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6.

〈注意事項〉


※15歳以上推奨作品です。

※敬語表現に間違いがあるかもしれません。あまり気にしないでいただけると幸いです。


〈前回のあらすじ〉

レオと一緒に魔術界へやってきたアリス。「あまりもの組」リーダー、パウラに王宮を案内してもらっている所、会議中に居眠りをした罰で図書館のドアにされてしまったスコーン先生の存在を知った。どうやら、悪いことをすると扉に変えられてしまうことがあるらしい……。

 どうやら、悪いことをすると扉に変えられてしまうことがあるらしい。


 アリスが密かに背中に冷たい汗をかいている間にも、パウラは王宮を案内してくれた。


「この階段を上ると、教室があるよ。魔法使いから魔術師まで、全学年分。それから、あのガラス張りの所は談話室。併設されてるカフェのお勧めはザクロジュースだね。あとケーキも美味しい。あっちに茶色のドアがあるだろ?あそこは医務室。よくわかんない乾燥した草の匂いがする」


 すると、聞いていたらしい皓然が顔をしかめた。


「変な草の匂いって……。あれはちゃんとした薬草ですよ、授業で習ったじゃないですか」


「『変な草の匂い』とは言ってないよ。『よくわかんない乾燥した草の匂い』って言ったんだ」


「はいはい、そーですか」


 納得行っていなさそうな皓然を不思議に思っていると、「皓然はさ」とレオが耳打ちしてきた。


「医者の卵の姉ちゃんがいるんだ。アエラスで親代わりの姉ちゃん」


「医学部生ってこと?ここ、大学もあるの?」


「いや、大学は無いよ。そういや、こっちの教育制度をまだ教えてなかったな」


 頭をかいたレオは、パウラに断って教育制度について教えてくれた。


「えっと、お前が理解しやすいように別世界の教育制度に照らし合わせるから。その前に、大前提として王宮でやってる教育は全て『魔術師養成課程』の授業。ここ以外の教育機関でやってるのが、お前が思っているような学校、っていう違いがある。ここまではいいか?」


「えーっと、前に皓然も言ってたけど、王宮に上がらないと魔術師にはなれないんだよね?ってことは、王宮でやってる教育が魔術師になるための教育」


「そういうこと。魔術師になるための専門学校だと思えばいいよ」


「なるほど。じゃあ、他の学校では何をしているの?」


「まあ、内容はほとんど同じ。大きな違いは二つ。依頼がない、魔法使いの範疇を越えない、ってこと。共通点は、国語とか社会とか、お前の好きな数学とか、そういう基本的な授業もやってること」


 頭がこんがらがってきた。


 まず、アリスは詳しい魔術師と魔法使いの違いを知らない。魔術師になるのは難しいことだ、ということは前に皓然が教えてくれたから知っている。


「————————アリス、大丈夫ですか?頭の中、いっぱいになってませんか?」


「な、なってる……」


「一気に詰め込みすぎちゃいましたね……。細かい質問は後で受け付けますから、今は簡単に、流れだけ抑えていれば大丈夫ですよ」


「う、うん」


 アリスはレオに「続き、教えて」とお願いした。一度頭を左右に軽く振ってから。なぜか、昔からこれをすると頭がすっきりするような気がするのだ。


「じゃあ、まずは流れだけ。六歳から十二歳までの初等教育に当たるのが魔法使い。十三歳から十八歳までの中等教育に当たるのが魔術師、大学生に当たる十九歳からの教育が上級見習い、ってところかな。区切る年齢は、あっちと一緒。あくまでも、これは上級になる人の流れだけどね。兄ちゃんとか……」


「そうだよ!ラファお兄ちゃん!」


 アリスがずっと気になっていて、しかしなんだか言いにくくて、ずっと腹の中に抱えていた疑問だ。


 ランフォード家三人兄妹の長男、ラファエル・ランフォード。十九歳。アリスはこれまで、ラファエルはアメリカの工科大学に通っているのだと聞かされていた。今思えば不自然なのだが、小さな頃からずっと留学中の兄。みんなからの話を聞くに、恐らくルイスとアンの本当の子供。


 離れて暮らしていたとは言っても、仲が悪いわけではない。むしろ、ラファエルはアリスたちのことを猫かわいがりしてくれる。先月だって、一週間ほど家に帰ってきたラファエルはアリスたちにたくさんのお土産を持ってきてくれたし、色んな所に遊びに連れて行ってくれた。しかも、全部ラファエルのおごりだ。


 両親が魔術師なのなら、きっとラファエルも魔術師なのだろうとは思っていた。だが、誰も彼のことを言わないので、言ってはいけないのかとモヤモヤしていたのだ。


「ラファお兄ちゃんも、魔術師なんだよね?」


「うん。言ってなかったっけ?兄ちゃんは見習いだよ。上級見習い」


「つまり?」


「俺が言うのも何だけど、すごく優秀な魔術師」


「やっぱり!」


 パッと顔を輝かせたアリスは、小躍りしそうになるのを我慢して、代わりに小さく飛び上がって回った。

 何を隠そう、アリスはラファエルのことが大好きなのだ。アンが言っていたが、幼い頃に「大きくなったら、ラファお兄ちゃんと結婚する!」とアリスが言ったばっかりに、ルイスが不貞腐れたこともあったらしい。


「お前、本当に兄ちゃんのこと好きだな」


「もちろん!」


 だって、アリスの一番の理解者だし、面白い。機械系に強いラファエルは、昔から常に何かを解体し、組み立てていた。それを面白がって見ていたアリスは、よくその作業を手伝わせてもらっていた。何年か前は、長期休暇で帰ってきたラファエルと二人で壊れた車を解体したくらいだ。


 そのための作業着も、工具も、全部ラファエルがプレゼントしてくれた。もちろん、この世界にも持ってきている。


「お兄ちゃんだって、好きなくせに」


「まあね」


 どこか誇らしげなレオは、嬉しそうにアリスに笑いかけた。この兄も、よくラファエルと遊んだり、勉強を見てもらったりしていた。さすがに、一緒に車の解体はしなかったけれど。


「噂通り、本当に仲の良い兄妹なんだな」パウラは小さく口笛を吹いた。「予想以上だよ。じゃあ、挨拶が終わったらラファエルの所に行ってみようか。この時期は忙しいみたいだけど、そんなに可愛がっている弟妹が来たんだから、ちょっとくらいは時間を作ってくれるよ」


「本当!?やったぁ!」


 これで、今日の楽しみが出来た。

お読みいただきありがとうございました!

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