130.
〈注意事項〉
※15歳以上推奨作品です。
※敬語表現に間違いがあるかもしれません。あまり気にしないでいただけると幸いです。
〈あらすじ〉
ドラゴンたちの罠にはまってしまったアリスたち。しかも、アリス、皓然、アダンの三人は犯罪者として炭坑送りの刑に処されてしまって……。
「——らん! 皓然!」
自分を呼ぶその声にゆっくりと目を開けると、美しいグレーの瞳と目が合った。
それにドキッとして、皓然は勢いよく体を起こした。
「アリス、アダン……。えっと?」
「ここは護送車の中だよ」
両手を縄で縛られたアダンが、教えてくれた。
「君、一人でドラゴンを倒しちゃったじゃないか。だから、君だけ薬を打ち込まれて眠っちゃってたってわけ。気分はどう?」
「そりゃ、最悪ですよ」
道理で、めまいはするわ、頭が痛いわで、気分が悪いはずだ。
そうでもなければ、昔の夢など見もしなかっただろう。
しかし、今すべきはそれに悪態をつくことではない。
「すみませんでした」
二年生二人に向かって、皓然は頭を下げた。
「ぼくのせいで、君たちまで炭坑送りになってしまって」
アリスとアダンは顔を見合わせてから、やがて笑いあった。
「別に、皓然のことを責めていないよ」
アダンは皓然に笑いかけた。
「だって、あの時の君はぼくらを助けてくれたんだから。……やり過ぎだったけど。でも、おかげで今、ぼくらは丸焦げにならないでいられてる」
「それに、あれは絶対にドラゴン側の陰謀だよ!」
アリスは憤慨した様子で鼻を鳴らした。
「……まあ、どうして皓然を狙ってたのか、分からないんだけど」
「それなら、解説できますよ」
座り直し、皓然は三本の指を立てた。
「ポイントは、主に三つ。一つ、戦況がドラゴンにとって芳しくない。二つ、ドラゴンは領土移転を希望している。三つ、アエラスに脅しをかけたい」
予想通り、二人が首を傾げたので、皓然は思わず笑ってしまった。二人のおかげで、何とか平常運転に戻れそうだ。
「まず一つ目。ドラコとナーノスは、建国してから、ずっと戦争中です。お互いに戦闘民族ですが、最近は小人の方が圧倒的に有利。その理由は、千年前からナーノスの領土から魔力を弾く鉄が発掘されるようになったから。この鉄を使った鎧や武器を持たれると、ドラゴンの魔術は効かなくなります。アダンが前にポロッと言っていたのは、このことですね。だから、ここでぼくを逮捕するということは、ドラコ側にとって大きな利益となります。ドラゴンたちには復讐心を植え付けることが出来るし、ぼくは、その……、ナーノスでは有名なので、小人社会に衝撃が走ることは容易に想像がつく」
うんうん、と頷く二人は、ここまでは理解できたようだ。
「二つ目。アダン。ドラゴンの弱点は何でしょう?」
「えっ」
「ヒントは、この場所の気候です」
それでも答えが出てこなかったので、皓然はため息を何とか飲み込みつつ「寒さですよ」と答えを教えてやった。
「ドラゴンは変温動物。まあ、爬虫類ですからね。寒いと体が動かなくなってしまうんです。レムリア大陸の南側は寒さが厳しい。ドラゴンにとって、この上なく嫌な場所なんです。でも、ドラゴンは人間にレムリア大陸の場所を間借りしている立場だから……」
「そっか、それで三つ目に結びつくんだ!」
アリスは大きな声をあげた。
「きっと、領土を動かすには、人間の四つの国から許可が下りないといけない。でも、ずっと場所が変わってないってことは、ずっと許可が下りてないんでしょ」
「そういうことです。アエラスはこれで、ドラゴンに弱みを一つ握られてしまったことになる。まあ、簡単に『はい』とは言わないと思いますけどね」
「にしても、一か八か過ぎる賭けだよね」
アダンは壁に寄りかかり、皓然をジッと見つめた。
「皓然があんな風にブチギレてくれなかったら、それは成立しなかったわけでしょ?」
「だからこその記者団ですよ。パウラのこと、『ツヴィングリの不純物』って呼んでいたでしょう? ぼくがパウラのことで怒るって、分かっているからでしょう」
「それなんだけどさ」
アリスは口をはさんだものの、なんだか少し言い淀んでいた。
「あの、その……。聞いていいのか、分からないんだけど。えーっと……」
「何ですか?」
「皓然って、パウラのことが好きなの?」
護送車の中に、久しぶりにシンとした空気が戻ってきた。
「……前から思ってたけどさ」とアダン。「アリスって、ストレートしか投げられないよね。変化球持ってないよね」
「そんなにズバリ過ぎる聞かれ方、ぼくも初めてです」
でも、それがアリスらしい。
皓然はクスクス笑ってから、「人としては好きですよ」と認めた。
「恋愛感情はありませんけどね。でも、どうして?」
「だって、パウラが……。『君との約束、忘れないからな!』って言ってたから……」
だから、何かしらの関係があるのではないか、と。
アリスはそう思ったらしい。
「前にもアリスには言いましたが、パウラとは付き合ってもないし、付き合ったとして、ぼくの精神が持ちません。パウラが言っていたのはきっと、小さい頃の口約束だと思います」
「口約束?」
アダンの問いに、皓然は頷いて見せた。
「『お互いに守り合おう』って。どちらかがピンチの時は、絶対に助けるって。……子供の約束です。でも、ぼくらはそれを破ったことはない」
「ってことは……」
「パウラたちなら、絶対にぼくらを助け出してくれます。だから、今は信じて待ちましょう」
この時、久しぶりにアリスとアダンは心の底からの笑顔を見せた。
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