22.
〈注意事項〉
※15歳以上推奨作品です。暴力表現等を含みます。
※敬語表現に間違いがあるかもしれません。あまり気にしないでいただけると幸いです。
〈あらすじ〉
アリスたちが城下町キュクノスへお使いへ行っている頃。
時を同じくして、レオたちは王宮で厄介な事件と相対していた……。
「——まさか、この時代にまだ恋愛魔術を使っている人がいるなんてね」
引きちぎられた赤い毛糸を見つめ、レオは訝し気に眉をひそめた。
アリスたちが出かけてすぐ、レオたちは王宮警備隊の本部へ向かい、この赤い糸だの毛糸だの紐だの縄だのを調べていた。
以前、クロエが遊んでいた赤い毛糸。あの時はそこまで気に留めていなかったのだが、ここまで切られたものが落ちていれば、嫌でも目に付く。
そこで、新入生たちを送りに出した三チームで、アリスたちが帰ってくるまでにこの事件を解決せよとダリアから命令が下ったのだ。
制限時間付きということは、ダリアはもう犯人が分かっているか、急ぎの案件なのか。どちらにせよ、レオたちに事件を解決させようとしている。これでは、先輩である自分たちも力試しをされているようだ。
ところで、メンバーはいつもよりだいぶ多い。
まず、レオが所属するチームだけで三人。それから、ニャットと、後輩の三つ子たちのチームで四人。これだけで六人を超えている。そこに、ヒューとその付き人クレアの二人。
合計九名で、この恋愛魔術事件の解決を目指す。
「ま、そんな焦らなくてもすぐ見つかるよ」
レオにそう言って笑ったのはパウラだ。
だが、レオは相変わらず眉をひそめたままだ。
「何でそう言い切れるんだよ」
「切り口をよく見てみろ。はさみで切った切り口じゃない。でも最初、クロエが遊んでた糸はハサミで切られてた」
「だから?」
「犯人はどんどん余裕を無くしてきてるってこと。前、クロエが遊んでいた毛糸はハサミで切られていたうえ、少し日に焼けてた。日の当たる場所に長時間置かれていた証拠だ」
正直、そこまで気付いていなかったレオはそれに驚きつつも「でもさ」と少し声を大きくした。
「毛糸が日焼けするって、かなりの時間が経ってないと無理だ。でも、あれが見つかり始めたのって最近だろ?」
「元々、日焼けしていた毛糸を使ったんじゃないでしょうか?」
そう言って、皓然は口元をいじりながら糸たちを見つめた。
「こういうのって、対象者からもらったものを使うじゃないですか。犯人は、最初はもらったものを使って恋愛魔術を行っていた。でも、効果が出ない。それでもずっと続けていたけれど、やはり効果は出ない」
「それで、無くなった材料の代わりに、新しく買った糸とかも切り始めた、と。なるほどね」
ニャットは頷きながらも、困った表情で後頭部を軽くなでた。
「効果が得られないから苛立って、それでハサミで切るなんてことはせず、手で切ったり、歯で嚙み千切ったりしてるわけだね。よっぽど執着してるみたいだ」
それらを受けて、ヒューは今回の被害者を軽く睨みつけた。
そう、今回の件の被害者が誰かはもう分かっている。一番多く、切られた赤い糸がこの人の部屋の前に置かれていたから。
魔術師だけでなく、上級や家族で住んでいる場合を除いて、他の人たちも、もちろんシェアハウス状態だ。それでもこの一人に絞れたのは、この人物以外に被害者が考えられなかったからだ。同部屋のユーゴからも、彼以外にパートナー持ちはいないと聞いている。
「それで? 犯人には本当に心当たりがないのか、トゥータン?」
「本当だってばー!」
被害者らしからぬ、椅子に縛り付けられた状態の美しいエルフは、頬を膨らませ、まるで子供のように両足をバタバタと動かした。
アダン・トゥータン。
ほとんど人間しかいない王宮に住む、数少ない異種族の一人。そして、アリスと同じ推薦枠で魔術師養成課程に今年入学する。
というのも、エルフは人間に比べてはるかに魔力レベル、身体能力が高いのだ。エルフを傭兵として雇っている国や地域は少なくない。アダンもまた、その例に漏れない。
それに加えて、彼の母親がヘレナのチームメイトなのだ。
だが、このエルフときたら女癖がとにかく酷かった。ストライクゾーンが広く、女性とみるとすぐナンパする。今こうして椅子に縛り付けられているのだって、呼びだされて部屋に来てすぐ、クレアに迫ったからだ。
「ねー、これ外してよー! もうナンパしないからさぁ!」
「……パウラ、どうします?」
「放っとけ」
これから同じチームになるというのに、パウラは皓然の疑問をバッサリ切り捨てた。
「あーあ! ぼくもお買い物に行きたかったなー! うちのチーム、レオの妹ちゃんが入ったんでしょ? ニャットのところにも女の子が来たって聞いたよ、皓然の従妹だって? 二人とも、絶対に可愛いんだろうなー! 早く会いたいなー!」
「これから毎日のように顔を合わすことになるんだから、焦らなくていい。君は特にね」
「というか、俺が会わせたくない」
呆れを通り越してもはや無関心のパウラに対し、レオは思い切り顔をしかめてアダンを睨みつけた。
兄としての勘が、「絶対にコイツとアリスを近づけてはならない」と告げてならないのだ。
「だそうです。で、アダン。本当に心当たりは無いんですか?」
「皓然……! 君だけだよ、ぼくに優しくしてくれるのは……!」
「いえ、別に優しくはしてないです。それより、質問に答えてください」
「それが、本当に心当たりがなくってさぁ」
アダンが体を左右に揺らすたび、彼の長い銀髪が揺れた。
「えーっと、最近そう言った話をしてきたのは……。メリッサかなぁ、レジーナかなぁ? それとも、裏をかいてミラ?」
「……心当たり、めちゃくちゃあるじゃないですか」
「むしろ、心当たりしかないな」
腕を組み、ヒューは大きなため息をついてから、後ろに控えている従者を呼んだ。
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