62.
〈注意事項〉
※15歳以上推奨作品です。暴力表現等を含みます。
※敬語表現に間違いがあるかもしれません。あまり気にしないでいただけると幸いです。
〈あらすじ〉
ついに魔術師たちの祭典「アゴーナス」が始まった!
1年生であるアリスたちは、エキシビションに参加することになったのだが……。
「今年も、アゴーナスを無事に迎えることが出来たこと、大変嬉しく思います——」
学生魔術師たちはアエラスの謁見の間に集まり、アエラス国王から激励の言葉をもらっていた。
いつもは学年ごとに並んでいるが、今はチームごとに整列している。階級が高いほど国王に近く、階級が低ければドアの近くだ。アリスたちは後ろから数えた方が早そうだ。
「——以上で、挨拶を終わります。みなさんの力が十分に発揮されることを、心より願っております」
国王の挨拶が終われば、いよいよアゴーナスの開始だ。
一年生たちはダリアの放送によって寮棟の七階に集められ、二年生以上の先輩たちはというと、十階の視聴覚室に連れて行かれた。
王宮案内の時にしか視聴覚室に行ったことが無いが、まるでスポーツの観戦席のように椅子が丸く並んでいて、コートがあるべき場所には何か黒い装置が置かれているだけだった気がする。確か、アドワは「あの装置を使って、リアルタイムの映像を見ることができるんだ。音も聞ける」と言っていたような。
実際、アリスたちの周りにはいくつものカメラが飛んでいる。カメラ……、というより、レンズに鳥の羽が生えている謎の物体、というのが一番近い表現だろう。
「では、今年のエキシビションを説明します」
廊下に設置された演台に上がったダリアの後ろに、モニターが現れた。
「エキシビションの内容は『宝探し』。七から九階のどこかに、鍵と宝箱が隠されています。五セットしかありませんから、お早めに。この二つを持って、この場所に戻って来てください。制限時間は二時間。ただし、最低四人、最大六人のチームで行動してください。チームメンバーは問いません。好きなように組んでください。宝箱と鍵は、他のチームから奪い取っても構いません。ただし、再起不能のけがを負わせること、相手を殺すこと、黒魔術を使うことなど、法に触れる行為はすべて禁止とします。そこで、全員にこちらを配ります」
アリスたち一人一人の目の前に、白いイヤホンが現れた。ただ、これはただの連絡用ではないらしかった。
「これであなた方の魔力残量、体力、怪我の具合などをチェックします。大きな怪我をした、魔力不足気味になった、実戦であれば殉職であったとみなした場合など、競技の続行不可能とみなした場合は強制退場とします。公平を保つため、その判断はそれぞれが所属する国の上級魔術師が判断します。もし、宝箱と鍵を見つけても、仲間が強制退場となっていた場合、強制退場となった方にも同等のポイントが入ります。ただし、全員が退場となった場合は、立ち回り、状況判断能力など、自分の役割を果たしていたかを判断し、それに応じて個々人にポイントを。自分たちの部屋、鍵の閉まった部屋への侵入は禁止です。宝箱も鍵も、全員が入れる場所に隠してあります。何か、質問は?」
誰も手を挙げなかったので、エキシビションは開始された。どうやら、チームを作る時間も宝探しの時間に入っているらしい。
それなら——。
「桃子、セレナ、アダン、ユーゴ、俊宇! 私とチーム……」
「当たり前じゃん!」
走り出しながら、アダンはアリスの肩を叩いた。
「ほら、早く! 他より先にお宝ゲットして、ポイントがっぽりもらおうよ!テストの点数が悪くても大丈夫なようにさ!」
「そのためのアゴーナスじゃねぇから!」
ユーゴのツッコミに笑いながら、アリスも走り出した。このメンバーなら、何とかなる気がする。
と、次の瞬間。
俊宇に手を引かれ、アリスの体は進行方向右側によろけた。さっきまでアリスの頭があった場所を、先が吸盤になった弓矢が飛んで行って、前を走っていたネロの魔術師の頭に当たった。アダンたちも、とっさに矢を避けたからだ。
アリスたちが見守る中、ネロの魔術師は戸惑った様子で目の前から消えた。
矢を放ったのは、ガイアの魔術師だった。緑のケープコート、赤い花の刺繡が入った高襟のシャツは、ガイアの制服だ。
「え、なんで!?」
「お前を倒せば目立てるからだよ!」
ユーゴはアリスの前に躍り出ると、剣を抜いて矢継ぎ早に放たれた矢を全て叩き落した。
その隙に、セレナは腰に付けていた鞭を引き抜いて大きく振るった。鞭は確かにガイアの魔術師たちに当たったが、さっきのように消えることはない。痛みに彼らもひるんだらしいが、先生たちが戦闘不能と思うようなダメージは与えられていない、ということだ。
一か八か、アリスが魔術を使おうとした瞬間、セレナの瞳が不思議な光を宿した。
「“私たちの後を追ってくるヤツらを、片付けなさい!”」
その瞬間、ガイアの魔術師たちはアリスたちに背を向けて一斉に他の魔術師たちを攻撃しだした。
その隙に、セレナはアリスの手を取って再び走り出した。
「え、え、何が起こってんの!?」
「私の家系特性! 『調教』って言って、鞭が当たった生き物を操れるの! 鞭が当たった面積によって、効果時間は変わって来るけどね! これで三十秒は稼げるわ!」
「十分だよ! セレナ、かーっちょいー!」
「……トゥータン、前見ろ」
後ろを向いて走るアダンに、俊宇は呆れたように注意をしていた。
その隣で、桃子は懐から人の形に切られた白い紙をいくつも取り出した。それらに桃子が息を吹き付けると、紙人形たちは意思を持っているかのように、あちこちへ飛んで行った。
「人形を飛ばしたから、これで私たちの周りの状況を教えてもらえるよ!」
「さすがだな、斎! とりあえず、どっかに隠れて作戦会議するぞ!」
人形が見守る中、アリスたちは周りを振り切って給湯室に逃げ込んだ。そこで息を整えながら、アリスは友達を見つめた。
みんな、アリスより体力があるし、判断が早い。このままでは、アリスは埋もれて結果を残せないかもしれない。
「まずは、鍵と宝箱のどっちかを見つけないと」
ユーゴは周囲を見回してから、アリスたちを見つめた。
「なんで? どっちも見つけないとダメなんだろ?」
首を傾げたアダンに、桃子は肩をすくめて見せた。
「ダリア先生は、宝箱と鍵のセットを持ってくるように言ってた。つまりだよ、そのどっちかを持っておけば、私たちの生存確率が上がるんだよ。もし、私たちが鍵を持っていたら、絶対に宝箱しかなくて困るチームが出てくるってことでしょ? その時は、その宝箱を持つチームから宝箱をもらって、先生の所に行けばクリア!」
「……問題は、勝てるかどうか」
「お前が弱気でどうするんだよ」
ユーゴはそういうが、俊宇はやはり視線を下げたままだった。
少し張り詰めた空気が漂う中、あることに気が付いてアリスは大きな声をあげた。
「鍵!」
給湯室の壁に、高そうなスプーンが箱に入って飾られていた。
その中に、一本だけ違うものが入っていた。金色で、アエラスの象徴である白鳥の飾りがついているそれは、まさに今、話していたものだった。
「アリス最高!」
セレナは興奮のあまりアリスに抱きつき、鍵を回収した。
「じゃあ、これは誰が持つ?」
「トゥータンにしよう」
桃子の問いに、ユーゴが即答した。
「この中で一番、身体能力が高いし。感覚も一番鋭いしな。……心配だけど」
「えー?」アダンは食器棚に体を預けた。「俺だって、そんなこと言われたら悲しいんだよ? でもまあ、そんなに心配なんだったら、一つ手を打っておく?」
アダンの作戦を聞いて、アリスたちはパッと顔を輝かせた。この作戦なら、鍵を取られる確率は低くなるし、宝箱のありかも分かる。
アリスたちは顔を見合わせ、ニヤリと笑い合った。
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