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47.

〈注意事項〉


※15歳以上推奨作品です。

※敬語表現に間違いがあるかもしれません。あまり気にしないでいただけると幸いです。


〈あらすじ〉

 無事、ルイーズたちが罰せられることになり、アリスたちに平穏が訪れた。

 そんなアリスの次なる試練は、ついに「依頼」を受けることで……?

 セレナはダリアと一緒に借り部屋に向かい、残された面々もそれぞれの帰路についた。


 部屋に帰ってから、アリスは真っ先に皓然の元へ向かった。


「——料理、ですか?」


「そう! えっとね、セレナが今日から一人部屋なんだけど、しばらくちゃんとご飯も食べれてなくて、寝れてなかったみたいで、それで、何か元気になれそうなご飯は無いかなって。ほら、皓然のご飯ってすごくおいしいから、セレナも食べられると思うんだよ!」


「それ、ぼくも賛成! ねえ、皓然お願い! セレナ、本当に体が弱ってるみたいなんだ」


 二人に迫られた皓然は、若干引いていたが快諾してくれた。


「——あの、本当に私がここにいても良いんでしょうか……」


「いいよ、いいよ! みんなも良いって言ってくれたんだし!」


 ビクビクしながら部屋にやってきたセレナは、あちこちを見回していた。アリスとアダンがセレナを夕食に誘ったのでやってきたのだが、緊張しているらしい。


「あと、セレナ。そんな敬語じゃなくていいんだよ?」


 セレナを椅子に座らせ、アリスは笑って見せた。


「クラスメイトじゃん。お友達になれたら嬉しいんだけど、セレナは嫌?」


「そ、そういう訳じゃなくて……!」


 セレナはうつむき、小さな声で呟いた。


「私、あなたに怪我させちゃったから……」


「でも、セレナは反省しているし、謝ってくれたじゃん」


 セレナの隣に座り、アリスは水の入ったコップを彼女に渡した。


「ルイーズみたいに反省してなくて、謝りもしないなら話は別。でも、セレナは違う。理由なんて、それだけで十分。私はもう怒ってないし、セレナを恨んでもいないよ」


「ありがとう……」


 セレナが笑ってくれたのでアリスも笑い返すと、セレナを挟んだ向こうから「ねえねえ!」とアダンが割って入ってきた。


「セレナさ、しばらくお休みなんでしょ? だったら、ぼくと一緒に今度お茶しようよ! 中庭のカフェで提供されてるパンケーキがフワフワで美味しいんだよ! 君の髪綺麗だし、お日様の下で見たらもっと綺麗に見えると思うんだ」


「アダン、邪魔しないでよ! っていうか、セレナは安静にしてないとダメなのに!」


「はいはい、喧嘩はそこまで」


 向かいに座るレオが間に入ったところで、皓然が美味しそうな匂いを漂わせながらやってきた。


「今更なんですけど、コルデーロさん、アレルギーとかは無いですか?」


「な、無いです」


「それは良かった。はい、召し上がれ」


 皓然がセレナの前に出したのは、豆乳を使ったリゾットだった。野菜が細かく刻まれていて、味付けも最低限にしかされていないらしい。代わりに、テーブルの上には何種類もの調味料が置かれた。


「急に味の濃いものだとキツイかと思って。調味料を使って、好きな味にしてくださいね。お代わりもありますから」


 美味しそうな料理を目の前に、セレナは瞳を輝かせて何度もうなずいた。皓然は薄味にしたというが、目の前の料理からは食欲を誘う香りがしてくる。久しぶりに、セレナの体が食べ物を欲しがっていた。


 みんなでテーブルに着いて食事が始まると、リゾットは瞬く間にセレナの腹に納まった。さらに、お代わりまで。恥ずかしそうに「お代わりいただいても、良いでしょうか」と聞くセレナに、皓然は笑顔でお代わりをよそってやった。


「——久しぶりに、ちゃんとご飯を食べたわ……」


 食後の紅茶を飲み、セレナは小さく息を吐いた。実は、こんな風に安心してくつろげるのも久しぶりだ。


「今まではどうしてたの?」


「売店の割引されたお菓子とか……。食堂もただじゃないから」


「え、そうなの!?」


 てっきり無料だと思っていたアリスが素っ頓狂な声をあげると、セレナはおかしそうにクスクス笑った。今日の昼間より、大分表情が出るようになった。


「アドワ先生、最初に説明してたじゃない」


「そう言えば……、そう、だったような?」


「アリスって、大事な話を全く聞いてないよねー!」


「それはアダンも一緒でしょ? 毎日、授業中寝てるじゃん! ——っていうか、食堂もお金がかかってたんだ」


「そりゃそうよ」


「でも、別に食費を削る必要はなかったんじゃない?」


 アリスは何気なく言った言葉だったが、セレナは寂しそうに笑った。


「私の家、そこまで裕福じゃないの。遊牧民族で、両親も立派な会社に勤めているわけでもないから……。弟たちもいるから、あまり家計をひっ迫させるわけにはね。制服代とかも、家畜を四匹ほど潰したみたい」


「そうだったんだ……。あ、弟くんいるの?」


「うん。すぐ下の弟と、五つ下の妹」


「へぇー! いいなぁ、私も下の姉弟が欲しかったなぁ。私、末っ子だからさぁ」


「知ってる。有名よ、ランフォード家の三兄妹って。でも、私は逆にお兄ちゃんが欲しかったかな」


「えーっ! お兄ちゃんはやめてた方がいいよ! 歳が離れてたら可愛がってくれるけどね」


 アリスの発言にレオが立ちあがったが、みんな笑っていて誰もレオを慰めてはくれなかった。


 それから数週間、セレナは毎日のようにアリスたちの部屋で夕飯だけ食べていくようになった。休みの日は桃子たちも誘って、中庭で遊んだり、みんなで王宮探検をしたりして過ごした。


 ルイーズたちは、二か月の活動自粛と奉仕活動の罰がくだり、授業に参加することも無いのでクラスは平和そのものだった。


 そして魔術師になって一か月が経つ頃、セレナは魔術師として再スタートを切ることになった。ヒュー・ベーコンのチームメイトとして。


「うちには優秀なクレアがいるからな! コルデーロ嬢の体調管理だってバッチリだ!」


 ヒューのチーム、つまり、ユーゴと俊宇のチームはクレアも入れて四人。


 まだ二人分の空きがあったこと、パウラを始めとする三年生の先輩たちが紹介してくれたのもあって、セレナはこのチームに入り直すことになった。何でも、ヒュー・ベーコンという人物は権力を振りかざすこともないし、正義感が強くて面倒見も良いらしかった。


 アリスはその情報に半信半疑でいたが、チームメイトであるユーゴと俊宇の二人、それからクレアがいることもあって、セレナの再スタートを喜んだ。


 さらに、もう一つ。前回測った魔力レベルと家系特性の結果が通達された。


 一人一通、茶色の封筒を渡され、「部屋で開けるように」とアドワに指示された。


 だから、アリスとアダンは部屋に戻り、全員が揃ってから封筒を開けた。


 中に入っていたのは、たった一枚の紙。そこに魔力レベルと家系特性が書かれていて、それぞれの測定者としてアドワとジャーダの名前が書かれているだけだった。


 アリスの紙には、魔力レベルは測定不能、家系特性は不明と、何とも困ってしまう結果が書かれていた。


「魔力レベル『測定不能』って……」


 思わずアリスを見つめてから、先輩たちは家系特性が不明と書かれていることに首を傾げた。


「『不明』ってねぇ……?」


 頬杖をついてパウラが眉をひそめたから、アリスはジャーダに言われたことをそのまま話した。つまり、アリスの中には色々な謎の魔術があり、一番近い回答は実父カイルの特性である『自己成就』だ、ということを。


「うーん……。じゃあ、アリスは表向き『自己成就』ってことにしておこうか」


 まだまだ渋い顔のパウラに代わり、皓然がアリスを見つめた。


「アリス。家系特性は一人一個なんです。だから、君がジャーダ先生に言われた魔術がありすぎる、というのはおかしい訳です」


「うん。そこまでは理解してる」


「よかった。問題なのは、ユリア様と同じかもしれないってことです。ユリア様に使えない魔術はありません。もし、君がユリア様と同じなのなら、フォティア王国が黙っていないでしょう。だから、このことは誰にも話してはダメです。アダンもですよ」


 それに頷いてから、今度はアリスが首を傾げた。


「フォティア王国が黙ってないって、どういうこと?」


「結果から言うと、君を無理やり王国に連れ帰ってお姫様にし、無理やりジャン王子と結婚させられます」


「なんで!?」


「フォティアは特に血筋を重要視する傾向にあるんですよ。だから、近親相関は合法。君とジャン王子がくっつけば、絶対に金髪碧眼と『百発百中』を持つ子供が……、つまり、跡取りが出来る。それがフォティア国民、ほとんどの願いと言っても過言ではないと思います」


「絶対に嫌!」


 アリスが真っ青な顔でそういうと、レオは「これはまだマシな方」とため息をついた。


「最悪の場合、パメラ王妃に殺されて終わり。パメラ王妃はとにかく自分の息子に王位を継がせたいみたいなんだ。だから、俺らはとっても邪魔。特に、俺と父さんはね。それもこれも、アリスの家系特性の情報が洩れなきゃ起こらないよ」


 レオの言葉に、アリスたちは青い顔で何度もうなずいた。


 そんなある日の、魔術実技の授業が終わってからのことだった。


「はい、これが二人の手帳。無くさないように持っててね」


 そう言って、メアリーはアリスとアダンの二人に横長の手帳を渡してきた。


 白い手帳を開いて一ページ目には、アリスの顔写真と名前、階級、学年などの基礎情報が書かれていて、顔写真の下には所持ポイントが書かれていた。アリスは十ポイント、アダンはゼロポイントだ。


「アリスの十ポイントは、この前のセレナの一件でもらったポイント。テストもアゴーナスもまだだから、この時期の一年生のほとんどはゼロポイントなのよ」


「あごーなす?」


 聞いたことのない単語だ。


 するとレオが「魔術師の大会だよ」と説明してくれた。この兄は、アリスが知らないことがあるとすぐ解説してくれるのだからありがたい。


「人間の四つの国の学生魔術師同士で競い合うんだ。別世界だとオリンピックに近いかな。世界中が注目する大きな大会だから、アゴーナス開催中は泥棒でさえ仕事を休むって言われてる。アゴーナスは二日かけてやるんだけど、競技内容は開催国が決めることになってる。ちなみに、今年の開催国はアエラス」


「へえ」


「言っておくけど、お前も出るんだからな?」


 腕を組み、レオはアリスをジッと見つめた。


「ポイントがかかってるから、みんな死に物狂いで来るぞ。ちなみに、競技内容にはなぜか毎年ゲリラ戦が入ってる。森とかで魔術師同士で戦うんだからな?」


「へっ」


 固まったアリスと違い、アダンは興奮しているようだ。「目指せ優勝!」なんて言って、両手を高く挙げている。


「で、でも、まだ団体戦でみんなと一緒なんだったら……」


「個人戦もあるよ」


 パウラのその言葉に、アリスに一瞬のめまいが襲い掛かってきた。


「で、でも、今年も個人戦があるかはまだ分かりませんから……!」


 皓然の言葉に立ち直ったアリスは、メアリーと向き直った。


「それじゃあ、そのアゴーナスでの結果がポイントに直結するってことですよね?」


「まあ、そうね。一度に大量のポイントを獲得するチャンスではあるかな。筆記テストと同じくらい大事ね」


 後半部分にアリスとアダンが絶望していると、パウラがそれを後押しする一言を放った。


「先生。手帳が来たってことは、依頼ですか?」


「うん、そう。早速で悪いんだけど、明日行ってきてくれる?」


 笑顔のメアリーは、白い封筒をパウラに手渡した。


「うちには新人が二人いるから、軽いのにしておいたわよ」


「ありがとうございます」


 部屋に帰ってからペーパーナイフで中身を取り出したパウラは、みんなに依頼内容を教えてくれた。どうやら、メアリーに渡されたのは依頼書だったらしい。


「珍現象解決依頼だ。一癖ありそうだけどね」


「先生、軽いのにしたって言ってなかったっけ」


 真っ白なアリスを一瞥(いちべつ)してから、レオはパウラに続きを促した。


「ここ一か月ほど、謎の泣き声に悩まされているんだって。でも、その声の主は謎で、周りにはその泣き声が聞こえないらしい。な、一癖ありそうだろ?」


「そうですね」皓然は大きくうなずいた。「それ、ほぼ確実にバンシーでしょうから」


「ばんしー?」


「ぼく知ってるよ!」アダンが手をあげた。「死期が近い人にだけ泣き声が聞こえるんだよね? 確か、おばあちゃんっぽい見た目をした妖精!」


「じゃあ、依頼してくれた人が危ないじゃん!」


「だから一癖あるんだって」


 パウラは肩をすくめて見せた。


「ボクらが今回するべきは、そのバンシーを見つけて依頼人の死ぬ原因を突き止め、それを阻止すること。病気で死ぬのなら病院に行ってもらわないとだし、災害が問題なら避難してもらわないと。老衰だったら、どうすることもできないけど」


「回避できることは、回避するに越したことはないですもんね」


「そういうこと。そんな訳で、二人に注意。この依頼内容はボクらだけの秘密だ。桃子たちにも言ってはいけないよ。遊びに誘われたら『依頼があるからごめんね』くらいは言ってもいいけど、自分から言ったらダメだ」


 新人たちの返事を聞いて、パウラは満足そうにうなずいた。


「さあ、今から忙しくなるぞ! ないとは思うけど、念のため、戦う準備もしておかないとね。皓然、アリスたちを連れて備品調達に向かってくれ。レオは全員分の外出届をボクと一緒に作るぞ。全員が戻ってきたら作戦会議だ!」


 魔術実技でただでさえ疲れているのに、アリスたちは体に鞭を打って明日の依頼に備えた。

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