12.
〈注意事項〉
※15歳以上推奨作品です。暴力表現、流血表現、荒い言葉遣い等を含みます。
※敬語表現に間違いがあるかもしれません。あまり気にしないでいただけると幸いです。
〈あらすじ〉
ラファエルからユリアのことを聞いて不安に思っていたアリス。しかし、同時にみんなの優しさに触れることもでき、仲間たちに感謝していた。そして、ラファエルたちと昼食へ向かったのだが……。
「了解」
皓然が笑顔で返事をしたタイミングで、鐘の音が聞こえてきた。
「もう昼時か」
時計を確認したラファエルは、「食堂でも行こうか」と提案してくれた。
「牡丹も、それでいいか?」
「もちろん。でも、お昼の後も続きするからね」
思い切り顔をしかめたラファエルを見て、レオが「何の話?」と牡丹に首を傾げた。
「ラファったら、また研究に没頭しすぎてレポートが溜まってるのよ」
「うーわ!兄ちゃん、またやってんね。あと何個あるのさ」
「た、多分、あと二個くらい……」
「四つよ。それで、私が助けに来てあげてるの」
牡丹の言葉に膝から崩れ落ちたラファエルは、暗い顔でタブレットを手に取った。昼食を取りながら、少しでもレポートを進めるつもりらしい。
「お兄ちゃん、お行儀悪いよ」
「いいんだよ、ここには親父も母さんもいないんだから」
礼儀作法に厳しい両親の間に生まれたのに、なぜラファエルはその正反対に育ったのか。ランフォード家にいくつかある不思議の一つだ。
アリスは肩をすくめただけで、それ以上は何も言わなかった。
食堂がある二階まではエレベーターを使った。エレベーターから外の景色が見えることはさっきと変わらないが、廊下を歩く人の数がさっきの倍はいた。しかも、歩いているのは人間だけではない。羽の生えた小さな妖精や、耳の尖ったエルフ、水の泡に入って移動する人魚、猫や犬など動物の顔を持った人……。様々な種族が集まっていた。
そのほとんどが白い制服姿。そして、全員が羽の形の飾りを身に着けていた。
「うわあ……!」
「この時間、朝番の人たちはみんなお昼休憩で集まってくるんですよ」
驚いているアリスに皓然は笑顔を見せた。
「こんなに人がいたら、席埋まっちゃうんじゃない?」
「それは大丈夫ですよ。座席は無限に増やせますから」
皓然のその言葉に驚いていると、「ランフォードじゃないか!」と急に声をかけられた。
声をかけて来たのは、ぽっちゃり体型の男の子だった。クルクル天パの赤髪に、アリスよりも濃くて黒に近いグレーの瞳。そして、そばかす。彼もまた、制服を着て、左胸に羽の階級章を付けていた。羽の数は二枚だ。
そんな彼が声をかけたのは、アリスでもラフェエルでもなく、レオのようだ。
「ベーコン、久しぶり」
「それが二か月ぶりに会う級友への挨拶かい?まあいい。君、ちゃんと進級試験は合格したんだろうね」
「ばっちりだって。俺のことなめすぎだから」
肩をすくめてから、レオが「ああ、そうだ」と急にアリスを男の子の前に出したせいで、お互い、きょとん、としたまましばらく顔を見つめ合うことになってしまった。
「ほら、アリス。自己紹介」
「あ、うん。はじめまして。妹のアリスです」
「……」
アリスが挨拶したというのに、男の子は何も言わない。それどころか、ボーッとアリスを見つめたまま、微動だにしなくなってしまった。
流石にパウラも顔をしかめて「おい、ヒュー?」と男の子の肩を揺すった。
「なあ、しっかりしろよ。……ヒュー、大丈夫か?ヒュー?」
「アリス……」やっと男の子の口が動いた。「アリス・ランフォード……。ランフォード家の末っの……」
「そうだよ。なあ、どうしたんだよ。君がおかしくなったら、クレアに何されるか分かったもんじゃない。しっかりしてくれ……」
「アリス・ランフォード!」
男の子の大きな声に、ザワザワしていた廊下が一気にシンと静まり返った。
「なんだよ、急に大声出すなって!」
耳元で大声をあげられて耳が痛いレオは、思い切り男の子を睨んだ。だが、どうやら彼は目の前で耳を塞いでいるアリス以外、視界に入っていないらしい。
「君!アリス・ランフォード!」
「な、な、なんですか……?」
すっかり怯えきったアリスの前に跪き、男の子は手を差し伸べてきた。
「このヒュー・ベーコンと、結婚を前提に交際してもらえないだろうか!」
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