省しない学生魔術師は、夏休み中も依頼に従事できるんです。とはいっても、三年生から、中級魔術師以上って条件付きですけどね。一、二年生や初級魔術師であれば、部の仕事を引き受けるんです」
「それで、ポイントを稼ぐってわけ?」
「ポイントかお金か、選択できますよ」
「バイトじゃん!」
「だから、最初にそう言ったじゃないですか」
呆れ気味の皓然はスタスタと歩いて行き、「神話・伝記」の本棚を見上げた。そこには、何百、下手したら何千もの本が納められていた。しかも、ほとんどがユリアについてのもので、高い天井に頭をくっつける本棚四つ分。
そのユリアの子孫は、とりあえず近くの本を手に取り、パラパラとめくってから本棚に戻した。分厚すぎてか、文字が多すぎてか。皓然に理由は分からないが、とにかく読むのを断念したことだけは確かだった。
「手分けしましょうか。ぼくとアダンでユリア様の言い伝えを調べるので、アリスはフォティア王家について調べてみてください。もしかしたら、ぼくらが知らない何かがあるのかもしれません」
「了解」
アリスとアダンは皓然に敬礼してから、それぞれの仕事に取り掛かった。
まず、アリスは「王家の歴史」コーナーに顔を出した。しかも、絵本に近い。ここの本なら、アリスでも眠くならずに済むかもしれない。
とにかく、一番近くにあった「図解王家」という分厚い紙でできた本を手に取ろうとしたが、アリスとほぼ同時にその本に触れた手があった。
アリスより一回りほど小さな手の持ち主は、新緑のような色をした緑の瞳をアリスに向け、きょとん、としていた。
それから、少しクセのある明るいオレンジ色の髪に、可愛らしい顔立ち。誰かに似ているような……。
「もしかして、アリスお姉ちゃん?」
「え、あ、うん」
「やっぱりそうだー! あのね、私ね、リジー! エリザベス・ウォルシュ! でも、リジーって呼ばれる方が好き!」
「ウォルシュ……、ってことは、メアリー先生のお子さん?」
「だいせいかーい! 花丸です!」
楽しそうに笑うリジーは本から手を離し、アリスと向かい合った。
「何してるのー?」
「えーっと、少し調べものを……」
アリスはリジーに引きつった笑みを向けた。
「リジーは?」
「リジーは、夏休みの宿題。ママに教えてもらいたかったんだけど、お仕事忙しいから」
その言葉に、アリスの胸がチクりと痛んだ。普段から、何かとメアリーを呼びだしているのはアリスだから。
もちろん、それに応えるのがメアリーの仕事だということは分かっている。
それでも、目の前にいる年下の女の子に謝罪の念を感じたのは、間違いなかった。
「あ、お姉ちゃんは謝んなくていいよ。リジー、慣れてるもん」
この世界の人たちは、よほど人の感情に敏感なのか。それとも、アリスが顔に出すぎるだけなのか。
恐らく両方のような気もするが、アリスは素直にうなずいて本をリジーに差し出した。
「宿題なんでしょ? 私、少し調べものをしたいだけで、急ぎじゃないから。先どうぞ」
「ありがとう! でも、いいの?」
「いいよ。言ったでしょ? 急ぎじゃないって。それに、まだまだ本はたくさんあるしね」
アリスの言葉に笑みを深くしたリジーは、胸に本を抱いて走って行った。「使い終わったら、お姉ちゃんの所に持って行くからね!」と叫んで。
思っていたよりもリジーが陣取っていた席は近く、一緒に千夜族の女の子が座っていた。リジーがアリスのことを示すと、その子は恥ずかしそうに小さく会釈してくれた。
それに軽く手を振って応えてから、アリスはいくつかの優しそうな本を手に取った。
一時間くらい本とにらめっこしてみて分かったことと言えば、「この世界の人々はユリアを信仰している」、「その子孫である王家の人間もその信仰対象である」といったことくらいだ。どれくらいかと言えば、ユリアに関係ある名前を子供に付けないくらい。別世界なら、聖なんたらの名前や、ラファエルのように、天使の名前を子供に付けるように。
その代わり、神という存在がまだ身近な場所にいた。神の力を宿して生まれる子供もいるくらいで、その子供は他より高い魔力レベルを持っている、だとか。
話しが脱線してきて、意識を切り替えようとアリスがうんと体を伸ばした時。別行動していた男子二人がやってきた。
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