16.
〈注意事項〉
※15歳以上推奨作品です。
※敬語表現に間違いがあるかもしれません。あまり気にしないでいただけると幸いです。
〈あらすじ〉
無事、魔術界での衣食住を調達することができたアリス。そんなアリスに、皓然が提案してきたのは、同じクラスになる子達に会ってみないか、ということだった。
「アリス。明日、同じクラスになる子たちと会ってみませんか?」
魔術界に来て三日目の夜。夕食後に皓然がそんなことを言ってきた。
三日前に牡丹たちと話したように、皓然はその心当たりの人たちに連絡をして、アリスと会って欲しいと言ってくれたようなのだ。
断る理由などないので、アリスは「ぜひ」と笑顔で答えた。知り合いが多いに越したことはないし、そろそろ暇を持て余し始めたところだ。毎日毎日、レオたちの後ろをついて歩いて、最後は図書館でよく分からない本を読む日々に飽き飽きしていた。
次の日。
アリスは皓然と二人で談話室にやってきた。パウラとレオは、それぞれで外せない用事があるとかで同席しないことになった。
談話室には丸いテーブルがいくつも置かれていて、出入り口にはカフェが併設されている。そこで飲み物と食べ物を買ってから席に着く、というスタイルらしい。
「今日、何人の子が来てるの?」
店員から商品が乗ったお盆受け取った皓然に尋ねると、彼は「三人です」と周りを見回しながら答えてくれた。
「本当は四人のはずだったんですけど、一人だけ都合が合わなくって。まあ、すぐに会えるので大丈夫ですよ。それに、とってもフレンドリーな子ですから」
そんなことを言いながら、彼は一つのテーブル席に向かって歩き出したのだが、近づいてから急に足を止めてしまった。
「なんで、君たちが?」
「別に、いてもいいだろう?」
皓然にそう言ったのは、アリスも見覚えのある……、できれば、あまり関わりたくないと思っていたヒュー・ベーコンだった。しかも、皓然の話では三人と聞いていたのだが、そのテーブルにはヒューを含めて五人座っていたのだ。
「うちの新人二人だけを寄越すなんて、するわけないじゃないか」
「……」
思い切り顔をしかめる皓然に「ごめんよ」と声をかけた少年がいた。
「別に、君たちを信用していないわけじゃないんだ。でも、ベーコンも初めて別世界出身者を受け入れたもんだから、どうしたら良いか分からなかったみたいでさ。それで、こっちはこっちで色々動いてたんだ」
「ニャット、コイツに変なことは言わなくていいんだよ」
「そういう訳にも行かないよ。俺ら千夜族は特に」
そんな会話を無視して、皓然はテーブルにお盆を置いてから、アリスに「紹介します」とどこか疲れた顔を向けた。
「まず、ぼくのクラスメイトたちです。君もご存知のヒュー・ベーコン。それから、こっちの彼はロー・ヴァン・ニャット。二人とも、それぞれのチームリーダーです」
皓然が示したのは、さっきヒューにニャットと呼ばれていた少年だった。日に焼けた肌を持つ、黒髪黒目の穏やかそうなアジア人の少年だ。
「初めまして」
「は、初めまして」
ヒューより、ニャットの方が取っつきやすい気がする。
アリスがそんなことを思っている中、皓然はみんなに「今日はありがとうございます」と声をかけた。
「彼女がランフォード家のアリス。別世界に来たばかりなので、困っていたら助けてあげて欲しいんです。とは言っても、桃子と俊宇も分からないことばかりだと思うので、お互いに助け合っていけたらいいなって思って」
「もちろんだよ!」
そう言ったのは、ニャットの隣に座っていた女の子だ。肩にかからないくらいの黒髪に黒い瞳、垂れた太い眉の女の子。この子もアジア系だ。だが、何より目を引くのが、彼女が胸に抱いている人形だった。白い顔に細い目、真っ赤な唇……。美しい着物を着せているので、恐らくは日本だったと思うのだが、その国の人形だろう。
女の子はアリスに「こんにちは!」と明るく挨拶してくれた。
「私、斎桃子!別世界の日本出身だよ。で、こっちの子は李俊宇」
桃子が示したのは、ヒューの隣に座る大人しそうな男の子だ。彼もアジア人。長い前髪の間から、黒い瞳がのぞいている。彼はアリスに「……よろしく」と小さな声で挨拶し、軽く頭を下げた。
「俊宇は中国の出身だよ。物静かな子だけど、人見知りってわけじゃないから、気にしないでね!昔からこうなんだよ」
「う、うん……」
アリスのイメージだと、中国人の方が大きな声で、日本人の方が大人しいものだと思っていたのだが……。どうやら、実際に会ってみないと分からないこともあるらしい。
「桃子と俊宇は、ぼくの親戚なんです」
皓然は軽く肩をすくめた。
「うちの家系、親戚同士の結びつきが強くって。桃子はぼくの母方、俊宇は父方の親戚なんです。実は、ニャットとも親戚です」
「えっと、国境超えてるけど……?」
だが、皓然は首をかしげるばかり。彼は、別世界のことにそこまで明るくないらしい。
「然兄は別世界で言う所のハーフなんだよ。中国人と日本人のハーフ」
桃子がとても分かりやすい説明をしてくれた。それなら、彼の近い親族が国境を越えていることにも説明がつく。
「じゃあ、ニャットは?」
「えっと、確か三、四代前のニャットくん家の人が黄家に嫁いだんだよね?」
桃子に尋ねられたニャットは「そうだよ」と肩をすくめた。
「正確には、五代前ね」
「はあ……」
どうやら、何か理由があるらしい。
咳払いした皓然は、最後の一人。茶色の髪にとび色の瞳を持った背の低い男の子を示した。
「最後に、アエラス生まれアエラス育ちのユーゴ・プィチくん。彼もベーコンのチームです」
ユーゴという少年は、アリスに笑顔で「よろしく」と声をかけてくれた。
「プィチくんは、ぼくの信用できる後輩です。三人とも、クラスで分からないことがあったら彼に聞いてくださいね。ぼくらも、出来るだけ君たちに色々教えておくつもりですけど。プィチくん、よろしくお願いします」
「はい!任せてください!」
皓然に声をかけられた瞬間、ユーゴは目をキラキラさせて元気に返事した。
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