128.
〈注意事項〉
※15歳以上推奨作品です。暴力表現、流血表現、荒い言葉遣い等を含みます。
※敬語表現に間違いがあるかもしれません。あまり気にしないでいただけると幸いです。
〈あらすじ〉
ドラゴンの首相カールからの依頼は、「金の実がなる木を空賊から守って欲しい」とのことだった。そこで、アリスたちは二手に分かれ、それぞれ警備を行っていた。
だが、急に現れた黒いドラゴンがアリスたちに向かって火炎を吐き出そうとして……。
「……え?」
アリスとアダンが呆気にとられている中、皓然だけはドラゴンに向かって飛びかかっていた。
クロエの特性でドラゴンの真上に飛び出した皓然は、迷うことなく刀を振るって大きな翼を切り落とした。
ドラゴンが痛みのあまり上を向き、アリスたちに向けられて発射されるはずだった火炎は夜空へと吐き出される。
「黒い鱗……。戦闘ドラゴンですか」
小人に『死神』という戦闘集団があるように、ドラゴンにも『戦闘部隊』という小人を倒すための部隊がある。その部隊に配属されるのは、知能が低い代わりに戦闘能力の高い、この黒いドラゴンたちだ。
「お前、小人の……!」
「動くな」
一瞬のうちにドラゴンの首元に回り込んだ皓然は、その太い首に刀を当てていた。
「少しでも動いたら、お前の首をはねる」
まさに、一瞬。
アリスたちの理解が追い付いた時には、右翼を切り落とされたドラゴンが皓然に仕留められていた。
ドラゴンの黒い返り血を浴びた皓然は、相変わらず怖い顔をしていた。
「は、皓然。そのドラゴン、手当しないと……」
「侵入者です。手当はしません。情報を吐かせます」
まるで箇条書きのような言葉たちに、アリスは思わずひるんでしまった。
分かっている、皓然が怒っている理由は。
小人の両親に「ドラゴンは見つけ次第、寝首をかけ」と教育されたから、ではない。
パウラのことを、差別したからだ。「ツヴィングリ家の不純物」だと、報道陣の誰かが彼女をそう呼んだからだ。
それから、皓然の様子がおかしい。
「外に、ぼくの仲間たちがいたはずです。彼女たちはどうしました?」
「はっ、奴らなら……」
「何してんだ、皓然!」
入り口から、パウラが顔を出した。真っ青な顔で、肩で息をしている彼女は、まずドラゴンと皓然を、それから、同じく顔を真っ青にしているアリスとアダンを見た。
「そのドラゴンは応援に来たんだぞ!」
「応援?」皓然は顔をしかめた。「出会い頭に火炎を浴びせようとする。これのどこが応援なんですか?」
「……なあ、皓然。ボクは君を信頼してる」
パウラはゆっくりと、言葉を選びながら皓然を見つめた。
「だから、君のことを信じたい。でもな、ここはアエラスじゃない、ドラコなんだ。ここで優先されるのはアエラスの法律か、このドラコの法律か。それくらいは分かるだろ?」
そこで初めて、皓然はハッとした。さっきまでの殺気は消え去って、ただ茫然とパウラを見つめている。
「だから、冷静になれって言っただろ。ドラコでは憲兵に逆らうことは有罪。君は、これで立派な犯罪者だ」
「そんな……」
「ち、違うよ、パウラ!」
アリスは皓然とパウラの間に割って入った。
「皓然は助けてくれたの! それに、このドラゴンが急に襲ってきたのも本当で……! 見なかった? このドラゴンが吐いた青い炎!」
「ああ、それを信じているよ。それに、炎も見た。だから、こうしてボクが様子を見に来たんだよ。それでも……」
パウラの言葉にかぶせるようにして、勢いよく扉が開かれた。
カール首相は、二ダースの戦闘ドラゴンを連れて姿を現すと、わざとらしく「なんてことだ!」と大きな声をあげた。
「我が国の精鋭が、魔術師により再起不能のけがを負わされてしまった!」
「大変申し訳ございません!」
パウラが頭を下げたのに合わせ、アリスたちも頭を下げたが、心の中では点と点が繋がったような気がした。
はめられた。
恐らく、ドラゴンの本当の目的はアリスではなく、皓然だ。
アリスでも、そのことは分かった。
カールが連れてきた憲兵のドラゴンたちは、パウラのことは差し置て、皓然を、そして、なぜかアリスとアダンの二人も拘束して地面に転がした。
「この国では、憲兵に逆らうことは重罪。よって、この三名を炭坑送りの刑に処す」
「お待ちください!」
パウラは真っ青な顔をカールに向けた。
「どうか、彼らの話を聞いてやってくれませんか!」
「それは結構」
鼻の穴から青い炎をチロチロ出しながら、カールはパウラに大きな顔を突きつけた。
「彼らが我が国の憲兵を傷つけたことは事実。それさえあれば、炭坑送りの刑に処す十分な理由となるのです」
「そんな……!」
「連れて行け」
アリスたちがドラゴンたちに咥えられ、連れて行かれる中。パウラは、力を失ってうなだれる皓然に叫んだ。
「君との約束、絶対に守るからな!」
それに頷くことなく、皓然たちは連れて行かれてしまった。
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