13.
〈注意事項〉
※15歳以上推奨作品です。暴力表現、流血表現、荒い言葉遣い等を含みます。
※敬語表現に間違いがあるかもしれません。あまり気にしないでいただけると幸いです。
〈あらすじ〉
昼食を取りに食堂前までやってきたアリスたち。そこで出会ったのは、ヒュー・ベーコンというレオたちのクラスメイトだった。そんな彼が急に求婚してきて……!?
「このヒュー・ベーコンと、結婚を前提に交際してもらえないだろうか!」
一瞬、アリスたちも状況を整理して、それから「はああ!?」と驚きの声をあげた。周りも我に返ったのか、再びざわつき始めた。
「いやぁ、胆の据わったやつとは思ってたけど、予想以上だったなぁ」
苦笑いを浮かべながら、ラファエルは驚きのあまり動けないでいるアリスの両肩に手を添えた。
「えーっと、君は確かレオのクラスメイトのヒュー・ベーコンだったよな?伯爵家の」
「ええ、おっしゃる通りです。ラファエル・ランフォード先輩」
立ち上がった男の子———————ヒュー・ベーコンは、キラキラと輝く瞳をラファエルに向けた。
「噂には聞いていましたが、とても可愛らしい妹さんですね。さっき見つめ合ったことで、体中に電流が流れたような衝撃を受けました!」
「うんうん、ありがとう。でもな? 妹は今日こっちに来たばかりなんだ。疲れていると思うから……」
「是非とも、彼女と真剣交際を許していただきたいのです! このヒュー・ベーコン、一生をかけて彼女とともにあることをお約束いたします!」
「……話、聞いて欲しいなぁ」
こういった話合いが苦手なラファエルが困り切ったところで、我に返ったアリスが「お断りです!」と大きな声で答えた。
「何!? 何故だ!?」
「だ、だって、知らない人と結婚前提のお付き合い何てできません!」
「これから互いを知って行けばいいじゃないか!」
「そういう問題じゃないの!」
だって、これでは容姿だけで判断されているようではないか。それとも、家柄?ヒューは伯爵家の息子のようだが、恐らくアリスの方が地位は上だろう。
「———————とにかく、お断りです!」
「しかし……!」
「ベーコン」
アリスとヒューの間に割って入ったのは、皓然だった。クロエは彼の肩で威嚇していたが、その主人はいたって冷静にクラスメイトを見つめていた。
「落ち着いてください」
「黄!そこをどいてくれ!俺は真剣に……!」
「ええ、分かります。でも、アリスは怖がってる。魔術師なのに、相手が怖がっていること、嫌がっていることを続けるんですか?ぼくは、そんなことすべきでないと思います」
「それは……!」
「それに、さっきラファ先輩もおっしゃってたじゃないですか。アリスは今日こっちに来たばかり。慣れない環境で疲れてるんです。クリソプレーズの石言葉って、何でしたっけ」
「……自己実現」
「あとは?」
「不安解消、信頼感。……………思いやり」
ヒューの階級章に使われている緑色の石が、皮肉にも光に反射してキラリと光った。
「そうだな。君の言う通り、俺は相手の状況を考えられていなかったな。ランフォード嬢、申し訳なかった」
「あ、はい……」
「でも、本気だから考えておいてくれ」
「いえ、お断りしま……」
「では、失礼いたします」
さっきまでの剣幕はどこへやら、ヒューは優雅にお辞儀してから、周りに見守られながらさっさと食堂の中へ入って行った。
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