46.
〈注意事項〉
※15歳以上推奨作品です。
※敬語表現に間違いがあるかもしれません。あまり気にしないでいただけると幸いです。
〈あらすじ〉
アリスたちは終に、先生にルイーズから悪質ないたずらをされていたことを明かす。しかし、セレナが全ての罪を押し付けられてしまいそうで……。
アリスはまず、ダリアを連れてきてくれたことのお礼をして、桃子と一緒に歩き出した。今度こそ、教室へ戻るために。
「私には、セレナちゃんがあんな酷いことをする子とは思えないんだよなぁ」
そんなことを言いながら、桃子はしきりに首をかしげていた。
「推薦を貰えただけでも誇れることなのに。推薦をもらえた時点で順位何て気にする必要ないと思うんだよねぇ……。そういえば、ずっと気になってたんだよね。あの子、ルイーズちゃんたちと同じチームなの。なのにね、部屋に全く帰ってないみたいなんだよね。他の子たちは部屋に帰るのに、あの子はずーっと図書館にいるの。しかも、荷物が入ってそうな鞄を持ったままだよ」
「そうなの?」
「そうそう。まあ、ニャットくんたちが教えてくれたことなんだけどさ。それで、気になって夜に図書館覗いてみたら、本当にいたの! でも、声かけたら何も言わずに逃げちゃって。いくら王宮とはいえ、一人で部屋の外にいるのは危ないのに」
「……ふーん」
どうやら、パウラたちが思っていた以上にセレナは問題を抱えていそうだ。
その日、授業に移ることは無かった。授業は全て自習に変わり、廊下を先生たちが忙しそうに走り回っていた。
お昼休憩になり、桃子と昼食を取っていたらパウラとニャットがやってきた。
「相席してもいいかい?」
「もちろん」
同じ席に着いて、それぞれ昼食を食べ始めたリーダーたちだったが、何も言ってこなかった。てっきり、アリスはさっきの事件について言われるのだと思っていたのに。
結局、そのことを話さずにお昼を食べ終えてしまった。
魔術師養成課程の授業は午前中にしか行われないので、お昼が過ぎればもう放課後だ。その放課後の時間を使って魔術実技の授業をしたり、依頼を受けたりするカリキュラムなのだが、アリスも桃子も、そんな予定は聞いていない。
二人は、このリーダーたちがやってきた理由を考えてドキドキしていた。
「——本題に入ろうか。二人ともソワソワしているし」
ニャットは「ね、パウラ」と隣のクラスメイトに笑いかけた。
「そうだね。——早速だけど、さっきはお疲れ様。桃子、アリスを守ってくれてどうもありがとう」
「あ、どういたしまして……?」
早速過ぎて軽く混乱していた桃子は、ニャットに「どういうこと?」と助けを求めた。
「その、この話をしに来たんだろうなーって思ってたけどさ。でも、どうしてニャットくんたちがこのことを知っているの?」
「そりゃあ、授業中に呼び出されたからに決まってるじゃない」
ニャットはとんでもないことを笑顔でさらりと言ってのけた。
「授業中にリーダーだけが呼びだされるなんて、よっぽどの事だよ。それで、アドワ先生に何があったのか教えてもらったんだ。おめでとう、二人とも。十ポイント貰えるって」
驚きの話に、アリスと桃子は顔を見合わせた。てっきり、出来事を詳しく話せと言われると思っていたのに、まさかポイントを貰える話だとは思っていなかった。
怒られることは無いだろうとは、思っていたけれど。
「えっと……。じゃあ、どうしてパウラたちはアドワ先生に呼び出されたの?」
「謝罪とお褒めの言葉をもらうためさ」
コーヒーに口をつけ、パウラは微笑んだ。
「ルイーズたちに怪我させられていたことに気付いていなかったことの謝罪。それから、証拠写真やボイスレコーダーを隠し持っていたこと、すぐに上級に報告してくれたことだけど。君たちがしたことは、全て重要なことだよ。魔術師として、とても重要なことだ。アリスはボクらが指示してたのもあったけど、桃子。君がダリア先生を呼んでいなかったら、もっと酷いことになっていたかもしれない。それを止めてくれたのは君だ。それに、保護もできたしね」
「保護?」
アリスたちは首をかしげてから、同時に「あ!」と声をあげた。
「もしかして、セレナのこと!?」
「正解。あの子、ルイーズたちに指示されてアリスに嫌がらせさせられてたみたいなんだ。それに、部屋に入れてもらえなくてずっと図書館に寝泊まりしてたんだって。危うく、優秀な魔術師が一人いなくなってしまう所だったよ」
パウラはそういうが、アリスには引っかかることがあった。
セレナは、ダリアに「全て自分がしたことだ」と証言していた。念押しされてもその証言を変えることは無かった。セレナが自分の境遇を素直に話すとは思えない。
それに気づいたのか、ニャットは「まあ、まずは座って」と肩をすくめた。無意識のうちに、アリスは立ちあがって体を乗り出していたからだ。
アリスが椅子に座り直してから、ニャットは問いに答えてくれた。
「尋問室の壁は『真実の鏡』で出来ているんだよ」
「えーっと……?」
「人の気持ちを映し出す鏡。王宮案内の時に説明されたよ」
桃子に見つめられ、咳払いをしたアリスは「そ、そうだったね」と誤魔化してニャットに話の続きをお願いした。
「ダリア先生が話を聞いている間、君たちが考えていたことは全て外にいた先生たちが聞いていたんだよ。それで、セレナも意地悪されていたことが分かったってわけ。ついでに、ルイーズたちの余罪もね。まあ、身分が身分だから一発でクビにはならないと思う。でも、セレナは脅迫されてたから、罰は軽くなるよ。チームを変えて、しばらくの間は活動自粛。本音は、休ませてあげたいんだと思うよ」
「で、アリスに質問だ」
コーヒーカップを手に、パウラはアリスをジッと見つめた。
「セレナのこと、どう思ってる?」
「どうって?」
「簡単に言えば、恨んでいるか? ってこと」
「それは……」
実行犯はセレナ。でも、彼女はルイーズたちに指示されていて、部屋にも入れていなかった。身分制度の強いこの世界で、セレナはルイーズたちに歯向かえなかったのだろう。
そういう事を考えると……。
「——全然、怒ってないよ。そんなことより、パウラ。セレナのこと助けられないかな。次のチームが決まるまで、泊めさせてあげられないかな」
「出来なくもないけど、セレナに罰とか与えなくていいのか?」
「いいよ、そんなの。むしろ、どうしてセレナが罰を受けないといけないの? どうにかして、セレナが罰を受けないで済む方法はないのかな」
「——だそうです、ダリア先生」
パウラの言葉に驚いていると、アリスたちの背後でダリアが立ちあがった。いつの間にか後ろにいたらしい。
それから、小さくなっているセレナも。
「セレナ・リラ・コルデーロ。今の話を聞いていましたね? あなたは当面の間は活動自粛。それが罰です。まずは体力を回復させなさい」
「はい……」
涙を流すセレナをしばらく見つめてから、桃子が「どういうこと!?」と前髪をかき上げながら大きな声をあげた。
「どうもこうも、セレナの罰はアリス次第だったってこと」
なんてことないようにニャットは言ってのけた。
「セレナの立場を考えて、王宮からの罰は活動自粛だけって決まったんだ。でも、被害者はアリスだから。アリスが望むなら、その罰をセレナに課そうってなってたわけ」
呆然としていると、セレナがアリスの元へやってきた。
「ランフォードさん。今までごめんなさい」
「えっと、まずはアリスでいいよ」
アリスも立ち上がり、涙ぐむセレナと向き合った。
酷い顔をしていた。真っ黒なクマに、艶を失った髪、こけた頬、青白い顔。暗い顔をしているとは思っていたが、よく見ていなかったから、ここまで酷いとは思っていなかった。
「それに、怒ってないよ。今まで辛かったよね。でも、もう大丈夫だよ」
アリスのその言葉が止めを刺したようで、セレナはその場に泣き崩れてしまった。慌ててアリスと桃子がセレナを慰めようとするのだが、セレナは泣いてばかりだ。
そこにやってきたのが、アダン、ユーゴ、俊宇の男子三人だった。三人も驚いていたが、泣きすぎてセレナが過呼吸気味になっているのを見ると、水を持ってきたり、ティッシュを持ってきてくれたりして、手伝ってくれた。
ダリアは床に膝をついて、やっと落ち着いたセレナに視線を合わせた。まだ頬に残っていた涙を拭ってやりながら「よく聞きなさい」と、静かに語り掛けた。
「いくらアリス・ランフォードが良いと言っていても、彼女と同じ部屋にはできません。次のチームが決まるまでの間、あなたは空いている使用人の部屋を使いなさい。活動自粛期間は、あなたの体調が戻るまでです。まずはちゃんと食べて、寝て、体力を回復させましょう」
「はい……。ありがとうございます」
「それは、彼女に言いなさい」
「ありがとう。……アリス」
アリスはセレナに優しく微笑んで見せた。
「どういたしまして。いつでも、遊びに来ていいからね」
「私の部屋にも遊びに来ていいよ! あ、私は斎桃子。ちゃんと挨拶するの、初めてだねぇ」
桃子も微笑むと、初めてセレナは笑ってくれた。
セレナはダリアと一緒に借り部屋に向かい、残された面々もそれぞれの帰路についた。
お読みいただきありがとうございました!




