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4.

〈注意事項〉


※15歳以上推奨作品です。暴力表現、流血表現、荒い言葉遣い等を含みます。

※敬語表現に間違いがあるかもしれません。あまり気にしないでいただけると幸いです。

レオは真っ白な鉱石で作られた門に向かって歩き出し、アリスはそれに続く。


近づいてみると、それは大理石でできていて、王冠をかぶった白鳥の横顔が掘られていた。だが、門があるのは地上から三メートルほど上で、ゆうゆうと浮いている。


「アエラス王宮行き!降りてきて!」


レオが門に向かって声をかけると、門はゆっくりと二人の前に降りてきて、扉部分に男の顔を作り出した。


「お待たせいたしました。アエラス王宮行きの門でございます。チケットと階級章をご提示ください」


レオはアリスを小突いてチケットを出させると、自分もチケットと、皓然が制服に付けていた金細工の羽の飾りを取り出した。レオのものは、皓然と違って羽の根元に紫がかった緑色の石が使われていた。時々赤色にも見えるから、恐らくはアレキサンドライトだろう。


門はジッと羽を見つめてから「レオ・ランフォード初級魔術師様でございますね」と判断を下した。


「そちらの方も、階級章のご提示をお願いいたします」


「こいつはまだ階級がないんだ。これから王宮に上がるから」そう言いながら、レオは羽を左胸に付けた。「ダリア・クロフォード上級魔術師から許可はいただいてる。妹のアリス・ランフォード」


「かしこまりました。では、アリス・ランフォード様。ご本人様確認のため、いくつか質問をさせていただきます」


「は、はい!」


「家族構成を教えてください」


「りょ、両親と、兄が二人です」


「お父様のお名前をどうぞ」


「育ての父はルイス・ランフォード、……血のつながった父はカイル・ブラックです」


「お好きな食べ物は?」


「え?オ、オムレツです。チーズが一杯入ってるやつ」


「誕生日はいつですか?」


「七月二十八日、です……」


まるで学校入学試験の面接のようだ。


アリスがそう思ったところで、門は初めてニコリと笑って「ご本人様確認が取れました」と告げた。


「それでは、王宮にお繋げ致します。危ないですから、その場から動かないよう、お願いいたします」


そう言って門の顔が浮かんでいた扉部分ごと空気に溶けて消えてしまった。代わりに、枠組みの中に新しい白い空間が浮かんでいる。


夢の中で、ルイスがアリスを連れて通ろうとしていたものと同じだ。そのことに、アリスはやっと気が付いた。


「それでは、どうぞお気をつけて。あなた方の魔力が世界を守りますように」


レオはその言葉を受けてさっさと門をくぐってしまったので、アリスは少しだけ立ちすくんだが、大きく息をのんで覚悟を決めてから門をくぐった。


結論から言えば、ほんの一瞬だった。


一瞬、胃袋の中身をひっくり返されたような感覚がしただけで、不快感を覚えたのは完全に門をくぐり終えた後だった。


あの白い光の先にも、まだ白が続いていた。とはいえ、光の空間が続いている、という訳ではない。大理石でできた大きな広間に立っていたのだ。太い柱には金細工の蔦植物が巻き付き、天井近くで花を咲かせていた。


それから、白い鎧を身に着けた衛兵が武器を片手にあちこちを行き来していた。アリスの斜め後ろにも。どうやら、彼はここでやってきた不審者を退治するべく、立っているらしい。


「何してんだ?行くぞ」


先に進んでいたレオは少しだけ振り返り、アリスに肩をすくめて見せた。


「ま、待ってよ!」


レオの元まで走って行ったアリスは、周りを見回しながら足を動かした。夢の中で見たからなのか、どうも初めて来た気がしないのだ。いや、実際に来るのは初めてではないらしいのだが……。


それにしても、なんて大きな建物だろうか。高い天井には、何か神話めいた絵が描かれている。金髪碧眼の女性が、中心に描かれていて、その周りを囲っているのは同じく金髪碧眼の四人の男の人たちだ。だが、それぞれが別の動物を従え、違った衣を身にまとっていた。


右端の人は、青い衣を身につけて、蛇を左腕に巻き付けている。


その隣は、赤い衣を身に着け、ライオンを引き連れている。


さらにその隣は、緑色の衣を身につけて、熊を連れている。


そして、最後の一人。左端の男性は、白い衣を身に着けて白鳥を肩にとめていた。


「————————この世界の創造主、ユリア様の神話です。興味あります?」


その声にハッとして視線を前に戻すと、肩にクロエを乗せてニコニコと笑っている皓然が立っていた。その隣には、どこか呆れた様子のレオも。


「こんにちは。体調は大丈夫ですか?」


「こ、こんにちは。えっと、おかげさまで。皓然は、ここ大丈夫?怪我?」


出迎えてくれた幼い顔をしたこの魔術師は、頬に大きな絆創膏を貼っていたのだ。しかも、ガーゼ部分には消毒液の様なものがにじんでいる。


「ああ、これ?心配しなくても……」


「お前が魔力を暴走させた時、飛んできたガラスで切ったんだよ」


腕を組み、レオはアリスをジッと見つめた。


「ちょっとでもズレていたら、目にガラスが刺さってた。先に言っておくけど、お前の力は未知数だ。もちろん、強すぎて。この前のことは、まあ、仕方ないっちゃ、仕方ない。けど、お前のその力はこうやって人を傷つける武器にもなるし、身を守る盾にもなる。そのことを忘れんなよ」


「……はい」


もちろん、アリスは自分が魔力を暴走させてしまったことを聞いていた。そのせいで体に負荷がかかり、泥のように眠ってしまっていたことも。


「ごめんなさい、皓然」


「気にしなくて大丈夫ですって!」皓然は慌てたように首を左右に振った。「こればっかりは、どうしようもないんですから。それに、三針しか縫ってないし!」


「三針も縫ったんだ……」


「えーっと、アリス?」


咳払いをした皓然は、うなだれるアリスをジッと見つめた。


「ぼくは気にしてないですよ。魔力の暴走なんてよくあることだし、実際に目に刺さった訳でもないんだし。それにこれ、ほとんど治ってるんですよ。レオが言ってたことも最もですけど、少しずつ、魔力の扱いに慣れていけば良いんですから。だから、気にしないでくださいね」


「……ありがとう」


アリスが薄く微笑みを浮かべると、皓然はまたニコニコの笑顔に戻った。


「よし、この話はこれでおしまい!早速、お二人をダリア先生———————このアエラス王国の魔術師たちを取り仕切っている、上級魔術師の方の所までご案内します」


驚くアリスと違い、レオは思い切り顔をしかめた。


「えー……。行かないとダメ?」


「行かないとダメです」


「何とかなんないかなぁ。っていうかさ、俺は別に行かなくていいんじゃないの?別に初めましてって訳でもないんだしさぁ……」


「そう言うと思って、手を打っておきました」


皓然は「ね?」と後ろを振り返り、柱に向かって笑って見せた。


「レオのこと。簡単に説得できるんですよね、パウラ?」

お読みいただきありがとうございました!

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