44.
〈注意事項〉
※15歳以上推奨作品です。
※敬語表現に間違いがあるかもしれません。あまり気にしないでいただけると幸いです。
〈あらすじ〉
初めての魔術実技の授業を受けたアリスは、慣れない環境と相まって疲れ切っていた。
そんなアリスを待っていたのは、また新しいテストで……。
二連休を挟んでも疲れがスッキリ取れることはなく、むしろ筋肉痛が酷いアリスは週初めから疲れ切っていた。
それなのに、教室に行けばルイーズがいる。いつの間にか、この意地悪令嬢は貴族の子供たちとセレナを自分の取り巻きにしていて、先生も気づかないような悪戯をアリスに仕掛けてくる。クラスメイトたちも、最初はアリスが珍しかったらしいが、次第にその熱も冷めて行った。それはそれで、アリスはゆっくりできるからほっとした。
問題は何より、授業の内容についていけないことと、ルイーズたちのことだった。
それでも、アリスはめげずにルイーズたちにされた悪戯の証拠を一つずつ集めては、チームメイトたちと共有していた。
だが、おかげで一つの仮定にたどり着くことができた。今日の授業で、それが確証になるのか、また初めからやり直しになるのかが分かる。
「はいはい、静かに! 念のため、もう一度説明するから!」
アドワは手を叩き、ざわめく一年生たちの前に立った。
「今から、魔力レベルのテストと、家系特性の見極めテストをするよ。方法は簡単。まず、全員にこの瓶を配る」
そう言ってアドワが取り出したのは、蛍光ピンク色の液体だった。ドロッとしているそれは、日の光を浴びてキラキラと輝いた。
「これは、魔力試験薬。みんなの魔力を最大限まで引き出してくれる劇薬——を、薄めたものだ。魔力というのは、ピンチの時ほど暴走率が高まるから、それに似た状況を作ってくれる。自分の順番が来たら、そこの魔力暴走除去室に入って、指示されたらこの薬を飲む。指示無しで飲むのは絶対にダメだからね。魔力レベルを測り終わったら、その先の部屋に進んで、ジャーダ先生の所へ。ジャーダ先生に家系特性を見極めていただく。終わった人から教室に戻って自習。何か質問は?」
誰も手をあげなかったので、そのまま魔力レベルのテストに移った。
魔力暴走除去室、通称『除去室』はその名の通り、暴走した魔力の除去に特化した部屋だ。構造まではアリスも知らないが、魔力を暴走させた人を連れて行く部屋であることは知っている。時々、静電気をバチバチ鳴らす人が連れて行かれるのを見かけるから。
だが、実際に入るのはこれが初めてだ。
比較的、早い段階で呼ばれたアリスは小瓶を持って除去室に入った。
第一印象は、無機質な部屋だ。コンクリートでできた大きな部屋で、上の方に分厚い窓ガラスが貼られている。その向こうには複数人の先生たちがいて、モニターとにらめっこしているようだった。
『アリス。左の方に機械があるでしょ』
スピーカーから聞こえてきたアドワの声にうなずき、アリスは機械に近寄った。何やら、心電図のような機械で、チューブが何本も通っている。
『リストバンドを手首に付けて。……そうそう。それで心拍数や魔力レベルを測るからね。取れないようにちゃんと付けて』
リストバンドに左腕を通し、ゴムでできたベルトもつけて固くリストバンドを固定すると、やっと試験薬を飲むように指示された。
『大丈夫。暴走した時は私たちが止めるから、一気に飲み干して』
アドワの言葉にうなずき、アリスは一気にピンの中身を飲み干そうとして、……吐き出した。あまりにも苦かったのと、口に含んだだけで口内が火傷でもしたかのように痛みが走ったからだ。
正直、全く飲めていない。それなのに、アリスの周りでは静電気が発生し始めた。それも、謁見式の時とは比べ物にならないほどの静電気だ。
あちこちで電気が弾け、コンクリートの部屋に焼け焦げた跡を付けていく。心電図のような機械も最初は危険を知らせる音が鳴っていたのに、いつの間にか画面が真っ暗になってしまっていた。
だが、その静電気もどんどんしぼんでいき、最後にはアリスの周りでだけバチバチ音を立てていた。
魔力は収まったが、アリスは肩で息をしながら床に座り込んでいた。自分の中から強い何かが無理やり外に押し出されていくような感覚だった。それを抑えようとしても抑えられなくて、でも、気が付いたら外に出ようとしていたものが奥に閉じ込められた。
『アリス、大丈夫か!?』
慌てた様子のアドワの声に、アリスは小さくうなずいた。まだ、体の中で何かが暴れまわっているのを感じる。
『立てるか? ……よし。それじゃあ、そのモニターの下に引き出しが付いているから、上から二段目、右の引き出しを開けて。中に入っている鉄を一つ持って。……よし。それじゃあ、リストバンドを外してもいいよ』
リストバンドを外したアリスは、鉄の塊を持ってよろよろと立ち上がった。さっきまで自分の中で暴れていたものが、急に無くなった。代わりに、アリスはフラフラで、視界が軽く回っているのを感じていた。
それでも何とか部屋の外に出ると、いつの間にかやってきていたアドワに肩を貸してもらった。クラスメイト達が見守る中、アリスは椅子に座らせられ、冷たい水で何度もうがいをさせられた。
「アリス、鉄をこちらに」
「はい」
アリスがアドワに鉄を渡しても、もう静電気が起こることは無かった。
「うん、魔力は落ち着いたみたいだね。それじゃあ、次。ジャーダ先生の所に行っておいで」
立ち上がった時、アリスはもうフラフラしていなかった。
——結局、あの鉄は何だったんだろう……。
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