表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/157

85.

〈注意事項〉


※15歳以上推奨作品です。

※敬語表現に間違いがあるかもしれません。あまり気にしないでいただけると幸いです。


〈あらすじ〉

 何とかアゴーナスも終了し、前期期末試験乗り越えたアリス。しかし、ホッとするの束の間。とある人物からの手紙により、今度はダンス練習をしなければならなくなったようで……。

 魔術師のほとんどは、貴族だったり、お金持ちだったり。とにかく、身分の高い家出身であることが多い。そのため、周りとの交流を図る場が設けられることもある。


 いわゆる、社交界だ。


 アドワが言っていたパーティーというのは、この社交界のことだ。特に、アリスたち一年生は社交界デビューをする、デビュタントの年だ。


 デビュタントのことは、アリスも知っている。別世界にもあったから。


「つまり、私はデビュタントの年だから練習するってこと? それなら、アダンも練習しないといけないんじゃない?」


「——よし、解説しよう」


 アリスまで自分のように引っ繰り返らないよう、パウラはアリスをソファに座らせた。


「デビュタントでは、確かに一年生は踊らないといけない。でも、それはみんな一斉に踊るものだから、別に気にしなくてもいい。多少下手でも、人数が多いから誤魔化せる。でもな、この学期末パーティーは、アゴーナスで優秀な成績を収めた人を称える場でもあるんだ」


「つまり、私が優秀だったってこと?」


 アリスはパッと顔を輝かせたが、皓然が笑顔で「違いますよ」とその可能性を断ち切った。


「今年の最優秀者は、ディスマス王子です。ネロの。あの時、四カ国の魔術師たちの指揮を執ってくださったから、その功績をたたえて」


「なぁんだ」


「なんだじゃない」パウラはため息をついた。「いいか、この手紙にはなんて書いてある?」


「『パーティーの日、大広間でお待ちしております』」


「で、この印章はネロ王国のものだ。——なあ、分かったか?」


「……ごめん、イマイチ分からない」


 レオはため息をつき、「つまり」とアリスを指さした。


「ディスマス王子に、『一緒に踊りましょう』って誘われてんの、お前は! ディスマス王子と二人で、みんなに見られている中で踊るの! アニメのプリンセスみたいに!」


「うっそでしょ!?」


 アリスの体から、一気に力が抜けていくのを感じた。パウラの判断は、正しかったらしい。ソファに座っていなかったら、皓然は氷嚢(ひょうのう)をもう一つ用意することになっていただろう。


「なんで!? 私!? なんで!?」


「知らんけど、ディスマス王子のお眼鏡に掛かったんだよ! うわぁ、やばいぞ、これ……」


 レオは頭を抱えて、その場をウロウロと歩き回り始めた。


「ただでさえ、最優秀者にジャン王子が選ばれなくて、フォティアのヤツらブチギレなのにさぁ……! こっちが聞きてぇよ! なんで!?」


「二人とも、落ち着きなよ」


 なぜか今日は大人しいアダンは、満足そうに笑った。


「そんなの、お断りしちゃえばいいんだよ! これで解決! アリスの相手はぼくで決まり!」


「無理だな。王子クラスとなると、断れないだろ」


「ですね。外交問題に発展しかねません」


 パウラと皓然の言葉に、アダンは勢いよく立ち上がった。ランフォード兄妹と同じように、大きな声で「なんで!?」と繰り返しながら。


「とにかく!」


 勢いよく立ち上がったパウラは、チームメイトたちを見つめた。


「アン先生の所に行くぞ! こういうのに詳しいし、アリスのお母様なんだから!」


 その言葉に、アリスたちは「おお!」と歓声をあげたのだが……。


 アリスから手紙を受け取ったアンは、目を点にしてしばらく動かなくなってしまった。


 アンの肩から手紙を覗き込んだルーナは、毛を逆立てて低い声をあげた。最近知ったのだが、ルーナはアンの使い魔だったらしいのだ。


「……」


「お母さん?」


「ただいま……。——なんだ、お前ら来てたのか」


 疲れ切ったようすのルイスが仕事から帰ってくると、アンは震える足で「どうしましょう」と、着替えすら済ませていない夫に近付いて行った。


「な、なんだよ。フラフラして……」


「あなた、どうしましょう……。アリーが、うちの娘が、ネロにお嫁に行っちゃうかもしれないわ……!」


「なんだと!? おい、アリス! どこの馬の骨だ、お前を狙ってるのは!」


「え、何の話?」


 取り乱すランフォード夫妻と、ポカンとしているアリスを見て、パウラは小さくため息をついた。


「家族だな、これは」


「ですね」


 皓然も、その言葉に小さくうなずいた。


 ***


 改めてパウラたちから話を聞き、ルイスはティーカップを落とし、アンはソファの背もたれに倒れこんでしまった。疲れているせいか、最近のこの夫婦は取り乱しがちだ。


「……なんで、アリスなんだ?」


「さあ、それは俺らにも分からない」


ルイスにタオルを渡しながら、レオは正直に答えた。


「今、シオンにも聞いてる所。でも、ネロでも大騒ぎになっているんだって。だって、ネロの貴族じゃなくて、アエラスの平民の娘を指名したんだから」


 ポカンとしているアリスに、アダンが耳打ちした。


「最優秀者がダンスを踊る相手は、親しい相手なんだよ」


「私、王子と友達になってないよ? オリヴィアとは友達になったけど」


「違うよ! 友達じゃなくて、婚約者とか恋人とか、そういう『親しい人』なの!」


「うえええっ!?」


 アリスは顔を赤らめ、勢いよく立ち上がった。


「私、あの王子と付き合った覚えも、結婚の約束をした覚えもないよ!?」


「そうだよな。つまり……、ディスマス王子はアリスに好意があるってことか?」


 パウラの言葉を聞き、アンは再び青い顔でルイスに「どうしましょう!」と縋り付いた。


「私たち、この子に妃教育をしてないわ! テスト結果もあんまり良くなかったし……」


「それ今関係なくない!?」


「ああ……。なあ、今からでも陛下にお願いすれば、妃教育をしてくれる貴族が見つけられるんじゃ……」


「ちょっと! 私、ネロにお嫁に行かないから!」


 アリスは大慌てで両親の間に割って入ったが、みんなは黙ってしまった。


「——あの、アリス?」


 シンとした空間を切り裂いたのは、皓然の静かな言葉だった。


「つまり君は、王子を振るってことですか?」


「そうだよ?」


「もし君がネロの国民だったとして、自分たちの大事な王子様が他国の魔術師に振られたら、どう思います?」


「……いい気はしない、かな?」


「そういうことです」


「でも、大事なのは私の気持ちじゃないの!? そもそも、私は一、二回くらいしか話したことがないのに!」


 それにみんなが再び黙ってしまったところで、レオのスマホが浮かび上がった。


「シオンからだ! 続報!」


 レオの言葉に一同は背筋を伸ばし、シオンからの続報に耳を傾けた。


「えっと、さっき王子から話があったみたい。アリスを指名したのは、アゴーナスの時に命を救ってもらったから、だって」


「命、救ったっけ?」


 本人は何のことだか分かっていなかったが、レオはシオンからの知らせを読み進めて行き、「サビーナに襲われる一歩手前で、アリスがサビーナを吹っ飛ばした時のことみたい」と、アリスの功績を教えてくれた。


「『あの時、アリスが来てくれなかったら、世界は混沌と化していただろう』だってさ。別に、お前に惚れてるとか、そういう訳ではないみたい」


「……良かった」


 ルイスは脱力しきり、ソファに思い切り体を預けて天井を仰ぎ見た。


 こんなに可愛がっている娘がたったの十三歳で婚約だなんて、考えただけで憂鬱になる。


「結婚なんて一生しないで欲しい」


「アリー。パパの言うことなんて、気にしないでいいのよ。疲れているだけだから」


 さっきまでとは違い、アンは笑顔でアリスを見つめた。


「良い人が出来たら、ちゃんと紹介してね」


「あ、うん……。多分、できないと思うけど」


 アリスの両親は、とても気が早い人たちだったようだ。


「あと、それは私よりお兄ちゃんたちの方が早いと思う」


「っはあ!? おまっ、何言ってんだよ!」


 真っ赤な顔のレオを見て、アリスたちはニヤリと笑った。ルイスだけは、話しについて行けずにポカンとしていたけれど。


 それにしても、レオはとても分かりやすい。


 レオから睨みつけられているのを無視して、アリスはふと疑問に思ったことがあった。


「一年生って、みんなで踊るんでしょ? それ、私も?」


「当たり前じゃないの。アリーは二回、みんなの前で踊ることになるわね。——あっ! そんなこと言っている場合じゃないわ! ドレス、見に行くわよ!」


「え」


「王子様と踊るんだから、特に気合い入れなきゃ! アエラスの魔術師統括管理者の娘ですもの、国の威信がかかってるわ! そうだわ、おじいちゃんにお話ししましょう!」


「おじいちゃんに!?」


「そうよ! きっと、良いお店を紹介してくれるわ! さあ、行くわよ!」


「え、えええっ! ちょ、お母さん!?」


 結局、アリスはアンに引きずられるようにして、部屋を出て行くことになった。

お読みいただきありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ