75.
〈注意事項〉
※15歳以上推奨作品です。暴力表現、流血表現、荒い言葉遣い等を含みます。
※敬語表現に間違いがあるかもしれません。あまり気にしないでいただけると幸いです。
〈あらすじ〉
アゴーナス二日目。アリスたちは着々とポイントを稼いでいたが、どうやら、何かおかしなことが起こっているようで……。
とある衛兵の推しになっていることなど露知らず、アリスは上機嫌で森を歩いていた。
あれからというもの、魔物を倒しながら、魔術師たちとも対戦を重ね、着実にポイントを獲得しているから。ほとんどはレオたちがどうにかしてくれた。アリスがしたことと言えば、防御魔術を使ってみんなを守ったことと、驚いて魔力を暴走させて一人だけ倒したことだ。
それに、今の所ローガンに狙われてもいない。
アリスたちが当たるのは初級、中級で構成されているチームばかりで、まだ上級見習いと当たっていないし、見てもいない。それから、王族がいるチームとも。
「元気そうだけど、念のために舐めときな」
「うん、ありがとう!」
パウラから飴玉を受け取り、笑顔で口に入れた。
「単純」
アリスを見てレオが鼻で笑ったから、アリスのご機嫌はこれで終わってしまったけれど。
「はいはいはい! 喧嘩しない!」
アリスを抑えながら、皓然はそっとため息をついた。悲しいかな、いつの間にか兄妹喧嘩の仲裁役に抜擢されている。パウラとアダンは喧嘩を止めようともしないから。
そんな時に限って、近くから何かが飛び出してきた。
例のごとく、アリスは驚いて魔力を暴走させたが、相手はそれを読んでいたらしい。防御魔術を張って、アリスの暴走した魔力から身を守った。
「キュクロープス!?」
刀を構え、皓然は驚きの声をあげた。
それもそのはず。キュクロープスは中級に分類される魔物だからだ。
「これのどこが低級魔物だ?」
銃を構え、レオは眉をひそめた。
キュクロープスは、一つ目の巨人。アリスも聞いたことのある名前で言えば、サイクロプス。卓越した鍛冶技術を持つと言われる彼らは高度な頭脳を持ち、様々な道具を作り出す。
そんな彼らは魔物の中でもかなり大人しい方で、個体によっては人間と取引をして武器を作ってくれるものもいるという。
目の前にいるのは、目を真っ赤にしていて、雄たけびを上げている。どう見ても、協力的な個体ではないだろう。
「黒魔術に侵されてる」
構えていた弓を降ろし、アダンは戸惑いの声をあげた。
「黒魔術で操られているんだよ! 助けられないかな!?」
「アダン。目の前にいるのは魔物だ。そんなこと言ってたら殺されるぞ」
眼鏡をはずしたパウラは、そういうが早いかアエラス軍歌を歌い始めた。これでアリスたちの攻撃力は通常の数倍だ。
パウラの歌声が響く中、皓然は先陣を切ってキュクロープスに切りかかった。だが、皓然の刀は、受け身を取った太い腕に掠り傷しか負わせられなかった。
「固い!」
キュクロープスから距離をとり、皓然は鋭い舌打ちを漏らした。
「レオ!『背水の陣』を解放します!」
「暴れたら、苦しまないように心臓を狙え、だろ」
レオがもう一丁の銃を構えたのを見ると、皓然も瞳を赤く輝かせて再びキュクロープスに切りかかった。
今度は、腕を切り落とすまでは言開かなかったが、深い傷を負わせることに成功した。太いキュクロープスの腕から、黒い瘴気がドバっとあふれ出た。
そこにレオの銃弾が降り注いだ。銃弾は全て、弱点である一つ目へ。
キュクロープスの悲鳴のような咆哮が上がり、森中が震えた。
キュクロープスは魔法陣からハンマーを取り出すと、思い切りそれを皓然に向かって振り下ろしてきた。
「危ない!」
アリスは慌てて防御魔術を展開したが、慌てていたせいか簡単に打ち破られてしまった。それでも皓然には十分だったのか、アリスが耐えた一瞬の間を使ってハンマーの下から脱出した。
「助かりました!」
「どういたしまして!」
その様子を見ていたアダンも、やっと殺されかけていることに気付き、シルフを呼び出して弓を引いた。
アダンの、その一発が止めを刺したらしい。
瘴気の上がっていた一つ目部分に弓矢が突き刺さった瞬間。キュクロープスは黒い瘴気となって空気に溶けて行った。
戦闘態勢を解いたアリスたちは、呆然とその様子を見つめていた。ダリアに限って、嘘をつくとは考えられない。
だが、中級の魔物に襲われたのは、紛れもない事実だった。
「何か変だな」
パウラがそう呟いた瞬間、近くの茂みがガサッと音を立てた。
「ニコ!」
皓然は刀を構えたが、すぐ驚きで目を大きく見開いた。
ニコのチームメイトはツェツィーリアのみ。二人だけのチームだ。それなのに、彼の後ろから上級見習いたちが現れたのだから。
「フォティアの……!」
パウラはすぐに眼鏡を取り、レオとアダンはそれぞれ銃と弓を構えた。だが、現れたニコが代表して「違う違う!」と声をあげた。彼は腰に吊っている剣を抜いていない。
「ちょっと話を聞いてって!」
「……」
しばらくニコを見つめたのち、パウラはみんなに武器を降ろすように指示した。
「これで裏切ったら、一生君らと話なんてしないからな」
眼鏡をかけながら、パウラはニコとツェツィーリアにくぎを刺した。
「で、話しって?」
「うん。実は、ちょっとおかしなことが起こっているみたいなんだ」
ニコはそういうと、銀髪の人を見上げた。
黒い仮面で鼻から上を隠している、背の高い人。制服はフォティアのものだが、すっぽりとフードを被っている。フードから流れ出ている長い銀髪は一つにまとめられ、膝まで伸びていた。
「フォティアのレグルス。上級見習いだよ」
アダンに耳打ちされ、アリスは小さくうなずいた。
そのレグルスは、「出会えたのが君たちで良かった」と前置きして、話し出した。
「我々、上級見習いの魔力が封印されているようだ」
「なんだって?」
パウラは眉間にしわを寄せた。
「生憎だけど、ボクらには冗談に付き合っている暇はないよ」
「いいや、本当だ。君の兄上も、魔術が使えないようだった」
そう言われたパウラがしたのは、ローガンにもらったあの飴を舐めることだった。
飴を口にしたパウラは、しばらく顔をしかめていたが、ふとその目を大きく開いた。
「パウラ、どう?」
「魔力が消えてる」
レオに答え、パウラはまじまじと瓶を見つめた。
「アリス、気付いてなかったのか?」
「え、うん」
「お前、鈍感すぎるだろ」
レオを睨み、アリスは改めてレグルスたちを見つめた。
「ってことは、ラファお兄ちゃんも?」
「ああ、ラファエルもだ」
そう答えたのは、千夜族の女性。ショートカットの髪に蝶の飾り、着物風の制服を着ている。少し吊り目なのと、口調が淡白だからか、少しキツイ性格にも見えた。
事前情報から考えると、この女性が胡蝶蝶という上級見習いだろう。
「ありとあらゆる魔術を試したよ。一般魔術、家系特性、使い魔特性、それに魔法も。全部が使えなかった。魔力を封印されているとしか思えない」
「そういう仕様とかでは?」
皓然の言葉に、レグルスは首を左右に振った。
「このアゴーナスで、上級見習いの魔力を封印する意味がない。我々が派手に魔術を使うのは、これの恒例行事と言ってもいい。それに、他国の魔術師のレベルを測る情報収集の意味もある。それで、我々はローガンたちと休戦、情報収集に動き回っているんだ。そのうち、中級や初級にも影響が及ぶかもしれない。そうなったら、争っている場合ではない」
「俺は、ローガンともっと戦りたかったけどなぁ」
そう言ったのは、魔女のような三角帽子をかぶる、女性だった。しかし、声は男性のもの。
黒いボブの髪、茶色の瞳。タロットカードを手の中で遊ばせている。
「そんなこと言ってる場合じゃないんだよ、このバカ」
蝶は三角帽子の人を睨みつけた。
「とりあえず、まだ中級、初級は魔力が封印されていないことが分かった。コイツらを中心に、色々と考えないといけない」
「そうは言ってもねぇ。外部との連絡手段も絶たれたじゃんか」
三角帽子はタロットカードを懐にしまった。
「これじゃあ、まるで、二十二年前の事件と一緒だ」
「二十二年前の事件?」
アリスが首をかしげると、三角帽子の人はアリスの前までやってきて、腰に手を当てた。
「なるほど、噂は本当と見た。はじめまして、ランフォード家のお嬢様。俺はヴィトゥス。一応、君たちに仕える立場だった人間。可哀そうに、二十二年前のことを知らないのか」
「……それは、そのうち伝えるつもりだった」
レオが答えると、ヴィトゥスは手を振った。
「それは、『何も教えない』と同じだね。お嬢様を一番傷つける。いいか、お嬢様。二十二年前、フォティアで開催されたアゴーナスで、六十八人の学生魔術師が死亡する事件が起こった。犯人はフィリップ・ハーコート。アエラスの元上級魔術師。ヤツは黒魔術に手を染め、魔術師の魂を黒魔術の材料にすべく、学生魔術師たちを黒魔術の結界に閉じ込めた」
「その時も、上級見習いは魔力を封印されたの?」
「いいや。ただ、その時も外部との連絡が絶たれた上、二週間も外に出れなかったらしい。そんな状態で、壊滅状態にならなかったのはアエラスの英雄たちのおかげだ。な、英雄の娘」
アリスの額をつつき、ヴィトゥスはアリスたちに背を向けて歩き出そうとした。だが、手を掴まれてそれを邪魔されてしまった。
「——どういうこと」
ヴィトゥスの手を握り、アリスは静かな声で尋ねた。
「お兄ちゃんたちは、きっと何か理由があったから私にこの話をしなかった。それを話したんだから、最後まで説明する責任があるんじゃないの?」
「……ランフォード家の人間って、本当に怖いよ」
そう呟いて、ヴィトゥスは改めてアリスと向かい合った。
「現アエラス国王は、そのことを家系特性『未来図』で予知していた。『未来図』は知ってるか?」
「知らない」
「未来の画像が、断片的に見える特性だ。アエラス国王は代々、この力を使って国の被害を最小限に抑えてきた。そんな特性を持っていた当時の王子様は、チームメイトたちに食料と水を持ってアゴーナスに臨むよう指示していた。お嬢様の今のママとパパ、王子の側近であるピレネン公爵は、食料と水を増やしながら、他の魔術師たちの命を救った。それから、当時の上級見習いで役に立ったのもお宅の魔術師だ。エルンスト・ツヴィングリは『伴奏者』という特性で争いを収め、安倍桜音と黄皓宇は治療を施した。これがなかったら、全滅していてもおかしくなかったと言われてる」
「それなら、英雄の子供はラファお兄ちゃんでしょ。それに、本当にその事件と同じなら、今度は犠牲者が出ないかもしれない。人間だって学習するんだから」
アリスは真っ直ぐ、ヴィトゥスを見上げた。
「そもそも私は……」
「ヘレナ・ランフォードのチームが、逃走していたフィリップ・ハーコートを逮捕した」
アリスの手を振りほどき、ヴィトゥスは改めてアリスを見つめた。
教科書に載っている英雄夫婦と、そっくりな目をしたアリスを。
「それまでの間、この事件を発端に魔術界では、五年にも続く世界大戦が起こった。『英雄』とは、よく言ったもんだよ。今の親世代の魔術師たちはみんな人殺しだ。結局、この戦いのせいで学生魔術師の四分の三が死んだ。お嬢様、アンタも人殺しの娘なんだよ」
「そんなわけ……!」
「特に、ルイス・ランフォードは狙撃手として、何十人もの指揮官の頭を撃ち抜いた」
「……」
「ヘレナ・ランフォードとアン・ポポフは、魔術で何十人もの人間を木っ端みじんにした。カイル・ブラックは、家系特性を使って敵に幻覚を見せ、毒ガス部屋に誘い込んだ」
「……嘘だ」
「エルンスト・ツヴィングリも、イザベラ・トゥータンも、人を殺した。それなのに、停戦協定が結ばれた瞬間、魔術師たちは英雄扱いだ。人殺しの罪にも問われない。何も知らないお嬢様。『英雄の子』だって言われてるのはつまり、『戦争で何十人も殺した殺人者の子供』ってことだから」
「お父さんもお母さんも、そんな人じゃない」
「そう思いたいなら、そう思っていればいいよ。俺はあくまでも、事実を言ったまでだから」
今度こそ、ヴィトゥスは一人で歩いて行ってしまった。
アリスは、その後姿を黙って見送ることしか出来なかった。
あり得ない。
両親は、そんなことをするような人たちではない。だって、暴力や争いを、本当に嫌っている人たちだから。
それに、あんなに優しいのに。虫すら殺さないような人たちなのに、人を殺すなんて、するわけがない。
「——アリス。残念だけど、ヴィトゥスが言ってたことは事実だ」
パウラの言葉に、アリスは体を震わせた。
「……違うもん」
「悪いけど、それが事実だ。ボクの父さんも、何十人、下手したら何百人もの人を殺した」
事件当時、上級見習いだった父を持つパウラは、静かにアリスを見つめた。
「停戦協定が結ばれて、四つの国の王は同時に変わった。魔術師たちに戦うよう指示していた責任を取って、全員が処刑されたからだ」
その言葉に思わず顔をあげたが、パウラは悲しそうな顔でアリスを見つめていた。
「でも、王が処刑されたって、父さんたちの罪が言えるわけじゃない。母さんが言ってた。父さんは死ぬまでの間、ずっとそのことを後悔していたって。毎日のように、レクイエムを演奏していたんだって。そうしないと、辛いんだって。きっと、ルイス先生たちも同じだ」
アリスの記憶にある両親は、人を殺すような人たちではない。
けれど、殺人事件や戦争のニュースが始まると、すぐにチャンネルを変えていた。もしかすると、見ていたら当時のことを思いだすからなのかもしれない。
「陛下は、このことを悔いてアエラスの憲法を変えたんだ。どう変えたと思う?」
衝撃の事実に殴られ過ぎて、何も考えられない。
アリスが答えずにいると、パウラは静かに唇を開けた。
「『如何なる状況に置いても、アエラス王国は戦争をしない。魔術師は戦争の道具ではなく、国民の穏やかな生活を守るために存在するものとする』。だから、魔術師の元には依頼書が来る。先生たちはボクらに依頼を受けるか聞くんだよ。もう二度と、戦争が起こらないように。ボクらを殺人者にしないように」
ポロポロとこぼれてきた雫を拭ってやり、パウラはアリスと視線を合わせた。
「ショックだよな。ボクらも、これを初めて知った時はショックだったよ。君の気持ちは、良く分かる。アリス、ボクらは絶対、父さんたちと同じ過ちを犯しちゃいけない。だから、今のアエラスを変えたい。『平和』の名のもとに、君をヘレナ先生殺しに使おうとしている大人が、一定数いるから。ヤツらは、戦争の時、戦場に出ていないから自分たちの命令で苦しんでいる人がいるって、分かってないんだ」
「でも、私がヘレナおばさんのことを、こ、殺さないと……」
「ぼくらが、絶対にさせません!」
皓然はパウラの隣にやってきて、アリスの手を固く握った。
「絶対に! アリスをヘレナ先生殺しの道具にはさせないし、何があっても守ります。だから、一緒にヘレナ先生の身に何が起こったのか明らかにして、元の先生に戻しましょう。アリスだけが、そんな責任を負う必要なんてないんですから」
「そうだよ、アリス!」
後ろからアダンが抱きついてきて、アリスは顔をあげた。いつもの笑顔を浮かべたエルフの少年と、目が合った。
「何のために、ぼくらが君と一緒にいると思ってるのさ。アリスってば、変に責任感じちゃうんだから。ルイス先生たちは、一度でも君に『俺らも人を殺したんだから、お前もヘレナを殺してこい』とか言ったの?」
「言われてない……」
むしろ、周りからの期待に耐えられなかったら、戻って来ていいと言っていた。
「なら、大丈夫。先生たちはさ、きっとアリスに自分たちと同じ思いをして欲しくないんだと思うなぁ。君が銃の扱いも、戦い方も、何も知らなかったのは、二人が君を守ろうとしていたからだと思うよ」
「じゃあ、お兄ちゃんたちは?」
「俺らは、自分で魔術師になるって決めたから」
レオは、みんなのようにアリスに近づこうとはしなかった。
その場から動かず、アリスをジッと見つめている。
「ちゃんと、戦争のこととかも知ったうえで。兄ちゃんは、戦争に行って傷ついた人たちを手助けするために、魔術師になった。俺は、父さんが人をたくさん殺した特性を、人助けのために使いたくて、魔術師になった。『百発百中』は、最強の攻撃魔術だ。それを、父さんは人を殺すために使った。けど、この特性で人を守ることが出来るはずなんだ。だから……」
アリスは改めて、みんなの顔を見回した。
みんな、アリスと同じだ。それを受け入れて、自分にできることを探している。
「——ありがとう」
アダンの抱擁から逃れ、みんなに笑って見せた。
それを見て、パウラは笑った。
「じゃあ、アリス。ボクらが今からすべきことは?」
「戦争にならないようにする」
「そうだね。まずは、ヴィトゥスたちが言っていたように、情報収集が必要だな。レグルス、蝶。君らのことだから、どっかに本部的なの作ってるだろ。そこに、ローガンたちもいるはずだ」
「兄貴に似て、勘の鋭いやつ」蝶は肩をすくめた。「このすぐ近くに崖があるだろ。丁度、森の木で隠れている場所に洞窟がある。そこなら、魔物たちも簡単には手を出せない」
「ありがとう。とりあえず、ボクらはそっちに向かう。外部と連絡が取れないなら、コイツを使って連絡も取れないんだろ」
そう言って、パウラはイヤホンを指さした。どうやら、説明されていなかっただけで、これで連絡も取れるらしい。
「ってことは、先生たちの魔力も封印されてると思ってよさそうだ。先生たちの魔力を使って動いていたはずだから」
「ハーコートの模倣犯の可能性を視野に入れて、動いた方が良さそうですね」
クロエを呼び戻し、皓然はパウラを見つめた。
「一人でも死んだら、ぼくらの負けです」
「ああ。そのためにも、まずは王家の方を探そうか」
パウラもアーベルを肩に乗せ、チームメイトたち、それからニコとツェツィーリアを見つめた。
「王家の方が『争うな』と言えば、魔術師たちは逆らえない」
「君らんとこはどうすんのさ」
ニコは腰に手を当てて、肩をすくめた。
「マヤ姫は、ここにいないよ」
「その代わり、公爵様がいるだろ。しかも、上級見習いで」
パウラはニヤリと笑った。
「あのクソ兄貴も、たまには役に立つらしい。ボクがその役を担えないのは、悔しいけどね。だから、まずはローガンたちの所に行くんだよ」
「なら、王家の方をお探しするのは、我々に任せておけ」
レグルスはそう言って、蝶と頷き合った。
「魔術が無くても、低級の魔物なら素手でも何とかなる。それに、うちのリーダーは変に勘が鋭い。すぐ王家の方を見つけ出すだろう」
「分かった。それなら、俺らは先に洞窟に行ってる」
レオが頷くと、上級見習い二人はヴィトゥスの後を追って歩き出した。
それを見送ってから、アリスたちも洞窟に向かって歩き出した。
絶対に、両親と同じ過ちを繰り返すわけにはいかない。
お読みいただきありがとうございました!




