51.
〈注意事項〉
※15歳以上推奨作品です。
※敬語表現に間違いがあるかもしれません。あまり気にしないでいただけると幸いです。
〈あらすじ〉
無事に初めての依頼を達成することができたアリス。しかし、問題は自分の実力不足……。
そこで、一人で魔術の自主練をしていたら……。
アリスは、自分のメモを見返していた。魔術と魔法に関するメモだ。
魔法というのは、道具を通して魔力を操る方法のこと。これは魔力発現者であれば誰でも出来るらしく、メイドや衛兵、一般の国民のような魔法使いたちは、魔法を使うための杖を持ち歩いている。買い物の時、人攫いの男が振りかざしていたのが、その魔法の杖だ。
一方、魔術というのは道具を使わないで魔力を操ること。杖が無くても、魔術師は魔法陣を作り出し、魔術を扱うことができる。道具を使わない分、難易度は上がるが、威力は魔法の倍以上。
ちなみに、魔術師という名称を使えるのは、国が正式に認めた、階級章を持っている人のことだけだそうだ。魔術を使えても階級章を持っていなければ、その人は魔術師とは認められない。
そして、そんな人たちは魔術師のフリをして詐欺まがいなことや、脅迫をすることが多いらしい。そう言った犯罪行為をした人は闇魔術師と呼ばれ、見つかったら即逮捕されるのだとか。
別世界で「特殊詐欺に注意してください!」と呼び掛けられるように、この世界では「闇魔術師に注意してください!」とよく呼びかけられているらしい。コマーシャルでも「魔術師の派遣依頼は王宮へお手紙で!」なんて国が作ったものが流れてくる。よほど、根の深い問題になっているらしい。
それから、魔術を使う方法。これは、聞く分にはとても簡単だった。魔力の波をキャッチして、自分の名前を名乗って何をしたいのかを言うだけ。
ただ、これが出来たら誰も魔術師を夢に見ることなどしないのだ。
実際にアリスも魔術の練習をしているのだが、成功はたったの十分の一程度。魔力の波をキャッチする、というのがどうにも難しかった。
メアリーが言うには、魔力には波長があるのだという。その波長の違いで、この世界のシステムが出来上がっているらしい。だが、アリスはその魔力を全く感じられないでいた。
そもそも、魔力というのは自然が生み出す生命エネルギーそのもの。もちろん、アリスの体にもそれは宿っている。だが、自然との結びつきが薄い人ほど、魔力を感じることができない上に、別世界は特にそれが顕著なのだという。
言われてみれば、確かにこの世界の科学技術は進歩しているようで、進歩していない。分かりやすい例を出せば、移動手段。別世界では車やバス、飛行機などの機械が主だが、魔術界は飛行虫を始めとした巨大な虫たちや、馬車、門が主な移動手段。これらに機械は一切使われていない。
長らく別世界にいたせいなのか、アリスはとにかく、魔力の流れというものに疎かった。アダンは「風を感じるようなものだよ」なんて言ってたが、全く参考にならなかった。この件に関してはレオもお手上げ状態で、アリスは毎日、中庭に寝転んで魔力を感じようと精神を研ぎすましている。
ダメ元で桃子たちにも聞いた時の回答が、一番アリスの中でしっくり来ている。
「魔力って言うのは生きてるんだよ。生き物って同じ個体はいないでしょ? 個性があって、動きがある。それと同じで、草が持つ魔力と、台風の時の風が持っている魔力って全然違うんだよ。つまり、アリスちゃんも魔力の気持ちになってみれば良いんだよ!」
後半部分はやはりわからなかったが、俊宇がさらに分かりやすい例を出してくれた。
「……風の精霊とか、……水の精霊とか、……そういうヤツ」
それはゲームに良く出てくるから、アリスもすぐピンときた。台風の時は風の精霊が荒ぶっていると考えれば良いわけだ。俊宇も「……それ」と言っていたから、きっとこの解釈で間違っていない。
だが、それでも魔力を掴めないでいるのは、一体なぜなのだろう?
メモをしまい、アリスは中庭でそっと目を閉じた。今日も、魔力を探るとしよう……。
「今日もいた! アリス、お手伝いに来たよ!」
「うわあぁ! ア、アアア、アダン!?」
驚いて勢いよく起き上がったアリスは、さらに驚いた。そこには、桃子、セレナ、ユーゴ、俊宇の四人まで一緒にいたから。
「ど、どうしたの?」
「お前が魔術実技で苦戦してるっていうから、助けに来た」
アリスの隣に座り込み、ユーゴは笑った。
「俺、別世界に行ったことないからよく分かんないけどさ、もしかしたら、お前の力になれるかもしれないじゃん」
「私も!」セレナはユーゴの隣に座った。「私も、何か手伝えるかもしれない。私に答えられることなら、何でも答えるから!」
「……俺と桃子、別世界出身」
「気持ち的には、私らの方がアリスちゃんのこと、分かるもんね」
俊宇と桃子もアリスの正面に座り、最後にアダンがアリスのもう一方の隣に座った。
「ぼく、エルフだから、みんなより魔力と結びつきが深いんだ。君が望むなら、精霊を呼びだしてあげられるよ! 先生たちに怒られるけど。どうする?」
「えっと、精霊は呼ばない方向で」
「了解。じゃあ、それ以外の方法を考えよう!」
みんなが会議を始めたのを見ながら、アリスは胸がいっぱいになった。こんな風に、友達が親身になってくれるのが嬉しくて、泣きそうになる。
「アリスちゃん、どうかした?」
「ううん、何でもない。みんな、ありがとう」
アリスが笑顔でお礼をすると、みんなも笑って返してくれた。
そんなアリスたちを、談話室の窓からラファエルが見下ろしていた。その隣には牡丹と、窓には背を向けている茶髪の青年。
「アリスちゃんの人望ねぇ。あんな風に親身になってくれるお友達が出来て、私も嬉しいわ」
カウンターに両肘をつき、牡丹は嬉しそうに笑った。アリスのことだけでなく、親族である桃子と俊宇の二人も楽しそうなので、嬉しさも倍だ。
隣のラファエルのように、嬉しさのあまり涙を流す、ということにはならないけれど。
「良かったぁ、アリーに友達ができて……」
「お前は、いつも家族のことばかりだな」
チームリーダー、ローガン・ツヴィングリはアイスコーヒーが入ったカップを軽く回した。
「昔から、やれレオだの、やれアリスだの」
「可愛い弟たちだからだよ。本当の兄妹じゃなくてもいいんだ。俺らが兄妹だって思っているんだから、それだけでいいんだよ」
ラファエルのその言葉に、ローガンは鼻を鳴らした。生憎と、ローガンは自分に弟と妹がいると思ったことなどないのだ。ツヴィングリの名を汚す出来損ないたち、とは思っているけれど。
だから、ラファエルと牡丹の気持ちが全く分からない。ローガンにとって大切なことは、父に任された家を守り抜くことだから。
牡丹はそんなチームメイトの男子二人に挟まれて、隠れて小さな息を吐いた。パウラたちには悪いが、ローガンの意思を変えることは諦めている。それに、他人の家庭事情には首を突っ込まないのが、この世界の暗黙のルールだ。
「じゃあ、ラファ。お前がその可愛い妹に魔力とは何か、教えてやればいい」
「邪魔する訳にはいかないだろ。それに、俺が模範解答を教えてやってばかりじゃ、あの子のためにならない。ああやって、友達と試行錯誤するのが、一番効果的だし、記憶にも残りやすい。アリーの世界は、あの子たちのおかげで広がっていくんだなぁ……」
「親かよ」
「それ、私も思った」
「何なんだよ、お前ら」
ラファエルは不服そうだったが、ローガンはちらりと窓の外を見て、出口に向かって歩き出した。
「そろそろ時間だ。行くぞ」
「今日の依頼って、何だっけ」
「ラファってば……」
三人は、周りの人たちに注目されながら談話室を出て行った。
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