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145.

〈注意事項〉


※15歳以上推奨作品です。暴力表現、流血表現、荒い言葉遣い等を含みます。

※敬語表現に間違いがあるかもしれません。あまり気にしないでいただけると幸いです。


あけましておめでとうございます。

本年もよろしくお願いいたします。


〈あらすじ〉

 炭坑から抜け出すことはできたものの、ユリアの器になってしまったアリス。急に気を失い、やっと目覚めたと思ったら、自分は六歳だと言いだして……。

 アエラスに戻って、みんなが国に何が起こっていたのかを報告をしている中、アリスだけが医務室でラファエルと一緒に、牡丹と向き合っていた。イリスは、ショックを与えないために、ここには呼ばず、ガブリエルに面倒を見てもらっている。


「——そう。アリスちゃんには、お兄ちゃんが二人もいるのね」


「そうだよ! ラファお兄ちゃんは、アメリカに留学? しているから、全然会えないんだけどね。でも、レオお兄ちゃんの射撃練習を見るの、好きだよ!」


 椅子に腰かけたアリスは、両足をブラブラさせながら、牡丹に笑顔を見せていた。


 アリスは、何も覚えていなかった。正確には、六歳以降の記憶を全く持っていなかった。それはつまり、パウラたちのことも分からないことを意味する。ラファエルとレオのことすら、分からないようだった。


 もちろん、今こうして診察中の牡丹のことも。


 報告から戻ってきた、顔色の悪いルイスたちを見て、アリスは飛んで喜んだ。理由は簡単、両親が仕事から帰ってきたらだ。


「ママ、ママ。抱っこして!」


「……ごめんね。ママ、今は疲れているから抱っこ出来ないのよ」


 疲れ切った顔を見せたアンに、アリスは残念そうに「そっか」と挙げていた両手を降ろした。


「……じゃあ、しょうがないね」


「なあ、アリス。本当に俺のことが分からないの?」


 アンの後ろから姿を現したレオは自分自身を指さして妹に聞いてみたが、その妹は急に笑顔を消して顔を左右に振った。


「だって、レオお兄ちゃんだよって言われても、お兄ちゃん、そんなお兄さんじゃないんだもん……」


 今のアリスの記憶にあるレオは八歳。確かに、数え十六歳の現在のレオは、兄に似た見知らぬ「お兄さん」になるだろう。ラファエルも、同様の理由でアリスからは他人扱いされている状態だ。


 おろしている金髪を指に巻き付けながら、アリスは足をもじもじさせていた。


 パウラも、皓然も、ローズも、アダンも。セレナたち友達も。


 みんな、今のアリスからすれば見知らぬお姉さん、お兄さんで間違いなかった。


「——アリス。ちょっとこっちに来い」


 ルイスは椅子に座らずに姿見の前に立ち、隣にやってきた娘の肩に手を添え、「ほら」と姿見を見せた。


「お前は今、十四歳だ。お姉さんになってるだろ?」


「でもさぁ……。だってさぁ……」


 足だけでなく、指も絡めてもじもじするアリスは、チラチラとしか姿見を見ない。


「だって、アリー今、六歳だもん……。アリー、『きおくそーしつ』になっちゃったの?」


「それに近いわね」


 牡丹はアリスの隣に立ち、優しい笑顔を見せた。


「でも、ちゃんと治るわ。だから、心配しないでね。きっと、良くなるからね」


「……みんなは」


 アリスはその場にいたみんな——チームメイト、友達、牡丹、そして家族の顔を見回してから、最後にルイスを見上げた。


「みんなは、今のアリーが嫌なの? だから、早く治って欲しいの?」


「そういう訳じゃないよ」


 牡丹越しに、ラファエルが笑顔で顔を出した。


「みんな、何歳のアリーでも大好きだよ。でも、アリーが急にお姉さんになった原因は突きとめないといけない。……ただ、それだけだよ」


「……そうなんだ」


 アリスは金髪を翻し、さっきまで座っていた椅子に腰かけた。やはり髪をいじり、足をぶらぶらと揺らしながら。


 その行動と姿は、確かに六歳の女の子のものだった。


「ママ、ここはどこ?」


「アエラス王国の、アエラス王宮よ。今は、その医務室……、病院にいるの」


「アエラス王国……」


 ぶらぶらと揺れていたアリスの足が、ピタリと止まった。


「知らない国。知らない場所。知らないお兄さんたち。……知らないアリー。知らないことばっかり」


「アリー、それは……!」


「いつ、ベルギーのお家に帰るの?」


 アリスのその言葉に、レオたちはビクッと体を震わせた。


 今のアリスはきっと、別世界のあの家に両親と一緒に住みたがるだろうから。そうなったら、もうここには帰ってこないかもしれない。


 しかし、アリスの意思も尊重したいし、急に「あなたは記憶喪失です」と言われたアリスに、同情する気持ちもなくはない。


 だから、誰も答えなかった。


 アンですら、アリスから視線を外して「それは……」と、言葉を濁らせている。


「——知らないパパとママ。知らないお兄ちゃんたち」


 立ち上がったアリスは、驚きで目を丸くしているアンを、冷たく見つめた。


「アリーは全部知らない。ママ、髪の毛はいつ切ったの? 昨日までは長かったのに。パパも、いつからお仕事の途中でアリーの所に来るようになったの? いつもは、お仕事の邪魔をしたら怒るのに。ラファお兄ちゃん、いつアメリカから帰ってきたの? レオお兄ちゃんは、いつからアリーのことをいじめなくなったの?」


「アリス、それは……!」


 静電気をバチバチ鳴らすアリスにレオが駆け寄ったが、「こっちに来ないで!」と叫んだアリスの声に、体が止まってしまった。


 涙を流すアリスは、髪を掴んでその場にしゃがみこんだ。


「みんな、アリーに秘密ばっかり。なんにも教えてくれない……。アリーはやっぱり、違うお家の子なの? だから、みんな秘密ばっかりなの?」


「だから……!」


 アンが思わずアリスの肩を掴んだ、その時だった。

お読みいただきありがとうございました!

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