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132.

〈注意事項〉


※15歳以上推奨作品です。暴力表現、荒い言葉遣い等を含みます。

※敬語表現に間違いがあるかもしれません。あまり気にしないでいただけると幸いです。


〈あらすじ〉

 ついに炭鉱町まで連れてこられてしまったアリスたち。囚人服に着替えさせられ、連れて行かれた先は……。

「着替えたな。来い」


 アリスたちは再びワイヤーを引っ張られ、炭坑の中に入れられた。ここから先の案内役はロボットだ。ラファエルのものと違い、どうやらここのものは百パーセント電気で動いているらしい。男はロボットにワイヤーを括りつけると、さっさと炭鉱の外に出て、うち扉を閉めてしまった。


「——ということは、どっかに空気穴はあるんだな」


 皓然は小さくぼやき、周りに視線を向けた。だが、ここにあるのは薄暗く、狭い坑道の壁だけで、それはずっと奥まで続いていた。


 明かりは火だが、時々それは動いていた。驚いて動き回る火の玉を見て見ると、それは炎の精霊、フレアだった。精霊の言葉が分かるアダンはフレアたちの言葉を聞いて顔を思い切りしかめた。


「この子たちも捕まったんだ。出口を探してる」


「さらって来れば、油代も電気代もかかりませんもんね」


 ロボットが新人を連れてきたのは、炭鉱夫たちの生活空間だった。岩に囲まれた、不衛生な場所だ。あちこちに虫がはびこり、固まったチリ紙や骨、色んなものが落ちていて、酷い匂いがする。住人たちは、新しくやって来たこぎれいな三人組のことを、すっかり汚れ切った顔で値踏みでもするように見つめていた。


 ロボットはそこでアリスたちの手錠を外し、来た道を戻って行ってしまった。


「やあ、新人さんたち」


 部屋の中で一番高い位置に陣取った、中年の男がニタニタ笑いながらアリスたちに声をかけた。男しかいないからなのか、彼は何も身に着けず、あられもない姿を見せているから、アリスは出来るだけ彼のことを見ないようにした。


「随分と綺麗だな。それに、——金髪の嬢ちゃんまで。どっから来た」


「アエラス」代表してアダンが答えた。「そういうみんなは?」


「随分と、しつけのなってない兄ちゃんだ」


 男の声が一段と低くなったので、皓然が慌てて両者の間に入り、「すみません」と引きつった笑みを浮かべた。


「ぶしつけでしたね。これで勘弁してくれませんか?」


 そう言って彼が男の手を握り、離した時。男の手には金貨が数枚握られていた。


「いいねぇ」男は舌なめずりした。「お前ら、コイツらに手ぇ出すなよ。これで今度の配給日、みんなで一杯やろうや」


 男たちの歓声が上がる中、皓然はホッとした表情でアリスたちの元に帰ってきて額の汗をぬぐった。その手は小刻みに震えている。


「新人」男はアリスたちに笑いかけながら、金貨を明かりに透かした。「俺はこの組を取り仕切ってるマブってもんだ。ルールを教えてやる。お前らは仲良しらしいが、名前で呼ぶのは禁止だ。囚人服の番号でお互いを呼べ。そうじゃねぇと、家族に迷惑がかかるぞ。そして、俺と、この炭坑主の命令は絶対だ。分かったか?」


「はい」


 皓然は震えている手を背中に隠し、笑顔でマブに答えた。


「心にとめておきます。彼らにも、よく言って聞かせますので」


「それでいい。それで、その金髪の餓鬼は? カナリアか? まさか、ランフォード家の娘、なんて言わないよな?」


「別世界出身者です。あちらには、金髪は山ほどいますから。それから、できればカナリアにはしたくありません。大事な子ですから」


「なら」マブはアリスのことを見て、これまでで一番楽しそうに笑った。「その大事な子を、寄越せと言ったら。どうする?」


「そうですね……。そしたら、勝負しましょうか」


 皓然はアリスを背中に隠し、マブに笑い返した。だが、その目は笑っていない。まるで軽蔑でもするかのような目で、ふざけた男のことを見ている。


「勝負?」


「ええ。普通に命令に従うんじゃ、面白くないでしょう。勝負方法はお任せしますが、ルールはぼくらに決めさせてください。それでぼくらが勝ったら、この子にも、ぼくらにも、あなたたちは触れられない、というのは」


「面白い」マブは顎を撫でた。「俺らが勝ったら、金髪娘と言わず、お前たち全員、脱いでもらうぞ」


 それで初めてアリスは事の重大さに気付いたが、皓然は相変わらずの笑顔で「もちろん。いいですよ」と答えた。


「後悔するなよ」


 マブはゆっくりと皓然の前にやってきて、二人は真っ直ぐに見つめ合った。


「勝負方法だ。将棋でもさしたいところだが、あいにくここには道具がなくてね。肉弾戦で行こうじゃないか。お前たち三人対、俺ら全員だ」


 その瞬間、男たちは再び雄叫びをあげた。その数、ざっと見積もって五十人ほど。しかも、ほとんどが炭鉱で働いているから、筋肉が盛り上がっている。


 普通なら、こんな線の細い人間三人など、相手にならないだろう。


「分かりました」皓然は相変わらずの笑顔だ。「では、ルールです。膝をついて五秒経ったら負けの、一対一の勝ち抜けです。順番はそれぞれで話し合って決めましょう。それで、ぼくらが負けたら、その瞬間から好きにしてくださって結構です」


 これに反対する者なんて、アリス以外に存在しなかった。


 男たちはさっさと集まって一人目を輩出してきたが、こちらは「じゃ、行ってきますね」と皓然がほのぼのと笑って前に出て行った。


「——六十二番。二十四番のこと、よろしく」


 アダンはそれに「うん」と答えて、アリスのことを後ろから抱きしめた。アリスがそれに抵抗するから「ちょっと我慢しててよ」と彼女に耳打ちした。


「君、みんなに狙われてるよ。ぼくがこうしてガードしててあげるから、大人しくしてて。じゃないと、こっそりおさわりされるよ」


 それを聞いたアリスは、たちまち静かになった。


「兄ちゃんが一番手かい」


「ええ。言い出しっぺですから」


 皓然は相手の男に笑いかけると、「はじめ」の合図とともに男を一瞬で伸してしまった。一瞬で着いた決着に、慣れていない男たちはただ茫然と皓然のことを見つめている。


「——ねえ、もしかして」


「もしかしなくても」アダンはため息をついた。「気持ちも分からんでもないけど、アイツ今、めちゃくちゃ怒ってる。少しは手加減してやればいいのに」


「さ、次の方どうぞ」


 皓然は指の関節をポキポキと鳴らし、男たちに「かかってこい」と指で煽った。

お読みいただきありがとうございました!

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