30.
〈注意事項〉
※15歳以上推奨作品です。
※敬語表現に間違いがあるかもしれません。あまり気にしないでいただけると幸いです。
〈あらすじ〉
お使い最後の問題、「困っている人を助ける」を達成するために行動していたアリスたち。しかし、困っていた人は人さらいだった! 実行犯は桃子と俊宇が捕まえ、レオとユーゴがもう一人の犯人を捕まえてくれたのだが……。
桃子と俊宇に解放してもらったアリスは、駆け付けた警備隊に、人さらいの男を預けてから外に出た。
街は、さっきとは違ったざわめきが支配していた。緊張感が走っていて、あちこちに警備隊員が立ち、リポーターたちが状況をカメラマンに説明している。
その緊張感の正体は、一つ向こうの通りから聞こえてきた銃声だった。魔物が闊歩する街の外ならともかく、街中で銃声が響くことなど、この世界の人々にとってもあり得ないことだからだ。
「なんだか、騒がしいね」
フラフラと歩くアリスを支えながら、桃子は眉をひそめた。周りの人々の噂話を聞いて、なおさら眉間にしわを寄せた。
「俊宇、絶対に撃ったの魔術師だよね? どこのチームが応援に来てくれたの?」
「……分からない。……でも、俺ら三チームの中で銃を扱うのはランフォード先輩だけ」
「あー……。じゃあ然兄たちが来てくれたのかぁ」
桃子が小さく体を震わせた瞬間、「大正解」と後ろから知った声が聞こえてきた。
「……ツ、ツヴィングリ先輩。……黄先輩」
俊宇まで体を震わせながら、突如後ろに現れたパウラと皓然の二人を見つめた。
相当、腹を立てていそうな先輩二人を。
だが、二人が怒っているのはアリスたちではなく、レオらしかった。皓然は「こんな街中で発砲するなんて……」とブツブツぼやいている。
「アリス」
パウラにそっと抱き寄せられて、アリスは大きく目を見開いた。
「怖かったな。でも、もう大丈夫だから」
そう言われた瞬間、涙が溢れて止まらなくなってしまった。
やっと、自分の中で渦巻いていた恐怖と、そこから解放された安心感を認められた気がした。
迎えに来てくれた馬車に乗り込み、やっと泣き止んだアリスにパウラが今の状況を説明してくれた。
曰く、アリス以外の三人は最初からロビンを怪しんでいたのだという。というのも、話しに出てきたカミーユという魔術師は、急に姿を消したので王宮の中では大騒ぎだったらしい。混乱を招くので、王宮外には一切その情報を出していなかった。それなのにロビンがその名前を出したので、「この人は何かを知っている、もしくは関係がある」と踏んだらしい。
そこで、ユーゴが王宮にいたヒューたちにこのことを連絡。先輩たちが合流するまでの間、ロビンのことを見張るように言われていたらしい。二手に分かれて行動していた間も、男子二人はカミーユ探しではなく、アリスたちの後を尾行していたらしい。
しかし、ロビンにうまいこと巻かれてしまい、焦っていたところ桃子から電話がかかってくる。合流できると思いきや、アリスが連れ去られ……。ということらしい。
「でも、なんで然兄たちが?」
桃子が首をかしげると、皓然は「連れ去られたのがアリスだったからですよ」と肩をすくめた。
「今はうちのチームメイトですから。助けに来るのは当たり前でしょう? 何より、レオの大事な妹さんが連れ去られたんです、いの一番に手を挙げましたよ」
「とはいえ、街中での発砲はやりすぎだな。こりゃ報告書案件だ」
大きなため息をついたパウラだったが、アリスの頭を撫でる手はとても優しかった。
王宮に帰ってきて、やっとアリスたちはレオとユーゴの二人と合流できた。
先に帰ってきていたらしいレオは、馬車からアリスが降りてきたのを見て泣きそうな顔をしていた。
しかし、そんなレオがアリスの元へ来る前に、アルがアリスに飛びかかった。勢いと重さにアリスはしりもちをついてしまったが、アルなりに心配してくれていたらしい。鬣が顔に掛かってくすぐったかったものの、アリスはアルのことを抱きしめてやった。
「アル、そろそろ離れてやれって」
レオが震える声でアリスを開放してやった時だった。
「レオ・ランフォード」
冷たいその声に、一同はビクッと肩を跳ね上がらせた。特に、名前を呼ばれたレオは顔を真っ青にして、ゆっくりと首を回した。
「ダ、ダリア先生……」
「あなた、今すぐ私の部屋に来なさい。パウラ・ツヴィングリ、あなたもです。リーダーでしょう」
名指しされた二人は素直に返事して、ダリアに連れられて行ってしまった。
「皓然、お兄ちゃんたち怒られるの?」
アリスの質問に、皓然は罰が悪そうに小さくうなずいた。
「パウラも言っていた通り、やっぱ街中での発砲はまずいというか……。レオだから出来た事でもあるし、無事に犯人は逮捕したんですけど、やっぱり世間の目が、ね? アリスだって、いつも通り生活していたのに、急に銃声が聞こえてきたらビックリするでしょう? 魔術師は目立つから、なおさらアレは許されないというか……」
「お、俺も行ってきます!」
ユーゴは何かを決心したかのように顔を上げた。
「俺、あの場にいたのにランフォード先輩を止めなかったから……!」
「いえ、ユーゴくんは何も悪いことをしていません。君はあくまで、レオに犯人の場所を教えただけ。レオのことだから、犯人が出てきた瞬間に事前説明もなしに撃ったんでしょう」
言葉を詰まらせたユーゴを見て、皓然は自分の予想が当たっていたと悟ったらしい。大きなため息をついた。
「なにより、君はまだ魔術師じゃない。まあ、あとで軽い注意は受けるでしょうが、自分から地獄へ行く必要はありませんよ。むしろ、怒られるとしたらぼくの方ですね。レオの行動を予想していたのに、事前に注意しておかなかったから……」
もう一度ため息をついた皓然は、クロエを自分の肩にとめながら「医務室に行きましょうか」と後輩たちを見つめた。
「念のため、怪我とかないか診てもらいましょう。ベーコンたちも、依頼が片付いたらすぐに来るはずです」
その言葉にうなずいて再び歩き出したアリスだったが、そっと右手を握られたから驚いた。
「急にごめんね」
アリスの手を握る桃子は、そっと耳打ちしてきた。
「私もね、怖かったんだ。だから、しばらく手繋いでよう?」
そういう桃子の手も冷たくて、小さく震えていた。
助けに来てくれたくらいだし、桃子は全く平気なのだと勝手に思い込んでいた。その後も、平然としていたのに……。
「……うん」
アリスは桃子に薄く笑って見せた。
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