15.
〈注意事項〉
※15歳以上推奨作品です。
※敬語表現に間違いがあるかもしれません。あまり気にしないでいただけると幸いです。
〈あらすじ〉
求婚騒ぎも落ち着き、無事に昼食をとることができたアリスは、いよいよ魔術界での家となる、部屋へ案内されることになった。
食事が終わり、ラファエルたちと別れたアリスたちは、いよいよ部屋に向かった。部屋があるのは王宮の八階。階段もあるが、みんな気を使って門を使って八階まで連れて行ってくれた。食堂を出てすぐの所に、各階へつながる門が設置されていたのだ。どうやら、これはちょっとした移動にも使えるようだ。恐らく、別世界で言う所のエスカレーターのような物なのだろう。
八階は、これまでとは違って私服姿の人たちも増えた。魔術師は当番制で、非番の人たちが王宮の中にある店に行く途中なのだろう、とパウラが教えてくれた。
黒い扉が奥へと続いて行く中、四人はある程度奥に行ってから立ち止まった。表札のようなものはなく、ただ「八六六六」と部屋番号だけがドアに書かれていた。
「ようこそ、『あまりもの組』へ」
アリスに微笑んでから、パウラは扉を開け放した。
想像以上に広い部屋が現れて、思わずアリスの口から感嘆の声が溢れた。
部屋に入ってすぐにリビングが顔を出した。壁はクリーム色で床は黒いタイルというシックな雰囲気。ガラス製のローテブルを囲っているのは、黒のレザーソファだ。クロエがいる関係なのか、部屋のあちこちに止まり木の様なものが置かれていたり、なぜか巨大なキャットタワーが置かれていたり。しかも、そのキャットタワーはアリスが知っているものよりずっと太くて、ついている傷はどれも大きくて深い物ばかりだ。
左手側には四つの黒い扉が等間隔で並んでいて、奥には黒い螺旋階段があった。その階段を上ると、噂の個人部屋に行けるようだ。吹き抜けになっているから、玄関からでも個人の部屋のドアが見える。
右手側には、大きな窓。メゾネットタイプのマンションのような構造をしているからか、二階部分まで届きそうなほど大きな窓だ。窓の外には広いベランダ。そこでプランターの中の植物たちは青々とした葉を広げて日光浴していた。
そして、正面部分には、広いキッチンがあった。カウンターまであり、奥の戸棚には多種多様な調味料が入った瓶が置かれている。
まるで、モデルルームのようだ。アリスはてっきり、簡易的で寝るための場所になっているのだろうと思っていたから、よけい度肝を抜かれた。
「アリスの部屋に案内するよ。こっち」
パウラの後ろをついて歩きながら、アリスは螺旋階段を上って手前から三つ目の扉の前に立った。
「ここが、アリスの部屋。開けてみて」
頷き、アリスはゆっくりと部屋を開けて……。今度は、何もなさ過ぎて驚いた。茶色のフローリング、白い壁。それはいい。だが、この部屋にはベッドすらなかったのだ。あるのは、アリスが皓然に預けていたスーツケースが一つだけ。
「さあ、部屋に挨拶して」
「あ、挨拶!?」
「ああ、そうだよ。そうしたら、この部屋は君のことを主と認めるから、主人が認めた人以外を部屋にいれなくなるんだ。それに、君の魔力を拾って、部屋を作り上げてくれる。ほら、早く」
にわかには信じられないが、アリスは深呼吸してから部屋に一歩入った。
「アリス・ランフォードです!」
すると、部屋全体が一瞬ブルッと震え、アリスの足元からパタパタと音を立てながら部屋が変化していった。まるでカードをひっくり返すように、部屋がどんどん違う顔付きになっていく。
あっという間に、見慣れたアリスの部屋が出来上がっていた。
「君が自分の部屋と聞いて、頭に浮かべた部屋があるだろ?」
部屋の外から、パウラの楽しそうな声が聞こえてきた。
「魔術は想像力。この部屋は、君の魔力と一緒に流れてきた君の思い描いた部屋を作り上げたんだ。レイアウトなんかも簡単にできるよ。余裕がある時に試してみると良い」
「あ、うん……」
アリスが小さくうなずいた時、後ろからガタンッと大きな音がした。
「アル! 久しぶりだな!」
なんと、レオが大きなライオンに笑顔でじゃれつかれていたのだ。ふさふさの鬣の中には、小さなリスまでいる。
「アーベルまで! 何だよ、二人で留守番してたのか!」
ライオンに顔中舐め回されながらも、レオは嬉しそうにライオンの鬣をガシガシとなでている。
「……え?」
「あ。そうだった。アリス、このライオンはレオの使い魔で、こっちのリスはパウラの使い魔です」
レオの代わりに、皓然がアリスに説明してくれた。
「ライオンはアルチュール。みんな短くアルって呼んでます。リスはアーベル。別世界だとライオンが個人宅にいるのは目立つということで、アルはずっとこっちでぼくらと一緒に暮らしていたんです」
「そ、そう、なんだ……」
本当、こっちの世界に来てから驚いてばかりだ。
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