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152.

〈注意事項〉


※15歳以上推奨作品です。

※敬語表現に間違いがあるかもしれません。あまり気にしないでいただけると幸いです。


〈あらすじ〉

 ヘレナの魂の一部を受け取ることによって、アリスの魂がやっと元の形に戻った。そんなアリスは、ダリアと一緒に、魔術界にいるみんなに顔を出しに行くことになって……。

「——あの、先生。私、おかしくないですか?」


「大丈夫です、何もおかしくなどありませんから」


 一体、この会話を何度したことだろう。


 ダリアは、ひそかにため息をついた。


 ただ、顔を見せに行くだけ。それなのに、アリスはしつこいくらいにダリアの前でクルクルと回って見せ、「変なところはありませんか?」と聞いて来る。


 あの静かすぎる生活に比べれば、今の方がよほどいいけれど。


 留守番をしてくれる別の守り人がやってきてから、アリスはダリアと一緒に門番の家へと向かった。門番は、アリスに感情が戻っているのを見て、本当に嬉しそうに笑って喜んでくれた。


 それから、世間話も。この門番はとにかく、感情の戻ったアリスとこうして会話がまた出来て嬉しいらしいのだ。


「そろそろ行きますよ。ルイスたちが待っています」


 そう、ダリアがストップをかけるほどだった。


「そうだった! それじゃあ、門番さん。いってきます」


「はい、いってらっしゃいませ」


 門番に手を振られながら、アリスは門のターミナルに立った。


 アエラス王宮行きの門にチケットと階級章を見せ、アリスは深呼吸をしてから門をくぐった。


 門の先には、懐かしのアエラス王宮。


 それに、家族だけではない。パウラたちチームメイトに、桃子たち友達の姿もあった。


 それを見た瞬間、アリスの心臓は大きく飛び上がった。けれど、震える足で、みんなの前まで、ゆっくりと歩いて行った。


 正直、みんなからの視線が痛いくらいだった。


 みんなの前に立ってから、ダリアがみんなに挨拶をするのを待っていたのだが、そのダリアに「何か言いなさい」とでもいうように小突かれてしまった。


「あ、の……」


 手を遊ばせ、アリスは鏡のように磨かれた床を見つめながら、何を言おうかと必死に頭を動かした。


「えっと、その……。心配をかけて、ごめんなさ……」


 言い終わる前に、アリスはアンに力強く抱きしめられた。


「謝らなくていいの」


 アリスの髪を撫でながら、アンは震える声でアリスの鼓膜を震わせた。


「私の方が、ごめんね。お母さんなのに、ちゃんとあなたと向き合えなくて」


「そんなことないよ」


 アンを抱きしめ返し、アリスは久しぶりの母に頬ずりした。


「お母さん、ありがとう」


 そこにルイスがやってきて、アリスはアンごと抱きしめられた。急にぎゅっと抱きしめられたから、思わず「わあ!」とアリスの口からこぼれた。


「お父さん!」


「——お前、昨日の今日で一体何があったんだ?」


「それ、電話で説明したじゃん……」


 だが、ルイスの目が潤んでいるのを見て、アリスはそれ以上何も言わないようにした。


「また、今度。詳しく話すから。だから、今は甘えさせてよ」


 一度両親の腕の中から出たアリスは、改めて家族に両手を広げて見せた。


「イリス。こういう時も、ぎゅーってするんでしょ?」


 すると、今度はイリスがアリスの腕の中に飛び込んできた。それから、ガブリエルにラファエル。珍しく、レオまで。みんなに揉みくちゃにされながら、アリスは笑っていた。


「やっぱりお前は、笑顔が似合うな」


 頭を撫でてきた分厚いガブリエルの手を握って、アリスは笑顔を見せた。


「おじいちゃんも、ありがとう。お手紙、いっぱいくれたよね」


「それしか、俺にはできなかったからな。もどかしかったよ」


「ごめんね。でも、もう大丈夫! 復帰したら、また定期的に顔を見せに行くから」


「ああ、待っているよ」


「お姉ちゃん、お姉ちゃん! 私は?」


「イリスもだよ。いっぱい絵を描いてくれたもんね。ありがとう」


 アリスが頭を撫でると、イリスは嬉しそうに目を細めてアリスの体に強く抱きついた。


 だから、アリスはイリスをくっつけたまま、兄たちと向かい合った。


「お兄ちゃんたち、いっぱい会いに来てくれてありがとう。お菓子いっぱい持ってきてくれたよね」


「改めて言われると、照れるなぁ」


 ラファエルはアリスの頭を撫でて、笑顔を見せた。


 それに対して、レオときたら。腕を組み、ふんと鼻で小さく笑った。


「いい兄貴に恵まれてよかったな。感謝しろよ」


「うん。レオお兄ちゃんへの感謝は、取り消しとく」


 口ではそう言いながら、アリスはイリスを離れさせてレオに抱きついた。憎まれ口ばかり叩いているこの兄が不器用なのは、もう分かっている。


 それに、とても心配してくれていたことも。別世界に来るたび、アリスの世話をかいがいしく焼いてくれた。


 レオはアリスの背中を軽くたたいて、答えてくれた。


 そのレオ越しに、友達に顔が見えた。


「ごめんね、桃子、セレナ。すごく泣かせちゃった」


 レオから離れたアリスに、桃子とセレナは笑顔を見せた。


 この二人、それからユーゴと俊宇も、アリスにたくさん手紙を書いて近況を報告してくれていた。時々、プレゼントも。


「体はもう、大丈夫なの?」


「うん。結構体力が落ちちゃってるけど……」


 セレナにそう答え、アリスは苦笑いを浮かべた。


「この一年、全く動いてなかったからさ。ダリア先生にも、リハビリしないとダメだって言われちゃった」


「無理したらダメだよ」


 アリスの手を取り、桃子は大まじめな顔でそう言った。


「アリスってば、すぐに無理し過ぎちゃうんだから」


「というか、自分のキャパを理解してないよな」


「……ユーゴ。……今日くらい褒めるべき」


 相変わらずのユーゴと俊宇に、アリスは安心した。


 それから……。


「パウラ、皓然、ローズ、アダン。長い間、お休みしてごめんね。というか、ドラコに行った辺りから、心配ばっかりかけてごめん」


「まず、休んでいたことは気にしなくていいんだよ」


 そう言ってくれたパウラの髪は、ポニーテールからサイドテールに変わっていた。髪も、随分と伸びたようだ。だが、優しい笑顔は変わらなかった。


「それから、ドラコでのことも。ちゃんと、皓然のことは叱ったし。それに、囚人たちも再逮捕できたんだし」


「パウラ、今はそんなこと言わなくていいんだよ」


 アダンはそう言って、アリスのことを強く抱きしめた。


「寂しかったんだよ、アリス! 君がいない間、ぼく一人でパウラたちに怒られてたんだから!」


「それは勉強しないアダンが悪いんでしょう?」


 そう言って、ローズはアダンの腕からアリスを解放してくれた。


「アリス、いつから復帰するの?」


「それはまだ分からないの。まず、リハビリでしょ、それから進級試験でしょ……。そうだ、私、今年のアゴーナスには出られないんだって」


「そうでしょうね。アゴーナスまで、あと一週間だもの」


「ええっ!? そんな忙しい時期に、ごめん!」


「いいのよ。だって、大事なアリスが復活したんだもの」


 ローズもアリスを抱きしめてから、最後の人物にアリスを向かい合わせた。


「えっと……。治ったようで、何よりです」


「あ、ありがとう……」


 皓然が珍しく照れたように言うから、アリスまでなんだか恥ずかしくなってしまった。


 あの時の約束は、覚えている。


 それもあって、アリスの心臓は痛いくらいにドキドキしていた。あの時、アリスの精神世界にお邪魔していた人たちがジッと観察してくるから、余計に。


「そ、それで、あの……。き、昨日の……」


「昨日?」


 アリスがポカンと皓然を見つめると、彼は「ええっ!?」と大きな声をあげた。


「もしかして、覚えてないんですか!?」


「えーっと……。ご、ごめん?」


「道理で、いつも通りだと……」


 真っ赤な顔を覆い隠す皓然に、パウラが楽しそうに笑って見せた。


「昨日、ルイス先生と一緒にアリスに会いに行ったんだよなー。で、何があったんだよ?」


「絶対にパウラには言わない」


「ケチ」


「何とでもどうぞ」


 ——なんだか、モヤモヤする。


 謎のモヤモヤを感じ、アリスは胸に手を当てて首を傾げた。こんな感情は初めてだ。もしかして、これも副作用だろうか?


「アリス、体調が悪いか?」


 急にアリスが黙り込んだから、心配になったのだろう。


 声をかけて来たルイスに、「何でもないよ」とアリスは笑顔を見せた。


「それより、お父さん。もう一回ぎゅってして。お母さんも」


「甘えん坊だな。まだ六歳が抜けてないのか?」


「何の話?」


「それも覚えてないの?」


 アンの問いに、アリスは首をかしげて見せた。だが、ルイスに頬を撫でてもらえたから、アリスはその手を取って頬ずりして笑った。


「お兄ちゃんたちに、伝言を託してたんだけど。もしかして、聞いてないの?」


「聞いたが、お前の口から直接聞きたいもんだな」


「恥ずかしいからやだ!」


 ルイスは小さく笑ってから、もう一度アリスのことを抱きしめてくれた。


「——じゃあ、ちょっとだけサービスだよ」


 ルイスに体を離されたアリスは、両親の手を取って、とびきりの笑顔を見せた。


「お父さんもお母さんも、大好きだよ。家族にしてくれて、ありがとう」


「お母さんたちも、アリーのことが大好きよ」


 アリスと額をくっつけ合って、アンは微笑んだ。


 小さい頃、よく二人で額をくっつけ合って話をしたものだ。


 アリスもそれを覚えているから、嬉しくなってアンの首根っこに飛びついた。


「もう、無茶しないでね」


「うん、ごめんなさい」


 アンから離れて、アリスは改めて首をかしげて見せた。


「それで、六歳ってどういうこと?」

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