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72.

〈注意事項〉


※15歳以上推奨作品です。暴力表現、流血表現、荒い言葉遣い等を含みます。

※敬語表現に間違いがあるかもしれません。あまり気にしないでいただけると幸いです。


〈あらすじ〉

 占い準備室に閉じ込められたアリスたちを助けてくれたのは、レオと皓然の親友である、ニコとシオンだった。メアリーは、この件を任せるように言っていたが、アリスは不安で仕方ないまま、アゴーナス二日目を迎えることになった。

 次の日。


 アゴーナスに向かうため、占い準備室の前をアリスたちは通りかかった。規制線が張られ、衛兵たちが周りを囲っている。


 そんな中、壁に昨日の出来事が映し出されていた。


 これこそが、メアリーが昨晩言っていた、王宮の自動録画機能だ。どうやら、壁には録画機能も付いているらしい。


 アリスたちが中に入り、犯人はナイフを投げつけて蛍光灯を割り、ドアを施錠して立ち去る。しばらくして、シオンたちが通りかかる。そして、やっとドアが開かれる……。


 肝心の犯人は、モヤがかかっていて誰なのか分からなかった。クロエを入れた袋を持ったその人は、鍵を使って中に入っているようだ。


「あの感じだと、すぐ犯人逮捕に繋がりそうだな」


 占い準備室の前を通り過ぎてから、パウラが呟いた。昨晩も話した通り、この部屋の鍵を持っている人物は限られているからだ。それに、鍵穴を調べたところ、ピッキングされた痕跡は一つしかなかったそうだ。


 今日の会場は、第二〇三訓練場だった。この訓練場は、大きな森を模した作りになっている。遠くの方には崖もあり、動物たちの鳴き声も聞こえてくる。実際、アリスたちの前を何か小動物が通り過ぎて行った。


 訓練場に入った魔術師たちは、イヤホンを渡されると、チームごとにワープパネルに乗るように指示された。これで、スタート地点をランダムに振り分けるらしい。


 ワープパネルを踏み、アリスたちは森の中に振り分けられた。周りには木々が鬱蒼(うっそう)と立ち並び、天気が良いのに日の光はほとんど入ってこないし、森の奥は暗くてよく見えない。


「——クロエ、行けます?」


 皓然が尋ねると、ヤタガラスは頷いて空高く舞い上がった。クロエに確認を取ったのは、昨日の出来事があったからだろう。


 しばらく目をつむっていた皓然は、そっと目を開いた。


「北に三キロほど進むと湖、東に六キロほど先に崖、南西方向十キロ先に滝。この滝の水が北の湖に流れているようです」


 再び肩にクロエを止め、皓然はメンバーを見つめた。


「了解。アーベルも、よろしくな」


 アーベルは頷くと、するするとパウラの頭から降りてきて、森の中に姿を消した。


 それを見て、クロエも再び皓然の肩から飛び立って森の中へと消えていった。


「森の中じゃ、使い魔たちの方が動きやすいからな」


 パウラはアリスに笑いかけた。アリスが「何しに行ったんだろう」と思いながら使い魔たちを見送っていることに気付いたから。


「探索に行ってもらったんだよ。アーベルもクロエも、森の中だと目立たない。逆に、アルは目立つだろ?」


「あ、だからアルは行かないんだ」


 とは言っても、アルの姿はここにはない。レオの中にいるからだ。


 使い魔というのは不思議なもので、主人の魔術師の中に入ることができるのだという。その仕組みや理屈は、まだ解明されていない。だが、基本は共有している物の中にいるらしい。クロエであれば、よく皓然の陰に中に入り、気が向いた時だけそこから出てくる。


 アルは基本、レオの中に閉じこもって出てこない。兄自身は「アルは警戒心が強いから」と気にしていないようだった。警戒心は強いが、主人から離れたくないアルは、レオの中に入ることで常に行動を共にしている。出てくるのは、部屋にいる時と、ブラッシングの時、それから食事時だけだ。


 最初はこれにも驚いたアリスだったが、毎日兄の中からライオンが出てくるのを見ていたら、慣れてしまった。絶対に、普通のことではないのに。


「アダンも、妖精、精霊たちに協力をお願いしておいてくれ」


「任せといて!」


 アダンはパウラにうなずくと、すぐに様々な妖精、精霊を呼びだした。それは木や草、花、水、風などにまつわる精霊たちだった。


 彼女たちはアダンの説明を受けると、黒板をひっかくようなキーキー高い音を出して消えていった。どうやら、この耳に障る音が、彼女たちの言葉らしかった。


『本日のアゴーナスについて、説明いたします』


 上空に、今日もダリアが映し出された。


『まず、口うるさいようですが、再起不能のけがを負わせること、相手を殺すこと、黒魔術を使うことなど、法に触れる行為はすべて禁止とします。この森には、低級の魔物を放ってあります。魔物一体につき、一ポイント。初級魔術師を戦闘不能か降参にすれば、十ポイント。中級魔術師は五十ポイント、上級魔術師見習いは二百ポイント。より多くのポイントを獲得してください。つまり、一番ポイントを多く獲得したチームが優勝、一位のチームには一万ポイントを差し上げます』


 つまり、大逆転のチャンスだ。


 アリスはこの情報に、思わず両手を固く握りしめた。


『制限時間は三時間です。それでは、皆さんのご武運をお祈り申し上げます』


 ついに、アゴーナス最終戦が始まった。


「レオ、アダン」パウラは早速指示を出した。「五時の方向に五人。フォティアの魔術師だ。初級三人に、中級二人。まだこっちに気付いてない」


「了解」


 飛び道具を扱う二人はニヤリと笑うと、パウラに指示された方向にそれぞれ、矢と銃口を向けた。


 二人が同時に攻撃を仕掛けると、しばらくしてフォティアの魔術師三人が現れた。三人とも初級ということは、二人は中級を先に倒してくれたらしい。


 三人は、金髪を持つ兄妹がいることに驚いて立ち止まり、その隙に皓然が素早くみね打ちを食らわせた。

 あっという間に、五人を倒してしまった。


「おお……!」


「呑気に拍手してる暇はないぞ」パウラはアリスに笑った。「次は、ボクらの番だ。アリスには防御をお願いするよ」


「まっかせといて!」


 皓然が視線で攻撃が来る方向を教えてくれたから、アリスはそちらに向かって防御魔術を作り出した。自分の中で一番固いものを。


 そこに、手りゅう弾が飛んできた。


 アリスの防御魔術にぶつかって大爆発を起こしたそれの煙の中から、ガイアの女魔術師たち四人が飛び出してきた。


「“パウラ・ツヴィングリの名において、植物たちに協力をお願いする。ヤツらを止めてくれ”」


 すると、あちこちから植物のツルが伸びて来て、ガイアの魔術師たちを雁字搦め(がんじがらめ)にしてしまった。パウラの肩には、さっきアダンが協力をお願いしていた植物の妖精。


「いくらガイアの魔術師とはいえ、妖精に抵抗は出来ないよな?」


 そう言って笑ったパウラを真っ赤な顔で睨みながら、ガイアの魔術師たちは消えていった。ツルが彼女たちの体をきつく縛っていたので、息もロクにできなかったようだ。


 パウラにお礼のチョコレートをもらい、妖精は再び空気に溶けるように消えていった。


 これで、九人の撃破。


 パウラたちといるのなら、負ける気がしない。


 アリスはリボンを結び直し、改めて気合を入れ直した。昨日はみんなに助けてもらってばかりだったから、今日こそは自分もチームに貢献できるように頑張ろう。

お読みいただきありがとうございました!

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